エピソード:25 担任教師との対話と、生徒会メンバーとの戦い

「桜田先生、助けてって、どういう意味です?」

「文字通り、だよ。私、生徒会や教師達が主導するグループにいたんだけど」

「崩壊したって話は聞いてます」

「うん、そうなんだけど、生徒会長の子とかが暴走してね。父さんが・・・」

「桜田先生。もう一度聞きますね。私達が置かれてる状況、理解してます?」

「理解、してなくはないと、思う、けど、生徒や教師同士とかで殺し合わせるとか、間違ってる!」

「ええ、間違ってるでしょうね。それで?」

「それでって、何とも思わないの?」

「思ったところで、それが何になるんですか?私が少なくとも3人殺してる事はもう知った上で来てるんですよね?違うというならこの場で4人目になってもらいますよ?」

「知ってて、来たわ。それでも、助けてもらいたかったから!」

「誰を?」

「自分の身を自分で守れないようなみんなを!あなたなら」

「守れるかも知れませんけど、もう一度聞きますよ?状況、理解してるんですか?してないって言うなら殺します。この場で」

「してる、けど、したくないの!」

「あのですね、私が先生の要請を受けて、先生の助けたい誰かをみんな助けられたとします。その後で、いずれ、私はその全員を殺すことになるんですよ?先生自身を含めて。そんな状況理解せずにここまで来たんですか?どうやって来たかも気になりますが」

「私に加護を与えてくれたのは、旅の神様レルメロ。その加護のスキルは、日に一度、行った事のあるどこかか、思い浮かべた顔見知りの誰かのところに転移できるというものなの」


 正直、この人にこのスキルが割り当てられてて心底助かった。もっと戦闘向きな人に当たってたら、目立ち始めてた私とかさくっと狩られてかも知れない。中央大陸で私を狩ろうとしてる連中の手にも渡らないでくれてて正直助かった。


「ちなみに、そのスキル内容を知ってるのは、他に誰かいますか?」

「父さんや教師や生徒会メンバーと、一部の生徒には」

「危ないとは思わなかったんですか?」

「信頼しあうには、互いに情報を公開しあうしか無いだろうって・・・・・」

「それで、狙われて逃げてきたにしろ、グループ崩壊からはもう一週間以上経ってますよね?」

「私は、私をかばってくれた父さんから逃げるよう言われて、先にグループから離されててね。その時一緒にされた二人の生徒と王都から離れた農村に逃げて。数日後に追いつかれたけど、その後も二人の手を取って転移で逃げてたから」

「それで、どうして今更私の所に?」

「ずっとレベルトップだったし、すぐにでも頼りたかったけど、三人殺してるのに安全な筈が無いって一緒の生徒達に反対されて」

「当たり前ですよ。その生徒達の方がしっかりしてます」

「でも!とうとう生徒会長達に二人が捕まっちゃったから、助けを求めに来たの!」

「私からすれば、あなたを殺してとりあえずメダルをもらっておくのがベストに思えるんですけど」

「そんな・・・」

「知ってますよね?中央大陸にいる生徒達が協同して、私を倒そうとしているの?それもあって一緒にいた生徒達は巻き込まれたくないと思って反対してたんじゃないんですか?」

「そう、だけど・・・」

「はあ。私が先生を助けるとして、先生は私にどんな見返りをくれるんですか?人は見返りが無くても人を助けるものなんて言ったら、この場で殺します」

「・・・っ」

 まさにその台詞を言いかけてたらしい桜田先生は、悔しそうに口をつぐんだ。

「先生、人質に取られたっていう生徒二人を助けるには、彼らを人質に取った生徒達を殺さなきゃいけない事、わかってますよね?」

「・・・殺さないでも、倒すとかだけじゃ、ダメなの?」

「生徒会長、敵スキル無効化のスキル持ってるって噂がありますしね。そんな相手を手加減して倒す?生徒会全員が5枚以上のメダルを手に入れてるんですよ?そんな相手に手加減してたら間違いなくこっちが殺されますよ。なめてるんですか?」

「・・・確かに、彼はそのスキルを持っているわ」

「それで、繰り返しになりますが、先生が二人を助け出せたとしてその後は?先生が犠牲になるとか言っても二人のどちらか片方にしかメダルは渡せませんよ?そんな事は許しませんけど」

「あなたには、救出が済んだ後に私のメダルを渡します。それで、お願いを聞いてもらえないかな?」

「もう一度言いますよ?私は私以外の全員を殺す予定です。私が生き残る為に」

「いずれ、二人がランダム対戦で命を落とすのは、嫌だけど、仕方ないとしても、それまでは」

「すでにもうそういうので一人囲ってますけど、けっこう面倒なんですよね。それに、二人が逃げ出そうとしたり助けてくれって命乞いしてきても私は殺します。最終的に殺すのは変わらないんですから」

「・・・じゃあさ、こういうのはどう?私の父さんは、生徒会長達にたぶん殺された。その仇を討って欲しいっていうのは?報酬は、私のメダル。断るなら、私は戻って彼らに殺される。きっと喜ばれるわよね、彼らにしたら」

「その条件でいいでしょう、受けてあげます、が、情報、たれ流さないで下さいね。一緒に居たっていう生徒達にも」

「え、どうして?」

「当たり前でしょう?相手はあなたの能力を把握してる。もしかしたら私を呼び込んでくる事も想定してるかも知れない。そこに私が飛び込んでいったらどうなるか、どうして考えないんですか?」

「むしろ、人質を取られてて、助けたいのなら言う事を聞けと脅迫されて転移してきた、という方がまだ信じやすいな」

「ありがとう、リグルドさん。それが一般的なものの見方だと思いますよ、桜田先生?」

「誓うわ!違う!私はあなたをはめようとなんかしてない!」


 私は少し前から、また裏切りの神の加護を有効化して、不信のスキルを使っていたけど、嘘は言っていないようだった。


「わかりました。あなたの言葉をそのまま信じた訳ではありませんが信じましょう。あなたが追っ手に捕まった地点とあなたがスタートした地点はどの辺りになりますか?」

「スタートしたのは東の大国ポルジアの首都レトセア。その南西に二日ほど行った先にあったラボアズって農村で追いつかれて、その後何度か転移した先で捕まったの」

「そこまでの移動手段は?」

「農村から作物を売りにきて帰る人の荷車の後ろに乗せてもらったの」

「生徒会達の本拠地は?」

「王都の一角にある一軒家」

「よく入りきりましたね?」

「裕福な商家の屋敷を、その・・・好意でというか、魅了スキル持ちがいたから、その人の力で・・・」

「生徒会の副会長とかです?」

「良くわかったわね!?」

「会長と副会長がそういう仲だってのは有名でしたからね。最後には二人が勝ち残って、副会長が会長に勝ちを譲って生き返らせてもらうとか、そんなシナリオを描いてるんでしょう。

 さて、リグルドさん。ここからポルジオの王都リトセアまでメジェ助でかっ飛ばしたとして、何日くらいかかるでしょうか?」

「通常の旅路なら一ヶ月は余裕でかかるだろうが、普通のグリフォンでも一日分を二三時間くらいで飛んでしまったりするからなぁ。その二倍となると、五日未満くらいか」

「そうするとやっぱり転移で行った方が早いか。先生、あとどれくらいで使えるんですか?」

「一回使うと、24時間待たないと次回使えないから、あと23時間くらいかな」

「そしたら、それまでにいろいろ準備しておきましょうか」


 私はオールジーさんにアンガスさんを呼んできてもらい、アンガスさんにはポルジアの王都リトセアの冒険者ギルドに連絡をつけて緊急依頼を出してもらう事にした。生徒会メンバーは桜田先生を追って山中に向かいまだ戻ってないだろうけど、今後の布石も兼ねて。メダルの位置で気取られない人達の方が調査や奇襲には向いてるからね。私は桜田先生が裏切っていた時の為にちょっとした小細工もした。アンガスさんには、輝人達の護衛も頼んでおいたし、ミケール様を通じて国王様経由で、ちょっと大がかりな申し出を各大国に通達してもらうよう依頼しておいたし。結果が楽しみ。


 その夜は、そこで先生とリグルドさんとで休んだ。もちろん家の外はフル警護状態だ。

 先生からは、私が初日からどんな風に活動してきたのかを聞かれたので答えた。グラハムさんやオールジーさんを助けたと言えなくも無い話の辺りでは、何か言いたそうな顔をしていたけど、言わないでくれた。まぁ言いたい事は伝わってはいるよ。同胞達には同様に出来ないだけだから。


 翌朝、村の様子を見た先生は、そこに展開されていた状況が理解できなかった。村、たぶん村の筈なんだけど、どうしてそこにドラゴンが、その死体が十体も並べられているかを。(昨晩はてんぱってたのもあって気付けなかったらしい)


「あ、あの、七瀬さん?もしかしてなんだけど」

「全部狩りました」

「えっと、ドラゴン、だよね?」

「はい、赤竜レッド・ドラゴンですね」

「ハリウッド映画とか、いろんな作品に出てきたりするけど、すごく、強いのよね?」

「まぁ、それなりに?」

「嬢ちゃん。一応言っておくが、赤竜レッド・ドラゴンは強いからな?それなりってくらいじゃなく、一人で十頭とか、普通は狩れないからな?!」

「いまさらですね。私が相手しなきゃいけない中には、赤竜レッド・ドラゴンよりずっと手強いだろう相手が含まれてるんですから」

「そりゃそうなんだろうけどよ」


 今回連れていくのは、リグルドさんのみ。桜田先生の体に触れてれば一緒に飛べる可能性もあるけど、止めておく事にした。


 ガルテラさんからはあのミニチュアソードを受け取っていたし、その他便利そうなグッズなどなどを好意で譲り受けてもいた。忙しそうだったけど、ほくほくして幸せそうでもあった。

 その内の一つは、スキル:反射付きの眼鏡。魅了スキルや、邪眼なんかの効果を無効化というか相手に反射してくれるらしい。普通に買うと金貨千枚とかするらしいけど、とりあえず貸しておいてもらった。生徒会長のスキルの発動条件や効果範囲が読めないけど、副会長のも含めて保険くらいにはなるだろう。


 輝人はついてきたがったけど却下。例の五人組が襲ってきたら撃退してもらわないといけなかったしね。オールジーさんとグラハムさん、それにプスルさん達のパーティーが護衛についてるから、まぁたぶん大丈夫だろうけど。


 香先生の加護スキルのクールタイム待ちの間に、生徒会メンバーのスキルは改めて確認させてもらった。


「生徒会メンバーの加護とスキル、全部わかるだけ教えて下さい」

「私が知ってるのは、彼らのスタート時点のものまでだけど。本当の情報かどうかわからないし、それでもいい?」

「鑑定スキルという例外はありますが、プレイヤー間はみんな、誰にどの神様がついてて、その加護はどんな力なのか、分からないんです。鑑定持ちじゃなくても、似たような加護スキルはあってもおかしくないし、最初は彼らも警戒してた筈なので、それなりに信用が置けるかと」

「じゃあ、話すね。

 生徒会長の及川充についたのは法の神。その加護は、法則性の変化。強めたり弱めたり変質させたり出来ちゃうんだって」

「どんでもなく強い加護ですね。そんな相手が首尾良く、スキル:敵スキル無効化まで手に入れてたら、そりゃあ暴走しますよ」

「頼れるって、思ったんだけどね。私だけじゃなく・・・」

「一人しか生き残れないデスゲームじゃなければ、信じてみる選択肢はあったかも知れませんが、続きをどうぞ」


 残り4人は、こんな感じだ。

 副会長の橘亞璃紗ありさについたのは愛の神。その加護の力は、対象の心を自分に固定するという、これも使い様によっては恐ろしいスキルで、そんな相手がスキル:魅了持ちとか。怖い怖い。


 書記の大森美祢みねに加護を与えたのは強欲の神。加護の内容は、欲しがり。倒した殺した相手のステータスの一部かスキルを奪えるらしい。そんな相手がスキル:物理攻撃無効持ちとか、普通に考えて悪夢な存在だろう。この相手も放っておいたらどこまで強くなるかわからない。


 経理の西田洋介に加護を与えたのは賭博の神。そんなイメージは無いキャラだった筈が、神様にしか見えない何かがあるかもだしね。その加護の力はギャンブル賭博。内容としては、自身の行為の結果に賭けて、思い通りにいけばリターンが2倍に。いかなければリターンがマイナス2倍になるらしい。

 使いどころは難しいけど、スキル:鑑定持ちなら、どんな行為に対して賭ければ良いか判断はしやすそうだ。それに、もしも賭けられる対象が自分の行為に対してだけでなかったら?鑑定持ちにいろいろ暴かれる前に、最初に潰せたら潰しておきたいな。


 最後に、広報の今井絵里。のほほんとしたマイペースキャラだと見られてるけど、生徒会の裏ボスはこいつではないかという噂すらある。根拠は不明だ。そんな彼女に加護を与えたのは、支配の神。加護スキルの内容は、支配。ひねれよもっと。具体的には、精神操作などの外部影響を受けていない状態で、加護を受けている当人からの支配を受け入れている事が条件ではあるものの、相手の行動を完全に支配できるそうな。

 前提条件が厳しめなものの、間違いなく強い。加護レベルが上がって、使える加護スキルが増えればもっと強い内容のが出てきてもおかしくないし、そんな彼女が得たスキルが、魔物テイムとかも出来すぎだろ。


 こんな加護とスキルのセットが5人も揃ってしまったら、そりゃあ弱者含めた大勢でがんばろうとか思わないよ。あらかじめメダル確保をする為の弱者を囲い込んだだけの状態を積極的に作った。生徒会長達の作戦と運の引きの強さの勝利だろう。


 ていうかさ、前回、確率の神、よく勝てたな?今回生徒会に加護を与えた神々、グルだったんじゃね?事前に組む事を示し合わせておいたまであり得そう。全ては世界の支配者、主神の座を勝ち取る為に。

 まーでも、その目が出てきたら絶対に仲間割れしそうだけどね。生徒会内部の人間関係とかも、いろいろ噂になってるくらいだし。


 東大陸掲示板などでも情報収集をしつつ、香先生の加護スキルのクールタイム明けを待って、私とリグルドさんは、東大陸の山中へと転移したのだった。

 うまくいくかわからなかった手土産もうまく運べたのは嬉しい誤算だけど、これはこれで後日役に立つ事だろう。


 さて、生徒会グループ5人とかでメダル30枚以上、がっぽりと頂きましょうか!


 転移してもらったのは、農村で追いつかれて、慌てて転移したという山の中。良くもそこから数日生き延びられたという感じだけど、片方の生徒の加護スキル:直感が活きたらしい。どっちに行った方がいいとか。そういうの、バカにならないよね。神様自身からの選択、いや託宣なら特に。(それならそれで気になる事は出てくるけど、あえて香先生に伝えるほど親切でも間抜けでも無かった。)


「どうしてここなの?」

 木々以外何も無い山中。特に目印になるような物も無い。だからこそ理想の転移ポイントだった。

「生徒二人を人質に取られた場所も、追いつかれた農村も、どちらも張り込まれてる可能性がありましたので避けたかったんです。それに確認ですが、先生が転移した時、いちおう、生徒会長の姿は見えていたんですよね?」

「うん。だいたい20メートルくらいは離れてたかな」

「貴重な情報ありがとうございます。一つの目安にはなりますから。

 さて、状況をまとめるとですね。彼らは5人で合計30枚ものメダルを持っていますが、望んだ場所に転移するスキルも、強制的に引き寄せるスキルもありませんし、一瞬で20メートルくらいの距離を移動できるスキルも無ければ、たぶん長距離を簡単に移動できるスキルも持ち合わせていません。ある程度ショートカット出来るようなスキルを持っていたから、先生達を追いつめられたでしょうけど、さて」


 私はメダルの反応を感じようとしてみて、ビンゴ。かつて校長のスキルを感じ取ろうとしてみたのよりは近い感じで、それなりに強いメダルの反応を五個感じ取った。総計30個にプラス2個だから。明確に感じられた。


「私もあちらのメダルの反応を感じ取れたという事は、あちらも感じ取れていてもおかしくないでしょう。方角はもっと山間が深い方ですが、かつて転移で逃げた方で間違い無いですか?」


 私が指さした方角を、香先生は頷いて首肯した。


「では、その反対側が農村?」

 私が振り返ると、

「はい、だいたいそんな感じです」

 と香先生は指さしてくれた。確かに、森の隙間に農地とかが広がってるスペースと人里の灯りがかすかに見えた。徒歩だとだいたい二、三日はかかりそうだろうか。

「つまり彼らは、ろくな移動手段が無い、足かけ十日以上はかかりそうな山中で、お荷物な二人を抱えた状態で、えっちらおっちら戻ってこようとしてるみたいですね。ふふふ、これは仕掛け甲斐がある」


 連中も、出来るなら香先生を取り逃がした場所でずっと張り込みたい筈だった。しかしそれは無理。なぜか?そこに残り続けて戻って来なかった場合のデメリットが大きすぎるから。経験値こそそこらの魔物を狩れば得られるだろうけど、メダルの変動はゼロ枚で留まる。つまり、今月分は良いとしても来月分は絶対に足りない。二人を殺したとしても、三枚足りなくなる。

 例え食料などを十分揃えていたとしても、だから彼らは絶対に村や街の方へと戻ってこざるを得なかった。そして彼らに、魔法のバッグなどの効果な便利グッズの持ち合わせが無い事も、これまでのランキング推移などから確定的に明らかだった。

 教頭先生が分配していたという金貨一千枚の残りの過半を集められていたとしても、買えていて一つか二つくらいだろう。つまりそれは、五人全員分ではない。集団心理的に、生徒会長だけ先にというのは不可能ではないにしろ、かなりリスクを伴った筈。買うなら五人同時の方が良い。つまり何らかのアイテムなどを買えていたとしても「それなり」止まりという事だ。


 私はチフ助やトン助達を出して、この国の王家への手土産を近くの地面に埋めておくよう指示した。香先生達が何とか生き残れたって事はそこまで過酷な環境じゃない筈だけど、後で複製達に警護させておけば十分だと判断した。


 これまで彼らが狩ったのは、おそらく副会長に魅了させた無力な犠牲者が大半だった筈。つまり魔石はほとんど持ち合わせが無い事になる。ならば、複製スキル持ちとして、これまでに稼いだ魔石の数と質の差で圧倒してやろうと決めた。生徒会長のスキルの射程がそこまで長くない事も決め手になった。


 絡め手の練習をしてもいいんだけど、たぶん自分よりメダル枚数がはっきりと上な集団は舐めない方が良い。だからこそ、初手からえげつなさ全開で行く事にした。


 香先生が転移してきたのは夜。だから24時間経った今も当然夜だった。分かっていれば当然対策も打つ。夜目が効くようになるポーション、8時間も保つ物で、金貨15枚だった。当然購入した。


 グリ助1に私、2にリグルドさんと香先生に乗ってもらい、高高度で、メダル反応がある方へと接近。彼らも逃げずに待ちかまえるようだったので、彼らの直上500メートルくらいで滞空してみたけど、やはり何も起こらない。完全に彼らの射程外なのは確かな模様。どの加護スキルでも、スキルでもね。

 彼らは一塊になって、何が起きても誰かの力でカバーしあえるよう準備万端なつもりだろうけど、試してみようじゃないか。


「いろいろあって迷っちゃうけど、そうだね、君に決めた!」


 先ずは小手調べで、マグ助マグマ・ゴーレムを実体化。彼が落ちていく間に、とりあえず十体複製して、複製は落下していくに任せたけど、マグ助マグマ・ゴーレム本体は地表に到達する前にスケッチに戻した。


「さて、お手並み拝見!おおっ!本当に無効化するんだ!」


 先頭で着地した複製マグ助は三体までが地表で原型を取り戻すまでの間に消滅させられた。ふむふむ、がんばりたまえ。

 彼らに遠距離攻撃手段やスキルが無い事が確かなようなので、私はゆっくりと降下していった。おそらく今井がテイムした熊っぽい魔物がいたけど、マグマ・ゴーレムの放つ高熱のせいか近寄れない。風の刃を放って腕を切り落としたけど、足から吸収されてまた腕は生えた。大森ぽいのが一撃加えたけど無駄だと察したようだ。

 さてどうするかと観てたら、三体が魅了されて、こちらの残り四体に殴りかかってきた。だがしかし!コントロールは奪われても複製の所有権はこちらにあるのでいつでも消せるのだな。向こうが期待を寄せたであろう三体を、私は消した。


 最初に出した十体は四体にまで減らされたので、お代わりを送り出す事にした。

 さっきと同様に複製マグ助十体と、それからジガド・マグマ・ゴーレム君行ってみようか!彼は七体複製して、スケッチから実体化したのは地表近くで引っ込めてみた。

 今度は何体まで消されるかな?

 君達の加護スキルで何が出来るのか見せてみそ?今後の参考にさせてもらうから。


 最初に出した四体が生徒会長達に近寄っていくと、急に動きが鈍くなった。観ていると、急に熱を失い、マグマのきらめきが消えてただの岩になっていき、今井の熊系魔物と大森に砕かれ始めた。


「なるほど。範囲指定で、なおかつ対象だけを限定できると。範囲内の温度をそんなに急激に下げてたら、自分達も動けなくなるだろうから」


 私はその様に観察しながらも、グリ助の複製を気分で七体ほど作成し、彼らのメダル反応の周辺から風の刃を一撃離脱で放っていくように指示してみた。


 マグマ・ゴーレムの複製を何体か倒して、対抗策を見つけた事で彼らの意気も上がっていたかも知れないけど、そんなに強力なスキルのMP消費が安い筈も無いし。さー、どんどん行こうか!


 複製ジグ助やマグ助達をゆっくりと接近させつつ、複製グリ助達に奇襲させる策はうまくはまり、大森らしき誰かが両足を断たれて地面に倒れた。これで前衛戦力は半減かな。

 さらに、向こうの精神的支柱の一つだったろう熊系魔物も惨殺。細切れ以下の地面の染みとなった。マグ助達だけに対応すれば良いという状況では無くなり、彼らの間に動揺が走った。

 副会長が何とか魅了で複製ジグ助を魅了して前線を保たせようとしたけど、魅了されたのは片端から消去。魅了の射程もそこまで長くないせいか、複製グリ助達は魅了されなかった。


 私は、地表がてんやわんやの騒ぎになってる隙に、彼らの背後150メートルくらい離れた地点に降下。地表でサラ助達とギー助達を実体化して、彼らの生き残りの方に向かわせておいた。

 彼らも私がいつの間にか降りてきてる事に気付いて近寄ろうとしてきたけど、サラ助達とギー助達に当然阻まれた。背後からは複製マグ助や複製ジガ助達が追いすがり、上空からはグリ助達が風の刃を放ち続ける。


 あ、一個メダル反応消えた。たぶん、さっき両足失った大森だね。物理攻撃無効化しても、マグマの特性やその温度とかまで無効化できるわけじゃないし、生徒会長の法の神の加護もおそらくは範囲効果から外れて、複製ジガ助に踏まれて地面と溶け合ったようだ。メダル回収は後回しでいいやと思ってたら、今度は今井の魔物テイムにコントロールを取られたようだ。そいつがこちらの味方に殴りかかってる間にメダルを拾い上げて生徒会長達と合流すべく走っていった。まだ余裕あるじゃん。


 経理の西田ぽい誰かが、複製サラ助達の攻撃をかわしながら彼らのヘイトを集めていた。たぶん賭博スキルも使ってるのかな。おそらく一度ずつで発動するタイプだから、多数の敵に単発攻撃を連打されると辛い筈とか思ってたら、複製サラ助達に集中し過ぎたのか、複製グリ助の風の刃で体を上下に分断され、メダルになって消えていった。

 残り三人か。前衛がいなくなって、副会長と今井が魅了と魔物テイムでどうにか均衡を保とうと粘っていた。まあMP量勝負だと、私には決して勝てないんだけどね!

 生徒会長が前に出てきてないのは複製マグ助や複製サラ助達の放つ高熱の空間で生き延びる為に、何らかの法則性をいじってるからなんだろう。そしてその間は、たぶんだけど他の法則性をいじれない。


 そんな訳で私はメジェ助1と2を出して、彼らを前後から挟み込むように嵐を発動させた。もちろん彼らのスキルの射程外からね。

 嵐の片方が生徒会長に消されたけど、気にせずもう一度放ったら、今度は消されなかった。そろそろMPが底をついたかな?メダルの反応がまた一つ消えた。今井のだろう。

 二つの嵐で彼らをサンドイッチにしていても、残り二つのメダルの反応はなかなか消えなかった。生徒会長が、自分達の周囲の空間の法則性でもいじってるんだろう。好都合だった。


 さあ仕上げに入ろうか。


「出番だよ、ジグ助」

 実体化ジグヴァーノは、本物よりは意志の強さとか怖さを感じなかったけど、それは自分が主だからなのだろう。


 私はジグ助を二人の上空100メートルくらいの高さに移動させ、私とリグルドさん達は元の500メートルくらいの高さに戻ってから、???となっているスキルを発動させた。

 それは、言うなれば閃光。元世界で言うなら核爆発とかが一番近いんじゃ無かろうか。数千度以上の温度で球状に地表がえぐられて、もちろん、残ってたメダルの反応は二つとも消えていた。

 ステータス画面の検索機能からも生徒会五人の名前を検索してみて、彼らが死亡した状態の表示に変わっている事も確認した私は、香先生に言った。


「復讐、終わったよ、先生」と。

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