1日目 薪ストーブの部屋の午前「ルーティーン」
ローテーブルに一枚の紙が置いてあり、それには次のことが書かれていた。
①起床
②薪割り(一日で使用する薪の分のみ)
③朝食 (白い服に着替える)
④洗濯
⑤昼食
⑥白い部屋に入る(白いドアを開いて廊下を歩いていく)
⑦入浴
⑧夕食
⑨就寝(黒い服に着替える)
このように書いてはあるが、何時から何時までとは書かれていない。そもそも、時計が無いのだから、いったい、そのルーティーンにどれくらいの時間を費やせばよいかはこちらに任されている、ということなのだろう。ともかく、この順番に物事を行い、一日を終えよ、ということとして受け取っておく。
早速、起床後のルーティーン、薪割りをやってみることにした。
これは、さすがに屋外で行うことだと思った私は、遠くに海が見える方角の大きな窓を開けてみた。すると、窓の右端の下に長靴が置いてあり、さらに、右側に小屋があったので長靴を履いて雪を踏みしめながら向かった。
私の足のサイズは28センチと大きめなのだが、長靴の履き心地はぴったりだった。
小屋に入ると、丸太をさらに半分に割った高さ40~50センチの木がパズルのように積み重なっていて、斧と手袋と薪割りの土台になるような丸太が備え付けられてあった。薪割りなんてテレビで観たことしかなかったが、記憶のイメージ通りに、土台に半分サイズの丸太を置いて、斧を振りかぶってから振り下ろした。映画「荒野の七人」のワンシーンにあったチャールズ・ブロンソンのように一回の動作で薪は割れなかったが、三回目か四回目で丸太が割れた。そうやって、8本の薪を作ってから部屋の薪ストーブまで運んだ。果たして、8本で足りるかどうかわからないが、元々、薪ストーブの横に8本の薪があったから合計16本になるし、こんなものだろうと思った次第だ。
たかが8本の薪を作っただけでも、軽く汗を搔いて、肩回りの筋肉のだるさやこわばりを感じた。
私は薪ストーブの透明な窓を開けて、昨晩の残り火の上に試しに3本の薪を入れ、側にあったふいごで風を送ると、やがて、火が移って薪が燃え始めた。
次に、朝食である。
まず、白い服に着替えることになっているので、その白い服を探した。薪ストーブの部屋には洋服ダンスは無かったし、クローゼットの扉も無かった。試しに、緑のドアを開けて水回りの部屋に入ると上部に幾つかのロッカーの戸があったので開けてみると、白いスエットの上下が何組かと、黒いスエットの上下が何組かと、下着がきちんと畳まれて置いてあったので、白のスエット一組を取り出して着替え、少し考えたが、着ていた黒いスエットはドラム式の洗濯機の中に入れた。ロッカーに置いてあったスエットの数からしても、また、朝食後には洗濯をすることになっていることからしても、着た物は毎日、洗濯することになっているのだろうと思ったからだ。
白いスエットは、さっきまで着ていた黒のスエットの色違いというだけで、デザインも大きさも同じだった。
私は、オレンジ色のドアを開けてキッチンに入り、冷蔵庫からチューブ式のバター&マーガリンを取り出して、キッチンテーブルに置いてあった商品名のわからないビニール袋に入っていた食パンに塗り、オーブントースターに入れてダイヤルを回した。
冷蔵庫を再び開けて、千切りにカットされているキャベツと卵とウインナーを取り出し、備え付けのIHのコンロで調理した。レギュラーコーヒーの粉も、すでに保温状態だった電気ポットも、コーヒーを淹れる道具も揃っていたので、濃いめのコーヒーを2杯分淹れた。
食パン一枚と、千切りキャベツと、炒めたウインナー4本と、コーヒーだけでも、私にとっては十分な朝食の量だった。
それを大きめのお盆に乗せて部屋のローテーブルまで運び、一人掛けの木製の椅子に座って朝陽でキラキラ輝く庭の雪景色を観ながら食べた。
食後、使った食器と調理用具をシンクで洗ってから洗濯をした。
ハンガーと物干しを探してみたが、見当たらなかったので洗濯機の「乾燥」まで行うスイッチを押した。
これで、昼食までに行わなければならないことはすべて終わった。
あとは、いったい何をしながら過ごせばよいのだろうか…
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