エピソード:19 選択肢

 輝人はともかく、クロっちは感激してた。仮面の下からだばだばと涙が頬へとしたたり落ちてた。


「ありがと~!アヤっち、あなたは私の恩人だよーー!一生ついていきます!」

「場合によってはあと一ヶ月未満で私に狩られてお仕舞いになるんだから、そういうのは無しでいいよ、クロっち」

「それは、そうだけど、さ・・・」

「だから、ついてくるなって言ったのに」


 さて、二人の男女は縄でぐるぐる巻きにされ、目隠しもされていた。二人の側にはリグルドさんや輝人が控え、グラハムさんとオールジーさんはグリ助に乗った状態で少し上空で待機してもらっていた。

 自分も、魔法防御に効果のあるメダリオンや、状態異常の抵抗力を増すローブを重ね着したりして万全の準備を整えた後、女子の方から起こして目隠しを外した。

「ん、んんっ・・・、ここは、って、七瀬さん、七瀬さんだよね?」

一色いっしきさんだよね」

「そうだよ!よかったー、無事接触出来て!カズ君は反対してたんだけどね。問答無用で殺されたらどうするんだって」


 やりとりからわかる通り、一応の知り合いだった。


「七瀬さん。分かってると思うけど・・・」

「・・・分かってる。一色さん、どうして来たの?カズ君てその隣にいる男の人なんだろうけど、彼が言ってた通りだよ」

「え、嘘でしょ?だって」

「だっても何も無くて、私達、今、殺し合う立場にいるの、理解してるよね?」

「そうだけど、でも、七瀬さんて、誰かを殴ったり傷つけられるような人じゃなかったじゃん!?」

「えーと、私がもう最低でも一人を殺してるの、把握してる?してないで来たのなら、救いようが無いんだけど」

「でもそれは、相手から狙われて仕方なくとかじゃなくて?だったら」

「だとしても、変わらないよ。私が聞きたいのは、あなたがどの神様のどんな加護を受けてるかと、あなたのスキルだけ。素直に聞かせてくれたら、楽にしてあげられると思う」

「話したら、助けてくれる?」

「それはない」

「アヤっち。とっとと殺そうよ。時間稼がれてる内に何されてるか分からないんだし」

「それ言うならあなたがその代表格なんだけどね、クロっち」

「七瀬さん!私達友達じゃなかったの?時々、マンガイラスト同好会に遊びに来てくれたりしてたじゃない!?私、あなたの絵とか好きだったよ!」

「ありがとう。でもね、これ、友達同士だとしても殺し合わないといけないって、分かってて来たよね?」

「七瀬さんなら、私達を助けてくれるって思ったから来たんだよ!メダルの枚数はまだ少ないけど、レベルはダントツトップで、お金だってたくさん持ってる!」

「だから何?あなたの神様の加護は何で、スキルは何?」

「七瀬さん、あの優しかったあなたがどうしちゃったのよ?運命になんか負けないで!あなたなら」

「もういいわ。二人とも殺して、メダルの内容次第で、私がどちらを取るか決める」


 二人の雰囲気が一瞬で変わった。

 縄で縛られ気絶してた筈の男子の体格が一瞬で二回りくらい膨れ上がって縄が弾け飛び、一色さんが、「ダークネス!」と叫んで彼女の周囲5メートルが光を通さない闇に閉ざされた。

 とっさに後ろへと飛び退いた私を追って闇の中から突進してきた男子は、短剣をドスのように構えて突き込んできた。私がデスゲーム開始直後のレベル1のままだったら、あっけなく殺されていただろう。角兎の2倍くらいは速かったし、短剣をかわしても体当たりをかわせなければやはり弾き飛ばされた後に殺されていただろうな。


 男子の突き込みは、一般的なレベルから言えば決して遅くなかった。リグルドさんに比べるまでもないくらいだったというだけで。私はいちおう飛び退きからの横っ飛びで男子の体の正面からは避けていたのだけど、半球状の闇の玉から男子が出てきた直後、私がかわせたと思った時にはリグルドさんが男子の正面に立って、すれ違い様に剣をひらめかせ、鞘に戻していた。首と胴体が勢いのまま通り過ぎてから、やがてばらばらに地面に倒れた。

 一色さんの方は、頭上のグリ助から風の刃の連打を受けて傷を負って闇を維持できなくなったところに、輝人が短剣をその眉間に突き込んでとどめを刺した。


「輝人、そっちのメダルの内容確かめて。私はこっちのを確かめる」


 男子の方のは、力の神だった。加護は、任意の対象(自分自身含む)の力を増したり弱めたり出来る。クロっちに渡したら危なそうだし、自分なら実体化した魔物に使えそうな物だった。


「こっちのはそれなりに使えそう。そっちのはどう?」


 輝人はメダルを拾って持ってきて渡してくれたので、小声で話しつつ、クロっちから距離を取った。

「裏切りの神のメダルだってさ。加護レベル1で得られるスキルは、不信。相手の嘘を見破れるってのは便利かも知れないけど、強いか弱いかで言うと、強くはないし、持ってると何かネガティブな影響がありそうだよね」

「こっちのは力の神様。対象の力を強めたり弱めたり出来るんだって。これはちょっとクロッちに渡すと危ないかもだよね」

「あえて言うならどちらもだけど」

「互いに獲得したメダルなら交換可能みたいだからさ、ぼくや七瀬さんが獲得済みの無難な奴を黒田さんに渡すのもありなんじゃない?」

「そうだねぇ。力の神様のメダルなんて、輝人に相性抜群だろうけど」

「強化はされるだろうね。だけど、純粋に規格外のパワーで押された時、魔物でどうにか出来なかった時の保険になるかもよ。七瀬さんでも」

「その程度でどうにかなるなら、自分の得意な方の力でどうにかするし、出来ると思うよ。輝人が持ってるメダルと、その加護のスキルを教えて」

「建築の神のメダル。加護のスキルは、建築。設計した構造物を建築できるらしいけど、正直、ぼくには使いようが無いね」

 私には使いでがあるかも知れないけど、難しい。

「もう一枚は?」

「音の神のメダル。任意の場所に、任意の音を出せる。かなり楽しいし、戦闘にももちろん使える。このメダルはキープしておきたいかな」

「なるほど。そしたら、私と輝人の手持ちのを交換して、クロっちには俊足のを渡そうか。何かあった時に自力で逃げきれるかも知れないし」

「建築の方が安全じゃない?」

「そっちは、私の神様の加護と相乗効果みたいの見込めるかも知れないから。先に、危ないかも知れないメダルを持ってても負の影響無いか確認しておこうか」

「ぼくも自分の神様に訊いてみるよ」


 二人の神様共に、加護を有効化しなければ影響は受けないという回答だった。ならばと、力の神のメダルを輝人に渡し、建築と裏切りの神のメダルを受け取った。

 裏切りの神の加護はすぐに無効化しようと思ったけど、不信のスキルには有効な使い手がある事に気付いてしまった。絵画の神の加護を強化するのに使うのは少しだけ後でいい。

 私は俊足の神のメダルを実体化して、クロっちに言った。


「クロっちにはこのメダルをあげるけど、これからする質問には正直に答えてね。嘘ついたら、あげないから」

「・・・わかった」

「クロっちに加護を与えてる神様とその加護について教えて。メダル2枚に増えた事で加護レベルを上げた時にユニークスキルが増えるのなら、その内容についても訊いてね」


 仮面をつけてるので表情は読めなかったけど、逡巡してるような間があった。嘘はつけないとしても、すべてを話すべきかどうか、とか。


「あと十秒以内に答えてね。10、9、8」

 輝人はクロっちの首筋に剣を添えてくれた。

「嫉妬の女神ジザーム。最初の加護のスキルは、・・特定の相手の居場所を知る事ができるの。これ使って、抽選会場でアヤっちの位置を知って、あそこで待つのは賭けでもあったけど、アヤっちならみんなが使ってる出口は使わないと思ってたから」

「嫉妬ねぇ。加護のレベルが上がるとどうなるの?」

「そのレベルになってみないと教えられないって。それは他の神様でも同じみたいだよ」


――ディルジア


<本当だ。加護レベルがいくつになれば次のユニークスキルが与えられるかも教えられない。そのレベルになってスキルを得るまではな>


 輝人の方を見ると彼もうなずいていたので、答えは同じだったのだろう。


「じゃあ、このメダルをあげるわ。それで逆らったり逃げだそうとしたり嘘をついたりあらゆる反抗と思われる行為をしたら、殺すからね」

「・・・わかった。ちょうだい」


 俊足の神のメダルをクロっちに渡すと、彼女の中に消え失せた。と同時に、彼女から感じるメダルの反応が強くなった。たぶんだけど、より多くのメダルを持つ人の反応の方が、強く、そしてより遠くから感じ取りやすくもなるのだろう。


「それで、加護レベルを上げてみたらどうなったの?」

「・・・俊足も、戦う手段が無い私には役に立つかと思うんだけど」

「クロっち?」

「妬み。特定の対象を選んで、その力の一部を行使できるようになるんだって」

「一部っていうのは?」

「特に妬みに思う相手の部分、力とか、スキルとかを、模倣できるような力らしい」

「輝人のなら剣技、私のなら魔物を出せる力とか?」

「そうみたい。使ってみないと、どの程度とかもわからないけど」

「七瀬さん、やっぱり殺しておかない?危険だよ。メダルなら、今の君ならいくらでも狩り放題だろう。ぼくとかが協力すればなおさらだ」


 それは少し考えていた。メジェド・グリフォンに適うような力を持っている相手がいたとしても、ごく少数だろう。高速で接近し、上空とか相手の攻撃範囲外から勝負をつけてしまえる。


「例えばね、仮にその戦略がうまくいって、ほぼ残り一枚のメダルまで集められたとして、最後のメダルの持ち主は、たぶん秦野校長になる。側にあの相手、マグナスがいる限り、勝てない」

「でも、その時には、七瀬さんの加護レベルは、有用な他のいくつものを上げてたとしても、数十から数百に上がっている筈。勝ち目は出てきてる筈だよ」

「そうやって上がりきった相手が、さらに数百年修行してたらどうなるのか。それがマグナスなんだと思う」

「まあ、秦野校長とその男をどうにかする話は後回しにしよう。黒田さんは言ってなかったけど、嫉妬する気持ちが強まれば強まるほど、妬みでの再現度はたぶん上がる。そうなればレベル差とかがあったとしても、不意を突かれればもしかするとという機会は生まれ得ると思う。だから、殺しておくべきだよ」

「もし二人が気にするなら、嫉妬の神の加護レベルは上げないで、俊足の神の加護を有効化するよ」

「それは確認のしようがないし、いずれメダルの数が増えていけばまた同じ問題は出てくるし」

「この従属の仮面で強制かければいいじゃん」

「まあね。だけど、普通のアイテムの強制力を、いずれ神様の加護の力が上回るとか、普通にあり得ると思ってるから」

「だから殺しておこうよ」

「テルっちは、どうしても私を殺しておきたいんだね」

「うん。ずっとそう言ってる。黒田さんが一度も七瀬さんを魅了しようとしてなかったら、違ってただろうけどね」

「テルっちが私の立場だったらそうしてなかったって言えるの?」

「俺が君だったなら、せめて、会った冒頭でいきなり魅了しようとしなかったろうね。いきなり襲いかかられたりしてなければ」

「くっ・・・」

「はいはい。じゃあ次の重要な質問ね。クロっち、今まで何人に助けを求めた?」

「この仮面付けられて制限かけられるまでだから、十人くらいかな」

「じゃあ、それはそうだとして、実際に、今助けに来てくれてるのは、誰と誰で、何人?」


 クロっちは、言い淀んだ。理由はわかる。それこそがクロっちにとっての生命線で、助かる最後の望みだから。


「言わないと、ダメ・・・?」

「少なくとも、メダルはあげられなくなるし、誰かの邪魔が入る前に処理はしておこうと思うかもね」

「二組、七人か、八人くらい、かな」

「はいダウト」

「う、嘘じゃないよ!助けを求め始めた後でこの仮面被せられて、助けを求めるのも禁止されたから、助けを求めた相手が何人くらいで来てるのかわからないんだって!」

「じゃあ、わかってる分は、正確に申告してね。嘘だと分かったら、手足か首が飛ぶと覚悟して、そのつもりで」

「こっちに向かってるって確実に分かるのは、一組。最悪でも、その中の一人。オタ五人衆のリーダー。一人だけでも来る予定が、仲間がついてきてくれてるって」

「レベルで2位と3位を独占してる5人?どういう接点があったの?」

「昔、コクられた事があったから・・・」

「使い倒そうとしたと」

「悪い?」

「最終的に自分以外全員殺そうとしてるんだからね。開き直るしかない部分はあるにせよ、五人全員どうにかするつもりだったの?あなたのスキルが魅了チャームだってばれてるんでしょう?」


 中央大陸掲示板は、私も目を通していた。そこで今一番熱いトピックは、レベル競争で独走する私をどうにかして叩けないかというもので、黒田さんが私に囚われてるかもという話も出てた。出所は当人と、そのオタ五人衆のリーダーか仲間だろう。で、輝人はフォローを入れてくれてた。

 彼らは北の隣国にあるダンジョンでレベル上げをしてた筈だけど、中断してクロっちを助けに向かってきてる訳か。


「いつこちらに向かって出発したの?今どこら辺にいて、いつ頃着く予定なの?」

「出発したのは、たぶん、昨日。七日目。まだ隣の国を移動中で、こっちに着くまでにまだ何日かかかりそうって言ってきてて、はっきりと何日後に着くかは分からないみたい」

「リグルドさん、北の隣国、ウィゼフの初心者向けダンジョンがある辺りから、この国に来るまでどれくらいかかるか分かりますか?」

「いくつか候補があるが、そいつらのレベルがどれくらいか分かるか?」

「11が一人と10が四人ですね」

「だとしたら初心者に毛が生えたようなもんだろ。神々から与えられたユニークスキルってもんが化け物級のなら、五人揃って15は越えてておかしくないし、だとすると金銭的な余裕とかも大して無い筈だ。

 一般的な乗り合い馬車を乗り継いで来てるなら、国境まで五日から七日。国境からも最短で三日から四日以上はかかる筈だ」

「とすると、一週間から十日くらいって感じですね」

「連中の移動経路がおおよそ読めるからといって、乗り合い馬車を襲うのはお勧めしない」

「そんな事しませんよ。よっぽど追いつめられない限りは。やるにしても、狙った相手以外には被害が出ないように配慮はしますよ」

「そう願うよ。で、俺もテルトの意見に賛成だがな。この女が死ねば、そいつらがここに来る理由も消えるんだろ?裏切られて背中刺される危険性を生むくらいなら、始末しておいた方がいい」

「殺しても向かってくる可能性はあるし、囮として生かしておく価値はあります」

「敵を呼び込んだって時点で殺されてて当たり前だし、もし生かしておくにしても、メダルを与えるのにも反対だよ」

「そうだねぇ。で、二組で七、八人て言ってたよね。あと一組の二、三人はどういう人達なの?やっぱりコクられてふった相手達?」

「・・・・・話すのなら、せめて、命を助けてくれると約束してもらえないかな?じゃないと話す意味が」

「交渉できる立場にいると、まだ思ってたの?手足切り落とすと出血して面倒だから関節砕いておいた方がいいかな。それなら治癒魔法とかポーションとかでも治りにくいらしいし」

「二人は、ふった相手。片方は返事無かったし、もう片方はそれらしい事言ってくれたけど、助けたならそいつの性奴隷になれ断るなら助けないって言ってたから普通に願い下げだし、だから、オタ五人衆以外は、来そうなのは、一人か二人くらいだと思うよ」


 まぁ、なにげない(誰にでも)挨拶する子が、自分に気があるかもとか、話しかけてきてくれてるんだから、自分に気があるのだろうと勘違いする男子がいても、特に責めはすまい。だけど、自分を使い捨てにして、最後には殺してくる相手を助けようと危険を冒すような相手なら、それが私にも早晩襲いかかってくる事が判明してる敵ならなおさら、なにを斟酌したりためらう必要も無かった。


 今日捕まえた二人も、本当ならもっと慎重に動いて、可能なら他の連中と連携していた可能性もあった。ただ、突発イベントに紛れ込んで、もしかしたら途中までは私を味方に出来る可能性もあって、最悪でも私を襲って倒せる可能性もあるって考えたんだろうな。掲示板とかだと、私の側に護衛と呼べる人が一定数以上いるって書かれていないし、せいぜい知れ渡ってるとしても、クロっちが助けを求めた相手くらいだろう。


 私は、クロっちが助けを求めたオタ五人衆以外の相手の名前や、どっちの方角から向かってきてるのかとか、他に分かってる情報があれば残らず自白するように強要し、服従の仮面による拷問めいた事までしながら白状させた。


「リグルドさん。現在レベル16な私に最適な近場のダンジョンを紹介してもらえませんか?できればグリフォンやメジェド・グリフォンを使えるような屋外型が望ましいですが、贅沢は言いません。ダンジョンじゃなくても、狩る魔物が尽きないような危険地帯でもいいですよ

 あ、普通の物理攻撃が効かないアンデッド系モンスターが出てきたり、特殊な攻撃やスキル使ってくる魔物が多い所とかもすてきですね!」

「そこで自分の攻撃手段を増やしつつ、敵をはめ殺しにしようってか?」

「ええ。残りは500人くらいしかいないんです。なら、なるべくレベルを上げつつメダルも出来るだけ集めておくしかないかなって」

「やれやれ。さっき殺した連中の死体が消えていった辺りからすると、おまえ等本当に厄介な素性なのな」

「厄介なのは、私たちを巻き込んだ神様達ですよ」

「そういう事にしといてやるよ。で、こいつらもそこに連れていくんだな?囮にするって言ってるくらいだし」

「なるべく経験値は分け与えたく無いんですけどね」

「それ用のアイテムもあるから心配しなくていい。従者とか荷物持ちとかに付けさせる為のがあるから。お前からすれば高くもない買い物だ」


 迎撃の為に、経験値やお金を稼げない状態をずっと続けさせられるのは、はっきりとした悪手だ。その間、相手は攻めに来るふりを続けたりしながら様子をうかがいつつ、現在の差を埋めて逆転するべく動けるし、そうやってこちらの焦りを誘って隙を見せたら本当に襲いかかる事も出来る。

 今日の二人みたく、クロっちが頼んでなくても私を狩りに来る相手は、これから私が強くなる度に増えていくだろう。その中には、容易には勝てない相手も含まれてくるだろうし。

 スケッチブックのページも、何だかんだで半分以上埋まってきた。不要になったのは消したり、複製したページに移すなりしないといけない。


 だから私はいくつかの具体的な目標を心の中で立てた。

・物理攻撃が効かない魔物の入手:ゴースト系とかスライム系かな

・魔法やスキルを封じるスキルを持っている魔物の入手:これは別に敵スキル無効化のスキルを持っている必要は無い。麻痺とか石化だって、ほとんど必殺の力になり得るのだから。麻痺や毒持ち、石化はコカトリスとかバジリスクとかかな。

・属性を持つ魔物の入手。地/水/火/風/光/闇/時空のをそれぞれ一体ずつは欲しい。精霊とかがいるならベストかも。氷とか雷のとか強そうだし、いずれ七大神の加護を受けた相手との戦いを想定するなら、対抗属性の魔物なりアイテムなりは必須になるだろう。幸いグリフォン達を入手しているので空の上の戦いには対応できるし、いざという時の逃げ足としても使える。

 精霊か~。ファンタジー物だと、世界樹みたいなのがあれば、たむろしてたりするのだろうか?王家にグリフォンの卵を融通する見返りとして、そういった情報なり有効なアイテムをもらうのもありかも知れない。

 

 私はギルマスやリグルドさん達と相談して、一度に全部の希望は叶えられなくても、少しずつでも叶えられる行き先とか頼り先とかを、それからの数日で紹介してもらったり、近場ならメジェ助に乗ってかっ飛んで行き、急襲してゲットしたりした。


 その中でも一番おもしろい拾い物だった魔物は、眠り茸スリープ・マッシュルーム。歩くでっかいキノコというと、危険性がまるでないイメージすらあるが、襲われると強烈な眠気を誘うガスを放出する。魔法ではないところが重要だ。しかも襲われないでじっとしてれば大きなキノコにしか見えない。植物系魔物だから、地面に接してればいつまでも保つ超省エネ仕様。


 あと超優秀だったのが、ドッペル・スライム。自分の体積までだけど、人間とか他の魔物の姿に変化出来る優れ物。その状態を維持も出来るし、防具とかアイテムも装備可能。ただし、私や輝人とかの姿を真似たとしても戦闘力とかスキルとかの類は全く再現されないので注意が必要だけど。

 ドッペル・スライムは、リグルドさんに紹介してもらった近場の初心者用ダンジョンの一つのスライムしかいないダンジョンのレアポップだった。物理攻撃が効かず、魔石はゴブリン以下、ドロップ品も皆無といった、ほとんど何も得るものが無い超不人気ダンジョンで、私はスケッチしつつ乱獲した。

 どうやって?もちろん、スライムでスライムを吸収しながら。スケッチしたスライムに複製したスライムをいくつかつければたいていのスライムの体積を上回っていたから、後は本当に雪だるま方式だった。スライムは大きくなったものでスケッチしなおしておいた。大きいので出した後でも分裂してサイズ調整もお手の物だった。ポイズン・スライムや、パラライズ・スライムといった拾い物があった事も書き加えておく。外見は半透明の色合いが若干違う程度でしかない。ドッペルは虹色、ポイズンは紫、パラライズは黄色だった。ちなみに、やたら足が早くて固くて倒すと経験値をたくさんくれるような鉄色のスライムはいなかった。


 あと、火の精霊がいるかもって場所も紹介してもらった。中央大陸中央に聳えるラズロフ大火山。富士山の二倍くらいの高さがある。サラマンダーとかも普通に闊歩してて、レッドドラゴンとかが飛び交ってても珍しくないらしい。ここへの旅はちゃんと準備して行きましたよ。

 二泊三日くらいの弾丸スケッチ旅行みたいな感じで。温泉みつけてつかってきたりした。久しぶりにまともなお風呂入れた感じ。また時々は入りに行こうと思う。


 そんな風に過密なスケジュールをこなしながら、私達は襲撃者達を迎撃する準備を過剰なくらいに整えていったのだった。

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