第7話能力適正

 受付のお姉さんによると、この世界には気力と魔力の二つの力があり、気力は略して気とも言われ生き物の生命力を源とする力である。


 生命力が源なので誰でも持っている力だが普通は無意識に使っているため、気力を自覚し制御することができない。


 気力のコントロールができれば身体能力を強化して強い力を出せたり、身体を頑丈にできたりする。武器に気力を流して強度や切れ味を上げることもできるので、近接戦闘職には必須と言えるだろう。


 誰でも持っている力だが気力を自覚することは難しく、自覚できたとしても制御するためには修行と才能が必要になる。


 次に魔力だが魔法を使うための力である。これは百人に一人くらいの確率で生まれながらに持っている力だ。


 魔力には属性があり火、水、風、土を基本属性とし、雷、光、闇などのレア属性も存在する。

 持って生まれた一属性しか扱うことはできず、気力と同じく魔力も制御が難しいので制御には修行と才能が必要である。


 気力と魔力の両方を扱える魔法剣士、魔法戦闘士も存在する。

 気力も魔力も自分の中にある力を消費して使うので、使いすぎると気を失ってしまう。


 簡単に言うと気力はHPを消費し、魔力はMPを消費する。

 どちらも強くなることで最大値を増やすことができる。


 能力測定魔道具の詳細は下記の通り。


・気力の才がある場合ガタガタと振動する。揺れが大きいほど能力が高い。

・火属性の魔力があると赤く光る。

・水属性の魔力があると青く光る。

・風属性の魔力があると緑に光る。

・土属性の魔力があると茶色く光る。

・その他の色もある。

・光量が多いほど魔力が高い。

・揺れながら光れば気力と魔力どちらも才がある。


 以上の説明を受けた。


「冒険者登録の段階では何も変化が起きないことが多いですから、過度な期待はしないでくださいね。強くなれば魔道具の反応も変わりますので。この測定はあくまでも冒険者の死亡率を減らし、効率よく強くなるための適性診断ですから」


 受付のお姉さんが心構えを話す。絵理歌たちは頷き、まずは史から魔道具に触れた。

 史が魔道具に触れると球体の魔装具がガタガタと揺れながら赤く光る。史は気力と火属性の魔力を持っているようだ。


 すると乱闘騒ぎで注目されていたのかギャラリーがざわついた。


「あの嬢ちゃんたち、いきなり両方持ちだぜ」


「いったい何者なんだ」


 ざわつくギャラリーに気を良くした史はドヤ顔で晴香と交代した。

 晴香が魔道具に触れるとガタガタガタと史の時よりも激しく揺れながら緑に光る。晴香は気力と風属性の魔力を持っているようだ。


 光量はやや史の方が強かったので、史の方が魔力が強く、晴香の方が気力が強いのだろう。


「また出やがった両方持ち!」


「今の子は揺れも凄かったぜ! 俺自信なくしちゃうなあ……」


 二連続で両方持ちが出たことにギャラリーは沸いた。すっかり酒の肴にされているようだ。まだ昼過ぎだというのに……。

 戻ってきた晴香と笑顔でコツンと拳を合わせて絵理歌は魔道具に触れる。


 すると、ガタガタガタブルンブルンブルンと凄い勢いで揺れ始めた。

 壊れるのではと思うほど揺れたが壊れはしなかった。絵理歌は気力は使えるが魔力がないようだ。

 またまたギャラリーは盛り上がる。


「なんだよ今の! あんな揺れ初めて見たぜ!」


「スーパールーキーの登場よ!」


「あいつら俺たちモブなんて一足飛びで越えて行くぜ」


「いやいや、元々嬢ちゃんたちのが上だろ」


 ギャラリーの盛り上がりに押されるように絵理歌と交代したねむが期待に満ちた眼差しで「わたくしの出番ですわね!」と、意気込んで魔道具に触れると茶色く光る。

 ねむは土属性の魔力を持っているようだ。ねむがドヤ顔でギャラリーを見ると。


「土属性だけか……」


「まあ魔力持ってるだけで凄いんだけどね」


「でもおっぱいは凄いぜ。あの子はおっぱい担当だよ」


「最低! エッチ! 変態! 死んじゃえ!」


 史と晴香の測定のインパクトが強かったため反応が薄い。

 ねむは「オーノーですわー!」と叫び、残念そうな表情で肩を落として景と交代した。

 何と戦っているのか景は「敵はとるぜ」と言って魔道具に触れる。

 すると魔道具は七色に光輝いた。見る者を魅了するように輝く光に場は静まり返る。


「お……おい。なんだよあれ?」


「知るかよ。俺だって見たことねえ。レア属性が出たってことは分かるが……」


「レインボーで大当たり濃厚ってか?」


「虹色……七色……七色の燐光。閃いた! あの嬢ちゃんの二つ名は七色の燐光ななしきのりんこうなんてどうだ?」


「おお! かっこいいなそれ! 今日からあの嬢ちゃんは七色の燐光だ!」


「みんな俺に続け! 七色の燐光! 七色の燐光! 七色の燐光! 七色の燐光! 七色の燐光!」


 静まり返っていたギャラリーは一気に盛り上がり七色の燐光コールが上がる。

 絵理歌はその様子に嘆息し、晴香と史は手を振って声援に応え、ねむは景の手を取って喜び、景は恥ずかしそうに赤面するのだった。

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