Next Generation

 パイロットスーツの着用を命じられ、ハンガーに呼び出された。

 辞令を受け、部隊で最初にやることが格納庫に集合することだとは、僕は微塵も考えていなかった。


 

 そこには同年代らしき、若いパイロットが数人いる。



「待たせたな」


 聞き覚えのある声に、思わず噴き出しそうになった。

 姿勢を正し、声のした方に向き直る。



 そこには、特徴的なサングラスを付けた男――僕らの隊長がいた。


 そして、その背後には見覚えのない機体が鎮座していることに気付く。

 どうやら新型機らしい。特にそうした発表が無かったことから、秘密裏に進められていたのだろう。



 隊長クーガーが僕らを見回す。

 サングラスで目元が見えなくても、その視線の鋭さに貫かれたのがわかった。

 

 隊長と視線がぶつかった――すると、不敵な笑みを浮かべる。




「君達は、戦闘機でドッグファイトをする最後の世代になるだろう」


 隊長は新型機を指差し、話を続ける。

「あの機体は、まさに君たちのために用意されたものである――」



 どう見ても、その機体はこれまでの可変戦闘機レイダーとは異なる。

 性能は……考えるのも怖くなってきた。



「あの機体を乗りこなすのが、最初の任務だ」


 そして、手にしていたヘルメットを小脇に抱えた。




「――それだけじゃ、つまらんだろう?」


 ――そうだよな、のために集められたわけじゃない。




 笑みを浮かべたまま、隊長はヘルメットを掲げる。


「全員搭乗、演習空域でを開始する」


 パイロットたちが勢い良く返事をする。

 格納庫中に反響した声に、隊長は満足したようだった。



「――空で待っているぞ」


 ヘルメットを着用し、自分に割り当てられた機体へ向かう。

 コクピットに乗り込み、始動手順を開始した。



 ――今から飛ぶのが楽しみだ。


 ハンガーのゲートがゆっくりと開く。

 どこまでも広がる基地の地平、終わりが見えない青空。


 

 今日もまた、一段とドッグファイト日和だった。

 

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Last DogFighter 柏沢蒼海 @bluesphere

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