第3話 夜明け

バリバリバリバリ!ドドドドドーン!!!

家に土石流でも流れ込んだような揺れと、音がした。

「母ちゃん!外に何かいる!」

玄関に確認しようとしたら

「家の周りに結界を張っただろう。一が。」

えっ!あれってそうだったの??

と聞こうとしたら

「今日は一晩中、こんな音がしたり家が揺れる。大丈夫だ。妖だから。」

お茶を啜りながら母が言った。

母の落ち着きを見たら

腹の音が

グーっと鳴った。

食事がまだだっけ。

お腹の音でハっとし食欲が出てきた。

一足先に弟は

豚丼にかぶりついている。

甘いきび砂糖と醤油のタレがたっぷりかかり

ご飯にまでタレが染みてご飯の香りと混ざり食欲をさそうが

やっぱり店で出しているうどんを最初に食べないと!

と一は思った。

幅広のうどん!

「いただきます!!」

口に頬張り食べると

うどんの小麦粉の甘い香りが鼻を抜け

カツオと椎茸のだしの効いたお汁が何ともあう!美味しいうどんだ!

「母ちゃん!今日も最高の味だね!」

「いつも同じ味だけどねぇ。」

一と弟が美味しいそうに食べているのを見て、母から笑みが溢れた。

胡桃がヨロヨロしながら食卓にやってきた。

「お騒がせをして、、、そしてご迷惑をおかけしています。」

弟が見て

「猫が喋ってるー!」

ご飯つぶを吐き出しながら言った。

「汚いよ!」一が言った。

「猫が喋るなんて!何で?何で?!」

またご飯つぶを飛ばしながら

弟が言った。

胡桃が息を吐くように

「お久しぶりです。トキ様。」

「もう何年も経ちますね。胡桃。」

トキと胡桃の間に少しの時間が流れた。

「胡桃が来るという事はバンドウ様が妖にやられたのですか?」

首を振りながら胡桃が

「バンドウ様は大丈夫です。五輪塔の結界が効いております。」

「では何故?胡桃はこんな怪我を???」

「人間が山に入り、、、

妖が出ないように結界を張っていた五輪塔の裏に行きました。」

「なんと?言った!?裏へとか

あそこは見る事はできるか行く事は困難だ。行けないようにしたから。もしや、妖に呼ばれる者がいたのですか!」

「はい、山の川から毒が流れ侵されバンドウ様の力も弱り、、、五輪塔の結界でなんとか力を保っています。

私は山の五輪塔の裏へ行き、調査途中でやられました。」

、、、、、。

「出てきたのか!?」

「、、、はい。」

「バンドウ様危ないのです。」

トキがため息を深くついた。

「私にはもう力がないのです。もしあるとすれば、、、一だ。

私は見えなかったが、一には見えた。」

うどんを啜っていた一が食べるのをやめてトキを見た。

「胡桃から出たアレの事???」

「一よ。

夜が明けて、妖は居なくなるが

また、来るであろう。

夜が明けてから武様の所へ行き、薙刀を借りてくるように。

そして胡桃と一緒に薙刀を持ち五輪塔の裏へ行き薙刀を刺してこい。黒い物目掛けてだ。」

トキが一に言い放った。

「俺、がぁ?無理、むりだよ!!」

「大丈夫。武様が着いて下さるから」


、、、、ガタガタガタガタ

家の玄関の扉が音を立てている。

何かやっぱりいる。

バーーン!

石がぶつかるような音がした。

きっと明日の夜も来る

一はそう感じた。

「わかった。やる。

でも、父ちゃんの石を持たせてくれ。」

トキは頷きながら

「わかった。明日に備えて沢山お食べ!」

一は不安をかき消すように

うどんをまた頬張った。

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