第6話冒険者ギルド

 食事と情報交換を終えて喫茶店を後にし、冒険者ギルドに向かう。

 オークから助けた冒険者パーティーホワイトラディッシュに「それだけ戦闘力が高ければ高ランク冒険者になれるぜ」と言われていたからだ。


 冒険者は命がけの危険な仕事だけに報酬は高い、高ランクになれば貴族なみに稼げるそうだ。

 どこの世界でもお金の力は強い。シスル女学園関係者を探すにも保護するにもお金は必要なのだ。




 絵理歌たちは冒険者ギルドに到着する。この町でも大きな三階建ての建物だ。

 中に入ると絵理歌たちに視線が集まった。ギルド内を見たところ冒険者はゴロツキのようなむさっくるしい荒くれ男が多いイメージだったが、女性も四割程いる。


 それでも変わった格好をした少女五人組がやってきたら注目されるのはやむなしだろう。

 視線を感じつつ受付のお姉さんに話しかけた。


「冒険者登録をお願いします」


「冒険者ギルドへようこそ。冒険者登録は十二歳以上からですが皆さん大丈夫ですか?」


「はい、みんな十二歳以上です」


「では登録料一人銀貨五枚になります。それとこちらの登録用紙に記入お願いします」


 銀貨五枚を支払い美人の受付嬢から渡された登録用紙を見ると、見たことのない文字だが普通に読める。召喚特典だろうか?


 ひとまず日本語で生年月日など書いていると、短髪で強面の男が冒険者ギルドお約束のヤジを飛ばしてきた。


「おいおい嬢ちゃんたち! 冒険者なんてやめて俺の女になれよ! ベットでピー音開けば〇〇〇〇ピー音壊れるまで突いてやるぜ!」


 品のないヤジに絵理歌が顔をしかめると、ブチッと何かが切れた音が聞こえた。


「じゃかましいドチンピラが! 鼻の穴から手突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろかい!」


 下品なヤジに景がブチ切れた。まるで1900Wの業務用電子レンジである。その心は……すぐ熱くなる。

 景に鼻の穴から手を突っ込ませたらある意味ご褒美になってしまうので、今にも飛びかかりそうな景を抑えた。


「チンピラにご褒美あげちゃだめだよ景ちゃん」


「そんなことしたら喜んじゃうわよ」


「だめですよ景、そんな汚らしいところに触れてはいけませんわ」


 晴香、史、ねむが景をなだめる。

 すると怒りに震えるチンピラが「クソガキどもがあ!」と殴りかかってきた。


 絵理歌はあまり大事にして恨みを買いたくもないので、大振りの喧嘩パンチをさばいて体勢を崩し、外側に回り込み足払いローキックで転がして、下段突きを顔の前で寸止めした。

 受けからの崩しは巴理心流が得意とするサバキ術である。


「もう止めましょう。冒険者資格剥奪になっちゃいますよ」


 私闘で資格剥奪になるか分からないがハッタリをかましてみる。

 チンピラが大人しくなって連れのもとに帰ると歓声が上がった。


「凄いぞ嬢ちゃん!」


「ファンガスを簡単に倒しちまったよ!」


「よ! 新人狩り改め新人に狩られファンガス!」


「そんなんだからEランクから上に行けないのよ!」


 併設されたギルド運営の酒場から上がる歓声の方を見るとホワイトラディッシュの三人が笑顔で手を振っている。どうやら喧嘩を肴に酒を飲んでいたようだ。


 絵理歌は恨みを持たれないように場を治めたかったが上手くいかない。ファンガスと呼ばれた男は鬼のような顔でこちらを睨みつけている。

 外での襲撃に注意しなければならないことをみんなにも伝えた。


「すまねえ絵理歌ちゃん、あたしのせいだ」


「謝らないで景さん。景さんが怒ってくれて爽快だったよ」


「本当に見事な啖呵でしたわ」


 頭を下げて謝罪する景を絵理歌とねむが励ました。

 絵理歌は景を見てすぐ熱くなるけど反省して謝れる良い子だなと思った。それができない人は沢山いるのだ。


 気を取り直して書類を書き終えて受付に持って行く。パーティー名はディステル会。探しているシスル女学園関係者に伝わる名前にした。冒険者として有名になれば向こうから会いに来てくれるかもしれない。


 受付のお姉さんに書類を渡すとどうやら日本語で書いても相手には伝わるようだ。召喚特典凄い。


「止めに入れなくてごめんなさい。報告は上げますのでファンガスさんには処分が下りますし、今後あなたたちには関わらないよう警告します。冒険者はあんな人ばかりではありませんので気を悪くしないでください」


 受付のお姉さんは謝罪してからギルドの簡単な説明をしてくれた。


・冒険者ギルドは国に所属はせず独自に運営している組織である。(高額の税金を支払っているので国も強くは出れない)

・冒険者ランクはG~Sまであり、Gが一番低くSが一番高い。

・冒険者の受けられる依頼は自分のランクの上下一ランク以内である。

・魔物の解体は料金を支払えばギルドでもやってくれる。

・依頼失敗には違約金が発生する。(報酬額の二割)

・魔物の大量発生などで強制依頼が出ることがある。

・登録後の犯罪行為は除名処分。

・冒険者が行った行為、ケガ、死亡についてギルドは一切責任を負わない。


 以上が大まかなルールだ。登録者の冒険者ランクはGからスタートする。

 その後大事なことと前置きして冒険者精神を言い添える。


・冒険者は強くなれ。但し、正義なき力は暴力になる。自分の正義が相手にとっては悪かもしれないことを忘れるな。


 立派な精神だが、ではなぜファンガスはあんな下品な絡み方をしてきたのか、世界の強制力が働きテンプレ行動をしてしまったのかもしれない。


 説明が終わるとお姉さんは人数分のギルドカードと水晶玉のような物を持ってきた。

 ギルドカードは良くあるポイントカードと同じような見た目をしていて、なくしてもは再発行できるが手数料がかかるし信用をなくすので紛失には注意するよう言われる。


 絵理歌たちはギルドカードに自分の血を一滴垂らす。そうすることで偽造することができなくなるそうだ。


 水晶玉は触ると戦士や魔法師など、職業の適性が光る色や揺れによって分かる魔道具らしい。よくあるお約束の魔道具の登場にみんなのテンションが上がる。


 あの神(仮)は召喚された異世界人は特殊な力を持つものが生まれやすいと言っていたからだ。

 絵理歌たちにはどんな能力適性があるのだろうか。

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