茜の考察
「安川さんて、女の私から見ても素敵だと思う。一緒にパフェ食べてても着眼点が違うわ。探究心が強いと言うか、果物の切り方に関心したり、フルーツの意外な組み合わせに興奮したり、人の中で子供とかスタッフに囲まれて生きているからかな。独りよがりな発想をしないよね。その上純粋で無邪気。一般人がどう思うか知らないけれど…私は完璧な人だと思う。オマケにお嬢様だったなんて…」
「凄い分析」
「え…何か彼女について調べたりしてるの?」
「そう…僕もかなり探ったよ。不思議でね。彼女のこと。レポートに上げたくらいだから。まったく衝撃だったよ。知識が豊富すぎて…」
そこがちょっと気にかかると善治が思いに耽る。
あんなに雄弁に安川のことを語った後、茜は黙った。何かを悟られまいといつもと違った愛想笑いを浮かべた。
「お〜い!」
待ってくれと、政嗣が聞いたっこともない大声で叫んだ。
「上等だよ。政嗣!お前なんであんなところで普通に働いてるんだよ」
「こっちこそびっくりだよ。従兄弟のばあちゃんが此処のホームに来てて、顔出すうちにスカウトされたんだよ。子供の遊びに付き合ってやれって、安川とバッタリあった時はホントに驚いた」
善治とつばさが疑いの目で政嗣を見る。黙ってたってことが罪深いものだとわからせるように。
「関係が複雑になるとあれだろ、言って良いもんかどうか迷うじゃん。俺いつも中立だし、感情薄いし」
「あ〜あ」
「茜は?政嗣のこと知ってたの?」
こっちも若干引いた顔で、
「う〜ん。見てみぬふり?してた。余計な関係は持たないほうが良いかなって」
とは言いながらも…
「しかし、これで皆んな繋がってしまいました。自然の流れだから良いよね。香椎さん怒らないよね」
楽しそうにつばさが確認した。
そう、香椎は気にしていた。必要以上に関係してほしくないみたいに。頑なに拒否反応を示していた。
「はは、もう無理。流れは止められないよ。こうなったら」
「どのくらい形になったら覚くんは親に言えたりするのかな」
「親に内緒なの?」
「う〜ん、頭の良い子なんだけど隠れてコソコソしてるんだ。あのメモを見た時やりたい事があったんだなってことは、はっきりしたけど…」
「子供だから、まずはある程度まで見えないと認めてもらえない気がするんじゃない。親の期待って最終的に答えたいって思ってしまうものだよ」
「そうなんだ」
茜がつぶやくように答える。
「日頃から自分の居場所探してるとこあったよな。今日は家に居たくないって下のショップに隠れてた。
「でもな…こそこそやるのもどうなのかな」
「学童保育に来るのはどう?居場所ははっきりしてるし、少なくとも隠れる必要な無いわけでしょ」
「場所はね。学童保育に行きたいって親に言うわけだ」
「うん、まずわね」
「あの場所に自由にこれるようになれば、不自由に感じてる時間が自由に変わると思う」
茜が判じ物みたいに言う。
「こっちは覚くんのことをテーマにしてるけど、多分、安川はそんな事考えてない気がする。あのパイロットカメラの実現のほうに気持ちが行ってたよ」
某国の天才的頭脳が4つ集まって、日本の、自分たちをしのぐ天才二人に肩入れして悩みまくっていた。
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