薪ストーブのある部屋と白い部屋
橙 suzukake
1日目
1日目 薪ストーブの部屋の朝「目覚め」
薪ストーブのある部屋に私は居た。正確に言うと、今朝、この薪ストーブのある部屋の隅にあるベッドで私は目覚めた。
朝の何時なのかはわからないが、どうやら決められた時間にベッドの背もたれが自動でせり上がって、それで、私は目覚めた。確か、以前、CMで見たことがある介護用かなんかベッドの様だった。
薪ストーブのある部屋は20畳はあろうかという広い部屋だ。
部屋の中央には、横に5人は並んで座れそうな革張りの長いソファと、その対面に一人掛け用の革張りの木製の椅子があり、ソファと椅子の真ん中にローテーブルがあった。
そして、一人掛け用の椅子の後ろに薪ストーブがあって、透明の窓を覗くと、薪の燃え残りが見て取れた。
部屋には、大きな窓が二方角にあって、外はモミジなのか桃の木なのか背丈がそんなに高くない木が点在している広い庭があった。ひとつの方角にある窓から遠くを見ると、海が広がっていた。もう一つの方角の窓から見える庭の端には、これでもかというほど茂った常緑樹が並んでいて、その先にある高いコンクリートの壁でそれ以上の視界が遮られていた。
部屋にはテレビやラジオは無く、パソコンも電話も無く、スマートフォンも見当たらなかった。
新聞は届いておらず、カレンダーも無く、時計すらも置いていないので今日が何月何日かも、何時なのかもわからなかったが、庭には10センチくらいの雪が積もっているから、季節は冬、ということだけはわかった。
薪ストーブの横の通路のようなところを歩いていくと、なぜか、ビリヤード台が1台置いてあり、その空間には4つのドアがあった。
そのうちひとつの緑のドアを押し開くと、洗濯機やトイレや浴室といった水回りスペースがあった。
オレンジのドアを押し開くと4畳半ばかりのキッチンがあった。キッチンに置いてある冷蔵庫のドアを開けると、食材や飲み物がぎっしり入っていた。
向かいの白いドアを開けると、天井と壁が白くて床がグレーの廊下が遥か遠くまで続いていた。
黒いドアは、鍵が掛かっているらしく開けられなかった。
おそらく、寝巻なのだろうか、黒いスエットパンツに黒いスエットパーカーを着ていた私は、これから、此処でどう過ごせばよいのか皆目見当がつかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます