scean6 氷の魔眼

 凍りついた涙を手で受けるフィオナ。


「魔眼! 全部これのせいで!」


 彼女の手が、右目に触れ――爪を立てた。指でえぐり、き出そうとしているのだ。

 クロムはすぐ腕をつかみ、それを止める。クロムの手を払いのけるフィオナ。


「触らないで!」


「魔眼を摘出てきしゅつした後に何が起こってしまうか、予測ができない! 抉り出すなんて、あまりに危険だ!」


 フィオナの目がぎゅっと閉じる。一瞬の間。そして叫ぶ。まるで悲鳴。


「――じゃあどうすればいいって言うの?」


 クロムを突き飛ばすフィオナ。泣きじゃくって、目に付くもの――その全てを掴み、投げる。


「フィオナ、落ち着くんだ!」


 クロムはつい、彼女の身を羽交い締めにして押さえた。

 フィオナの目が見開かれる。かつて受けた責め苦――その記憶が浮かび上がる。

 

 

 ――男達が彼女の身を取り押さえて拘束する。

 ――魔女とそしりを受け、否定すると拷問ごうもんされ、痛みで気が狂いそうになった。

 ――一晩ひとばん中火を近くにべておいて眠らせない。

 ――腕を縛りはりに吊るし更に足に石をつるす。

 ――ネジのついた鉄の板で指をつぶす。

 ――指と爪の間に針を指す。

 ――『魔女である』と自白させるために行われる、狂気の沙汰――

 

 

「放して!」


 抵抗するフィオナの手がクロムの顔を打ち、彼の腕が緩む。

勢いよく身を踊らせ、束縛から抜けるフィオナ。部屋を飛び出すなり別の部屋に入り、扉の内側に家具や棚を寄せて、開けられなくしようとする。

 フィオナを追うクロム。扉を開けようとするがびくともせず、焦りながら拳で戸を叩く。


「出てくるんだ、フィオナ! そこは危険な部屋なんだ!」

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