2日目
2日目 薪ストーブの部屋の朝「電気シェーバーと薪割り」
翌朝も、ベッドの背もたれがせり上がったことで目覚めた。
何時間眠ったのかわからないが、夜中に一度目覚めた以外は熟睡したし、朝の目覚めもこの上なく良い気がする。
二日目ともなると、この部屋で過ごすことに落ち着きも出てきたせいなのか、無性に煙草が吸いたくなったが、残念ながらこの部屋では叶わない。
朝、それが決まり事、のように点けるテレビも無い。
耳を澄まさなくても、庭の木を出発場所にしているのか鳥の鳴き声が聞こえるだけの静かな一日の始まりだ。
緑のドアを開けて洗面台の前に立つ。
鏡を見ると、無精髭が目立っていることに気が付いたので、髭をそりたいと思った。昨夜は、洗面所のシンクにあらかじめ置いてあった歯ブラシで歯を磨いたが、剃刀は見当たらなかった。試しに、洗面台の鏡を手前に開いてみたら、そこは収納スペースになっていて、歯間ブラシやらフロスやら歯ブラシの替えやらと一緒のところに電気シェーバーと髭剃り前に肌に付けるローションが置いてあった。私は、長年、シェービングフォームを顔に付けて二枚刃の剃刀で髭を剃っていたのだが、残念ながら無かったので、仕方なく、電気シェーバーを使うことにした。
電気シェーバーなんて、何十年振りかだ。確か、大して髭なんて伸びない学生時代以来ではないか。
試しに付けてみた髭剃り前のローションのおかげで久しぶりのシェーバーの滑りは良いように感じた。
次に、薪割りなわけだが、実は、昨日は16本の薪では足りなかった。夜中に目覚めたときには火が終わってしまっていたからだ。しかし、暗がりで薪を割るわけにもいかなかったから、余熱が少しでも続くことを祈りながら二度寝に入った。
昨日の朝は8本の薪を割ったが、今日は、倍以上の20本は割らないといけない。
外を見ると、あいにくの降雪だった。直径3㎝はあろうかというぼたん雪が空から真っすぐ落ちてきていた。
私は、海が見える窓を開けて長靴を履き、小屋に向かった。
小屋の内部を見渡すと、オレンジ色のヤッケが壁に掛かっていたのでそれをスエットの上から着込み、手袋を付けて薪を割り始めた。
昨日の名残で、斧を振り上げただけで肩周りの筋肉痛を感じたが、振り下ろす力加減なのか斧の軌道なのか、昨日よりもスムーズに割れるようになった。しかし、20本もの薪作りともなると、さすがに疲労も大層になるだろうから休み休みおこなった。
20本、薪を割り終わった直後は、肩で息をするくらいにへばったが、雪降り止まない庭を通って割った薪を部屋に運んだ。
(はて… 昨日は燃え残りの薪があったから新しい薪を上に置くだけで良かったが、今日は燃えさしがない…)
私は、ゼロから火を起こさなければならないことに今頃気が付いた。
まずは、火種を作らなければならないが… と、キッチン周りでライターやマッチを探してみたのだが見当たらなかった。念のために、洗面所でも探してみたが無かった。
もう、薪割りの時に掻いた汗はすっかり引いて、いよいよ寒さが身に沁みてきたが、私は考えあぐねてソファに座り込んだままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます