エピソード:42 水野舞の場合 その1
泳ぐのが好き。というか、水に浮いてるのが好き。水の中にいるのが好きだった。陸上生物に生まれてきたのが間違いだったんじゃないかと思うくらいに、プール開きを誰よりも楽しみにして、シーズンオフは誰よりも悲しんだ。両親が哀れみを催して水泳教室に通わせてくれたりもしたのは余談だ。
小さな頃はまだ良かった。でも小学生高学年とか中学生になってくると、勘違いした男が続出した。水着になって浮いてるだけで、誘ってるだの期待してるだの、ウザ過ぎた。
ただ浮いてるだけだとそんな連中が後を絶たないので、仕方なく背泳ぎで時間を稼ぐようになり、いつの間にか大会の選手に選ばれるようになったのも余談。
デスゲームは一部の生徒達に福音になったろうけど、自分にも当てはまった。私をいつも淀んだ目で見ていた連中が抽選会場で私を見つけるなり、彼らが私を好きに出来るだろう場所へと連れ込もうとした。
私は彼らにつきまとわれるのもこりごりだったので、海洋国家へと続く出口から逃げるようにして彼らを誘い、海辺まで引きつけて、地上で溺れさせてあげた。
どうって、水の大神の力で。水を好きに操作出来るのは、私にとってこの上無い天の祝福だったし、水中呼吸のスキルは
私を
気分がとても爽快だった。元の世界だと、いつもなぜかどっちもどっちにしたがる連中多すぎたし。いや私一度も誘った事無かったし、勘違いしてくる奴にはちゃんと言葉にしても断ったし、それでもあきらめずに乱暴までしようとしてくるとか、控えめに言って殺されて当然でしょ?
デスゲームの始まった日は、二学期の始業式という事で、授業は無くてすぐに部活で泳げるのが分かってたから、水着を制服の下に着込んでいた私マジファインプレイ!ぐっじょぶ!
いくらでも泳いでられるし浮いてられたし、部活とかでは気にしないよう努めないといけなかった人の目も気にしないで良かったのは、私にとって天国でしかなかった。
ちなみに、海水はいくらでも真水に出来たし、私の側に水棲の魔物とかが寄って来ないようにも出来たし、飲み水にも、体を洗うのも、何も困らなかった。
とはいえ、日が落ちて寒くなってきてお腹も減ってきたら、仕方ない。私はしぶしぶと浜へ戻り、愚かな男子部員達のなれの果てのメダル6枚と彼らの所持金計60枚の金貨を拾って、最寄りの街へ、というか連邦共和国の首都の海際の、適当に目についた宿屋に入って部屋を取り、海鮮料理の夕食も楽しんだ。
部屋に戻ってからは、入手したメダルの内容をちゃんと把握するように水の大神エイミアからお小言をもらった。
<あんなゴミカスどもにあなたを好きにさせるつもりもいきませんから手を貸しましたけど、加護の相性や状況次第であなたも苦戦する事も忘れないように>
――はいはい。わかってるわかってるって。
まるでママみたいにがみがみ言ってくるエイミアにせっつかれて、入手したメダルがどんなものか確認した。
一枚目。情欲。いらんっ!
二枚目。切断。使えるかも?
三枚目。偽装。むむ、これも使える、のか?
四枚目。回復。当たり?
五枚目。循環。なんだこれ?
六枚目。浮遊。なんでこんなのが?
「一枚目のは、一番エロい目で私を見てた奴かな。二枚目のは、制服切ろうとしてきた奴か。水着が無事で良かった。他のはどれが誰のだったか分からないし重要でもないか」
<ちゃんと、それぞれの加護スキルの内容を確かめなさい。あなたも死にたくないのなら。所持枚数が計7枚なら、いったん3枚は私の加護スキルにつぎ込んでレベルを上げておきなさい>
「そうするとどうなるの?」
<他の加護スキルのレベルを上げられます>
とりあえず試してみた。水のを上げるのに使うのは、情欲と循環と浮遊でいっか。
切断は、そのまんま。本当なら武器に使って切れ味を増すのに使うみたいなんだけど、
<あなたなら、水で切る事も出来るようになります。それは有効化しておく候補の筆頭でしょうね>
なるほど。ウォーターカッターとかっての、教育番組か何かで見た事ある気がするし。加護レベルを3まで上げてみても、切れ味が増すだけらしく、これは実際試してみないと使い勝手はわからなそうだった。
偽装は、自分の姿を周囲に溶け込ませる事が出来る加護スキルだった。見た目だけじゃなく、影とか気配とかも誤魔化してくれるらしい。加護レベルを上げれば上げるほど見破られにくくなるらしいけど、これも相手次第なのかな~。1分の偽装でMPを1消費するってのは、燃費がいいのかどうかも微妙だった。
回復。パッシブで、加護レベル1で、1分間につき1のHPかMPを回復出来る、って、つよない?さっきの偽装、ずっと使えるやん!なんか傷負ったら治せる訳でそ?ただまぁ完全にタダではなくて、ずっと使ってると疲れたりお腹が減ったりして、バテたらストップするらしいのだけど、加護レベル3で1分間につき1の体力を回復できるっての出てきたから、無限回復出来るのでは?!と思ったけど、体力回復するにはMPを1消費するそうな。むぅ。でも使い道は多そう!
循環。自分に対して使う場合、HPをMPに、またはその逆につぎ込める。どちらもゼロまではつぎ込めないらしいけど、回復を強化する手段として使う?
自分以外の例えば水に対してなら、高温から低温へと生まれる流れを強めたりとか、加護レベルを上げればいろいろ使い道は増えそうな気配はした。
浮遊。対象を浮かせる事が出来る。1立方メートルくらいまでの大きさの物で、MP1で1分浮かせられるらしい。浮かせるだけ・・・・・。何に使うんだ?
<マイ。明日は、服もそうですが、ある程度大量に水を入れられる皮袋を買っておきなさい>
――保険の為?
<そうです。いつもいつも海際や水のある場所に居られる訳も無いでしょうし>
――でもさ。水を操作出来るのなら、相手の体に触れられれば
<相手も何らかの神の加護を得た者だというのを忘れないように。触れる事があなたにとって好機になるなら、相手にとっても好機になるからあなたに触れさせた、という事もあるかも知れないのだから>
――そっか。そういえばそうだったよ。一応、いざって時にはやるくらいに考えておく
<そうしなさい。情欲は、まぁ、あなたの性格からして、ほぼ使う機会は無いでしょうから、循環と併せて私の加護レベルを上げるのに使って、他のは有効化しておくのはどうかしら?>
――いいんじゃない、それで
<本来なら、メダル構成をどうするかまで口出しするのは、あまりほめられた真似ではないというか、ルール違反ぎりぎりすれすれというか>
――アウトじゃないならセーフって事にしておこ。もう眠いから寝るねっ!
そんな感じに、ステータス画面を見ないまま初日を終えた私だったけど、翌日部屋の外に出るまでにはエイミアに言われて、レベルアップで得たポイントを、生命力と素早さと知性に振っておいた。
女性用の服を買って着替え、エイミアに言われた水を入れておく用の皮袋も二つ買い、それとは別に小物とか食べ物とかを入れておく用のリュックも買ったりして町中をうろついてると、他の生徒達のだろうメダルの反応が近づいてくる事もあったけど、面倒を避ける為に逃げて離れておいた。
一日の大半は海の上で泳いだり寝て過ごした。偽装を使っていれば、漁師の船とかが勘違いして寄ってくる事もなく、時々回復を挟んでおけばMPや体力が尽きる事も無かった。
私はそんな悠々自適な生活だけを満喫出来ていればそれで良かったんだけど、周囲はそうじゃなかった。
その代表の一方が、
私も出だしで六人狩ってたのもあって目立ってたせいで、尾上から目を付けられてしまった。というか、いずれ倒すみたいな謎のライバル宣言されたかと思ったら、それは表向きの嘘で二人で組んで南大陸のメダルを狩り集めて、最終的にも二人で勝ち抜こう!みたいなメッセージが来てたけど、面倒だし疑わしいから無視しておいた。
んで、もう一方が、水泳部女子。十数人いた内の全員じゃなくて七人なんだけど、さらにその内二人の彼氏が、私が初日に処理した六人に含まれてたらしい。
秋山と田代って一個上の先輩達は、最初から私が連中を誘って餌食にしたと決めつけてた。七人の内の誰かが抽選会場を出る私達の姿を見てたらしい。
相手にするだけ面倒だし煩わしいのでメッセージは無視してたら、何日目かに団体さんでやってきた。
「ちょっと顔貸してくんない?」
と言ってきたのは、水泳部の部長にしてエースだった三年女子の倉方さん。きれいだけど気性も激しい人で格闘技も嗜んでて、のぞきとかしようとした男子部員は容赦なく凹って退部させてた豪傑でもある。女子人気も高い人だった。五花に選ばれた事も何度かあるって聞いたような。どうでもいいけど。
「私に乱暴しようとした男子部員達の件で謝罪や賠償を要求するとかだったら、死んでもお断りですが」
「あんなゴミども、どうでもいい」
倉方さんの背後に控えてた秋山と田代の二人が抗議の声を上げたけど、一睨みで黙らせた。
繁華街からは少し外れた波止場のカフェのテラス席に二人で座り、残り六人は少し離れたテーブルに。
チャイみたいなお茶が出されて、一口つけてから尋ねた。
「それで、どんなお話なんですか?」
「水野。お前、この戦い、勝つつもりか?」
「熱心に勝ちに行くつもりはあんまり無いですけど、誰かの為に殺されてあげるつもりは無いです」
「ふむ。まぁいいか。南の情勢は把握してるか?」
「尾上が傭兵雇って生徒とか狩ろうとしてるくらいは」
「その尾上と私達は敵対してる。正確に言うと、奴の傘下に入って勝ち馬に乗ろうとしてる奴らもいて、そいつらに目を付けられてる感じか」
「面倒そうなら、他の島に逃げちゃえばいいのに」
「逃げるだけでやり過ごせるならそうするさ。しかし月に一枚メダルを増やさなくてはいけないなら、ちょうど都合が良い相手でもあるからな」
「勝手にやりあってて下さい」
「しかし、南大陸というか南方諸島でお前は上位に居る存在だ。居場所が突き止められれば無関係を決め込むのも難しいだろう」
「そしたら海渡って別の島に行きます。幸い、島も国もいっぱいあって関係も入り組んでるらしいですし」
「単刀直入に言おう。力を貸して欲しい」
「イヤですって言うのは簡単なんですが、見返りは?」
「尾上と、奴が持ってるメダルと金はお前の物とする。分配は要らない」
「それって、一番大変な奴を倒せ。成功しなければ報酬も無しだってだけじゃ?」
「そうとも言うかもな」
「話になりませんね。私に絡んでくれば対処するでしょうけど、だからといってけしかけてくるようなら別の何処かに逃げるか、けしかけてきた側もろとも狩ります」
「ずいぶん自信があるみたいだな」
「先輩ほどじゃないですよ」
なんとなくだけど、先輩の余裕には、裏付けがあるように感じた。私が水の大神の加護を得ているように、彼女もそれなりに強い神様の加護を得ているのかも知れない。
<マイ、この相手には油断しないように>
――相性が悪いとか?
<そうですね。対処は可能ですが、一つ間違えるだけであなたは殺されそうです>
なるほど。それは貴重な助言だ。
その日は物別れに終わった。秋山と田代は私に言いがかりをつけてきたけど、倉方先輩に一喝されて引き下がった。でも、その表情見る限り、やばそうな感じしたけど、それを見落としてるような倉方さんでもあるまい。
私がそれからの数日を、逃げ先の島とかを吟味するのに費やしたりしてる間に、尾上一派と倉方一派の、およそ十人対十人くらいの抗争があったらしい。それぞれのメダルの枚数とかは拮抗してたぽいけど、尾上の傭兵が、やはり戦い慣れてる存在は、日本で普通の高校生してた子供達にはきつい相手だったみたい。
惜しいかな。倉方先輩は殺されてしまったようだった。そのグループにいた何人かは尾上一派の捕虜というか奴隷にされたらしい。翌月以降の貯金扱いで。待遇はお察しだろう。助ける義理も無い。
その抗争が起きるまでに私も追加で二人ほど倒してはいた。流れ弾みたいな感じでやってきたのを海と陸とで狩った。メダルは一枚ずつで、片方は凝固、もう片方は接着。それぞれを組み合わせると、それなりに楽しい使い方が出来そうだった。
レベルも、自分に時々寄ってくる海の魔物を狩って少しずつ上げていた。抗争のどちら側が勝っても私が次の標的になりそうだったしね。
で、抗争の翌日に、尾上からコンタクトがあった。以下はメッセージでのやりとり。
「俺の傘下に入れ。悪いようにはしない」
「お断り。入る理由が無いし」
「いくらお前でも、俺の手の者全員を相手にすれば勝てる保証なんて無いだろう?お前に加護を与えたのが水の大神なのは俺も知っているが、それでも無敵って訳でもないだろう」
「まぁ、普通に考えてそうだろうね。で、だから?」
「大神は他に六もいる。それら全部を自分一人で相手するつもりか?」
「死にたくないなら、いずれ相手するしかないだろうね。どのみち、一人しか生き残れないんだし」
ちなみに、この対話が始まった段階で、私は皮袋の一つから、部屋の床や天井やドア枠や窓枠なんかを薄く水を這わせて覆ってあった。
「どうしても、組むつもりは無いのか?」
「そっちにも無いのに何言ってるの?配下になれって、対等に見てないじゃん。あ、これまでは面と向かって敵対してこなかったから見逃してきたけど、手を出してきたら、もう見逃さないからね?」
「それはこちらの台詞だ」
一拍置いて、窓とドアから一人ずつ飛び込んできた。二人とも、窓枠とドア枠を覆っていた薄い水の幕をくぐった瞬間に、胴体を二分されていた。きちゃない。この部屋、それなりに馴染んできてたのに、追い出されるだろうな。余所の島に移る良いきっかけか。
見た感じ、どちらも大人の男性だったので傭兵なのだろう。死体消えなかったし。私はもう片方の皮袋の口も開けておいた。
ふと、窓の外から部屋の中に何か投げ込まれてきた。とっさの反応というより、水の大神による自動防御って感じで、皮袋の中の水が長い腕の様に伸びて、火炎瓶か毒の何かでも発生させそうだった瓶を掴み、飛んできた方へと投げ返した。通りの方から二、三人の悲鳴が聞こえてきた。
このまま宿屋に籠城してても攻められっぱなしになりそうだったので、海の方へと駆けだした。海に近い方が何かと戦いやすいしね。
向こうもこちらの逃走ルートに網を張っていたようだったけど、適当にあしらって逃げた。凝固した水の玉を当てるだけでも相手は顔の骨が折れるくらいの痛みを感じるらしいし。(強めに打ち出せば煉瓦の壁にも穴を開けられるレベルです)
追ってくる方も死にものぐるいで止めにきてる感は無かったので、誘導されてるんだろうなと薄々感じ取れた。つまり、海でも私をシトメられるだろう何かを相手は準備してると思うべきで、私はたまたまだけど、そして水の大神エイミアには当然の様に心当たりがあって、事前に対策は話し合って決めてあった。
宿屋から走って逃げてる間に、後を追ってきてる足音と気配は十人分くらいになってた。メダルの反応はその二倍近く。
私は波止場から海へとジャンプ!そのまま海面を走って20メートルくらい離れてから振り返った。生徒みたいのが、7、8人かな。どの顔にも見覚えは無かった。あっても無くても別にかまわなかったけど。
「水野、舞だな?」
「だったら何?」
「まだ判断は変わらないか?今ならまだ反抗を許してやろう」
「許してもらおうとか思ってないからいいよ」
「・・・そうか。残念だよ」
話しかけてきてた奴が尾上だったのだろう。集団の中で中心の奥まった位置にいて、護衛だろう傭兵達に四方を固められていた。
そいつが手をかざしてきたので、私も防御手段を展開。まぁ、ただの水なんだけどね。
奴の手が光ったと思うと、翳した水の壁に阻まれて帯電した。
「ば、ばかな?!」
何度も稲妻が放たれたけど、私の防御は崩せなかった。足下の海面近くにも放たれたけど、私は感電しなかった。
「それが、倉方先輩が持ってたメダル?」
「知ってたのか?」
「ううん。ただ、私と戦えるだけの何かは持ってそうだなとは思ってたから」
尾上がさっと手を振ると、魔法とか弓矢の類も飛んできたけど、どれも余裕で防いだ。
「くっ、倒せないか。しかしいずれ追いつめて倒し、お前のメダルを奪ってやる」
「あれ、おかしくない?」
「何がだ?」
「だって、あなた達がこの場から無事に逃げられて出直せるって前提だよね、それ?」
「お前が強いのは水中とか水上だろう?陸上、特に水際から離れればお前とて」
「ふーん。そしたら、ちょっとだけ本気出しちゃおっかな♪」
先ずは、帯電してた真水の壁を、ばらばらに、ショットガンの様に周囲に放った。数十発なら防いだりよけれたりしたのかもね。でもそれが数百発以上なら、避けられるような規模じゃなかった。横殴りの暴風雨に、傘で全部防げるかっていうと無理だよね。
大半の相手が痺れて動けなくなってる間に、私は海中へと沈んだ。ほぼ全部のメダルを水の大神の加護レベル上げに回して、ぷち津波を起こした。
――やっておしまいなさい、波さん!
<私の名はエイミアです>
細かい事には気にせず、やってくれた。痺れて動けなくなってたのも、痺れながらも何とか逃げ出していたのも、高さ5メートル以上の津波に呑み込んで、海中へと引き吊り込んだ。
海中深くへと沈めていって、窒息死させていった。
生徒達の死体はメダルへと変わっていったのだけど、その内の一枚が吸収だった。その加護スキルは、まんま吸収だったんだけど、内容がやばい。
相手の
イヤな感触だったんだけど、吸収は、食事の感覚に近かった。HPやMPを吸収するには相手の死体を吸収というか消化しないといけない感じで、私は回復の加護スキルを有効化する事で死体をお食事する事は避けておいた。
名前も顔も知らない何人かを吸収していると、鑑定スキルを吸収出来た。たぶん、尾上の側で耳打ちとかしてた奴だ。スキルの反応が無かった相手からは経験値をもらっておいた。傭兵さん達が結構美味でしたね。レベル上げ的に!
さて、と。メインディッシュはまだ残っていた。
水中呼吸を可能にするアイテムを身につけているので生き延びてた尾上を水で拘束したまま、いったん海上へと浮上した。
「・・・殺さないのか?」
「殺すよ?でも、もらうものは全部もらっておかないとね」
「渡せば殺されると分かってて、渡すかよ」
「そうだね、いろいろやりようはあると思うんだけど、そうだ!死蔵してたアレ使ってみようか」
水中呼吸のアイテムを奪って、単純な水責めでも良かったんだけど、ほら、試行錯誤はしておくべきかなって!
人目につくといろいろな意味でよろしくないかもなので、再び水中へ。そこで、尾上の両手両足を凝固させた海水で拘束します。体の位置も動かないように水中で固定。
おい、何をするつもりだと目で訴えてきてたけど、にんまり笑うだけに留めてあげた。
使うのは、情欲の加護スキル。水の大神の加護スキルと組み合わせ、もちろん自分の手とかでは一切触れずに、尾上の全身をうぞうぞしてあげたら、悶えだした。効いてるらしい!
情欲の加護レベルを上げつつ、棒状に凝固してあげた水で、前後から激しく、突く!突く!突く!水だからね~、中でも自由に変形出来るのよね。これは悪魔的な能力だわ・・・。
これ以上の詳細については一線(R18のライン)を越えてしまうので触れない。が、完全に理性が崩壊した尾上から目的の記憶を
ちょうど辺りは夜闇に閉ざされてきてたから、私はある程度の水の塊と共に街中へ。尾上が泊まっていた宿屋というか借り上げてた館へと向かった。
人の背大の水の玉転がしみたいな?それよりは大きなスライムみたいな謎の物体というか流体が街路を移動してる様は、見かけた人が居ればホラーだっただろう。無視したけど。
小じんまりした商館にたどり着き、門番の傭兵二人を雷の神の加護スキルで麻痺させて館の中へと侵入。使用人みたいなのは放っておいてというか、傭兵とかの変装とかかも知れないので麻痺させつつ、尾上の部屋にあった宝箱とか金目そうな何かとかは根こそぎもらっておいた。
さらに地下へと降りていって、そこに男女別に収監されていた生徒とかメダル持ちが五人いた。翌月以降の貯金用の存在。あの秋山や田代も混じってた。連中は、私を見るなり、当然の様に勘違いした。
「あんたが一人でここに来たって事は、尾上を倒して助けに来てくれたって事よね!?遅いよ!」
「そうだよ!お前がいれば抗争の時だって負けてなかったかも知れないし、負けた後で私達がどんな酷い目に遭ったか知らないでしょ?」
「うん、知らないし、知りたくもないし、知る必要も無いかな」
「ふざけんな!あんたのせいで私達は何度もつらい思いをしたんだから、賠償しろよな!」
「そうそう!メダルも、金目の物も全部」
「もういいや。とりあえず死んどけ?」
反論は、口に水を突っ込んで声を封じて、記憶はたぶん価値無いし、経験値も持ってなかったのだけど、片方は水魔法持ってたのでもらっておいた。ラッキー!もう片方のはMP補充に使った。
牢屋に捕らえられてたのは、話聞くだけやっぱり面倒そうなので、全部メダルにした。一人がスキル:夜目を持ってたのでもらっておいた。HPもMPも全快してたので、経験値にしたものの、五人分でもレベルは上がらなかった。まぁみんなレベル1だったしね。自分のレベルも15にまで上がってたし。
その夜。
私はユーツェル連邦共和国の首長国でもあるエマシーナ共和国の首都ミシディアのある島を後にして、隣の隣の島にあるリュフ・イ・エ公国の港街にまで移動した。ここには、ミシディアでも時々見かけた魚人達が、全体人口の2ー3割は居そうだった。彼らは様々な魚っぽい頭部を持つ人間の体タイプの魚人と、下半身が魚とかの人魚タイプの魚人の二種類に大別出来た。
人魚タイプは地上をどう移動してるかって言うと、エアクッションみたいな空気の塊みたいのに座って移動してる感じ。ただそれでも不便は不便ぽいし、それなりに高価ぽいアイテムらしいので、使ってるのは身分が高い人魚限定みたい。
私はそんな異世界情緒を楽しみながら今度こそまったりと日々を(せめてしばらくの間だけでも)過ごそうと思ったのだけど、エイミアも、周辺情勢も、そんな怠慢を許してはくれなかった。
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