scean2 牢獄の幽鬼
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夜の牢獄は暗く、かび臭い。結露でじめりと湿る床、壁が、不快さを更に助長させている。
悪夢から
栗色の髪に長身の
身震いするほど気温は低いが、汗はとめどなく
辺りを見回し、夢を見ていたと確認してから、青年は息を整え始めた。
すっかり落ち着き――急に大声で叫び出し、床を思い切り殴る。
石畳でその拳が傷つき、血が
その様を全て見ていた向かいの牢の住人が、あざ笑うような声でささやいた。
「またあの夢なの? うなされてたわよ? あまりうるさくて眠れやしないわ」
声に反応し、青年は止まる。ゆっくり
「まったく、何とも可哀想だこと。私が
小柄な体に伸ばした
青年が歯噛みする音が牢にはっきりと響く。
「黙れターヤ。フィオナを死に追いやろうとしてた君に、誰が
怒りを抑えて、
ターヤと呼ばれた修道女は、さも喜劇を楽しむかのように笑う。
「遠慮は無用よ、クロム」
クロムと呼ばれた青年は、再度素手で床石を何度も殴った。拳から赤い雫が滴る。
「フィオナを助けられるなら、僕は何でもするだろう。だけど……
「おっかしい」
ターヤはころころ声を上げ、笑う。
「牢獄の中でできる事なんて、懺悔くらいしかないじゃない。それに、貴方が赦しを得たと思えたら、悪夢を見たりはしなくなるかもね」
クロムの口から、歯が砕けたかのような音がする。
「彼女への
口から一筋、血を流しながら、クロムはその目に、暗い輝きを宿して
「彼女を裏切ったのだから」
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