第4話 武様の薙刀と父ちゃんの石

夜明けまで

まだ時間がある。

トキは神棚の後の扉から石を取り出した。

その石は父ちゃんがまだ産まれてない時から代々家に伝わる

守り石。

紫色をしてるような、、、

水色のような、、、、

不思議な色をした石。

何か有事があった時、必ず持って行くと家に必ず帰れるという不思議な石だ。

「父ちゃんも戦争にこれを持って行って、帰ってきてくれたね。」

トキが寂しそうに笑った。

父ちゃんは戦争からは帰ってきたが、体には銃弾を何発も受けボロボロの状態だった。

帰還してから一か月後に亡くなった。


家の外では人ではない何かが

いる気配がしたが

中には入れないようだ。

玄関を叩いてみたり

窓に小石が当たる音がしている。

大きな声で叫んでいる。

怖くない!って思っても

やっぱり怖いものは怖い。


「お風呂入りなー」

と母ちゃんが言った。

「今日のお風呂にはお酒が入っている。

でもきっと酔わないだろう。

よく体を洗い

出て来る時、必ず!水を被りなさい!」

えっ?!水。寒いのに、、、

でも母ちゃんが真剣に言うから

「うん。」

頷いた。


お風呂には1人で入った。

よく洗い、最後に水を頭から被った。

脱衣室から出てきたら

「さっぱりしたね。」

母ちゃんが笑った。

「今日は母ちゃんたちは入らないから。」

母ちゃんが行った。

この騒ぎなのに弟は目を擦り眠そうにしている。


歯磨きを終えて布団に入った。

まだ家の外はガタガタしてるのに

何だか眠い、、、

すぐに眠りに入ってしまった。。。




「一、一。」

体を揺さぶられ、ハッとした。

母ちゃんが

隣を指さした。

弟が寝ている。

起こさないように居間に言った。

母ちゃんが

「一、これを着て神社に行くんだ。

後は、胡桃と武様が導いてくださるから」

といい。白い忍者のような服を出してきた。

一瞬

、、、なんじゃこりゃ着づらそう。

そう思ったけど

母ちゃんが着せてくれた。

紐を結ぶと

「武様とお食べ。おにぎり。」と

巾着を背おわせてくれた。

「水筒も!」と言い

肩にかけ

ぎゅーーーーーと

長く抱きしめてくれた。


玄関に行き

足袋を履き

「行ってきます!」

母ちゃんを見て

勢いよく飛び出した。

「私も忘れずに」

胡桃が足元についていた。

「神社まで行こう。」

「もう妖の気配はありませんが気をつけて。匂いが強く、気配に気づくのに時間がかかるので」

と言った。

昨晩はすごい音や揺れがあったのに

振り返って見た家は

何ともなかった。


神社に着くと武様が

薙刀を持って待っていた。

「昨日はヘンテコな木?ありがとうございました。」

「あれは、まぁいい、ヘンテコな木か!!」

フッと笑みが出た。

「母ちゃんは武様と言っていたけど、何歳なの?」

「歳、、、忘れてしまったのう。」

武様がフッと笑うと

薙刀と手の中に握りしめていた

石がキラッと

光を放った。

「一!この石は私がずいぶん前に

とある人に渡したのだ!

なぜ持っているのだ?」

武様を見た次に石を見て

「これは代々うちに伝わる家宝です。なぜ?誰にもらったとかは知らないけど、、、

この石を持って出かけると必ず家に帰ってこれる石なんだよ。」

それを聞いた武様が

ポン!ポン!と優しく頭を叩いてくれた。


「よし!山に行こうかのぅ。日が暮れないうちに帰れように。」


山に行くのは怖いと思ったけれど

武様の落ち着いた様子を見て

何だか大丈夫な気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る