第35話

リリスお姉ちゃんが借りてきてくれた本は3冊。『神話の世界』ハードカバーで厚く学術的な本かも知れない。『神々の神話』少し砕けた感じて厚さもあまり無い。『世界の始まり』絵本だった。

まずは分かりやすい絵本『世界の始まり』を読んだ。


主神様と神々が世界を造った。青々とした大地を造り、海を造り、空を造った。

世界は自然に満ちた楽園だった。楽園を見て主神様は満足していたが神々は自分達を崇めてくれる物を望んで様々な人々を造った。

昆虫を動物を人間を獣人をエルフをドワーフを魚人を鳥人を天人を造った。彼らは自然の中で神々を崇めて生きた。

ある神が自分をより崇めて貰うために魔人を造り他の生き物に乱暴を働き始めた。

神々は相談してその神を魔神と呼び、魔人を放逐した。そして、放逐した魔人が舞い戻って来て、他の生き物に乱暴を働かないように人間に特別な力を与えて世界を守らせた。

魔神は動物を歪めて魔物を生み出し、魔人が魔物を従えて戻って来たが、人間が大きな戦いの末に世界を守った。


うんうん、昔読んだ絵本の内容そのものだな。描かれている自然や神様、人間達かとてもコミカルに描かれている。それに行間に他の文字とか見えないし、問題ない。

じゃあ次は『神々の神話』かな。これなら神様の名前とか出てくるからあたしの記憶と違えば直ぐにわかるだろう。


主神様ミュイーズ 世界を造った神様。技能(スキル)を与える存在。

知恵の神セテス 知恵を司る神様。人の神。

力の神ヘライトス 力を司る神様。獣人の神。

技の神アパ 技術を司る神様。ドワーフの神。

美の神アロフェン 美醜を決める神様。エルフの神。

海の神シェルナ 海を司る神様。魚人の神。

空の神ウェフ 空を司る神様。鳥人の神。

天の神オゾン 空の上を司る神様。天人の神。

地の神エンド 植物を司る神様。昆虫の神。

死の神デズ 人の魂を司る神様。


この本ではリリスお姉ちゃんが言ってた通りに主神様はミュイーズ様だった。神様の説明ページの反対側に大きく神様の姿が描かれて、ディンプルなんて名前は出てきていない。行間にも何も書かれていなかった。

ならあの本に書かれて事はどういう事なのだろう。そう言えばあたしが読んでもディンプルという言葉が通じなかった。他の人にはディンプルという言葉が禁止されているようだった。


リリスお姉ちゃんも本を読んで普通の本だと言う。絵本も昔読んだ覚えがあるそうだし、それぞれの神様のお話も知っていた。主神様の名前だけが何故かすり替わっている。


お母様の持っていた『森の生態系』だけが違うのだろうか。いや、後一冊ある。あたしは最後の本『神話の世界』を手に開いて見た。


序文

神話には事実が隠されている。これは荒唐無稽な神話全てがただの妄想では無いと言う事である。神という概念はただ、人間が生み出したものでは無く、実際の存在としてあり、人間の前に顕現して見せる。

けれども神を崇拝する人間には願望や驕りがあり、神の事実を歪め、他の人間に伝える。これが口伝で伝えられる事によって神話が生まれる。

神の神話を利用するために時の権力者が羊皮紙や木簡に記録に残し、神の権威を生み出した。それが時の権力者の権力の基盤となった。

現在に残る神話体系は神々の性格を写した神の素描でありながら、時の権力者の欲望の現れでもあるのだ。

これから、各々の神について詳述することによって証明したい。


ここまでは特に変な所は無かった。文章が固くて難しい言い回しをしている。真面目な学術書なんだろうか。兎に角、主神様の所を読んで見る。


主神の名前は二転三転されている。まるでその名を呼んではいけないかのようだ。古い文献に拠れば“ディン“とか“ンプル“と言う一言が散見される。名前として統一されていなかったか、言語化するのが難しい発音であった可能性もあり、人による認識が出来ないと言う不可解な現象もあったようだ。


あった、あった。主神ディンプルの名前が全文だけでないが、呼ばれていたようだ。しかも“人による認識が出来ない“と言うのはリリスお姉ちゃんに分らないのと同じことではなかろうか。


時代が下るにつれ主神の名前は“ミュー“または“ミューズ“と呼ばれ始め、誰かの操作により“ミュイーズ“に統一される。音節と表音文字との齟齬が見られる時代の事だ。明らかな作為を感じるのは著者だけだろうか。


やっぱりおかしいようだと思う。この作者が全面的に正しいとは限らないけど、リリスお姉ちゃんもちゃんと文章も読めているからあたしだけに見えている文章じゃない。


意図的に改変を行っているのはこの文明に、人間に、広範な力を及ぼす事の出来る存在である神以外に存在しない。自身の名前を呼ばれるのを拒絶する理由が存在し、認識を妨害するのは真実に辿り付かれる事を嫌っているからだと主張する神学を異端の神学と呼ぶ。


昔から読める人と読めない人がいたらしい。でも読める人とからしたら何故読めないのかと考えて神様の力が働いていると考えるのは異端らしい。教会では主神ミュイーズ様を祀って居るから違うなんて言ったら異端とされるのだろうか。エライザ学園ではまだ神学については学んていないので分からないが、バージル先生に聞いてみるのもありだろう。

この文章も問題なくリリスお姉ちゃんも読めるのかと見ると、リリスお姉ちゃんがこっくりこっくりしていた。

だよね~、もう遅いので本に栞を挟んで片付けて、リリスお姉ちゃんに声を掛けて寝ることにした。一度に片付く話でも無いしね。


今日もいつも通りリリスお姉ちゃんと朝食を取り、エライザ学園に向かい、分かれる。教室でクロエに声を掛けるとあたしを待って居てけれたようで元気に挨拶をされた。

「ミッチェルの家の歴史本を読めたのは凄かったやん。」

「そう?大した事無いと思うけど」

「いやいや、なかなかああいう事を見破れるなんてミリは頭が良いと思うねん」

「ありがとう」

見るとミッチェルさんもこちらをチラチラ見ていた。気にしなくて良いのにと思う反面、自分の考え方がしっかりしてきた事は感じていた。思わず右手で左腕の“継承の腕輪“を触った。これを身に付けるようになってから変わったと感じるのだ。


バージル先生がやって来て授業が始まる。魔力纒の次は身体強化の実技だ。まずは座学のようで移動をするとは言われない。

「理解して欲しいのだが『魔力纒』は基本だ。この状態で魔法を発動すると普通の魔法より高い効果があるのは体験して貰った通りだ。だが、『魔力纒』は魔力を凄く消費する。だから如何に薄く効果的に『魔力纒』を行うか、『魔力纒』をしないで魔法を発動するかの選択が必要になる。簡単には行かないが部分的な『魔力纒』を行う方法もある。だが、これもかなりの上級者に成らないと難しい。そして、これから体験して貰う『身体強化』は更に上級の技能だ。基本的には『魔力纒』の状態で外に出る魔力を肉体の内に押し込み、肉体を魔力で動かすという感覚だ。『身体強化』は個々に依って違う場合が多く、今言った方法は一般的な初歩的な説明だと心得て欲しい。」

一気に説明したバージル先生は黒板に書かれた図説を強調した。


「基本を抑えたなら、個々の戦い方に合わせて使うということになる。無論戦う事だけに使える訳ではなく、防御にも応用は効く。女性ならば護衛術に組み合わせるのもありという事だ。」

バージル先生は全体を見廻してからクロエに視線を止めた。

「クロエ嬢、君の『魔力纒』が一番分かり易いので、こちらでやってみて貰えるか」

自信満々なクロエが大きく返事をする。

「ええで、任してぇな」


教壇の横に立ってバージル先生の指示どおりにやって見せる。

「まず、『魔力纒』」

クロエの体が魔力の光で淡く光る。

「クロエ嬢は属性『炎』だったな。魔力付与をやってみろ」

クロエの右手に炎の塊が現れ、大きさが絞られたかと思うと解けるように炎の帯となって体を走り回る。クロエは笑顔だ。それをバージル先生は苦笑しながら見て続ける。

「クロエ嬢の『魔法付与(エンチャット)』はちょっと高度過ぎて参考にならんかも知れんが、ある意味の完成形だ。そして、次は『魔力纒』を押し込める『身体強化』だ。どうだ、やってみろ」

クロエは魔法を解き、魔力纒を絞り始めた。魔力の淡い光が無くなり始めたが一部を絞ると他で魔力が逃げる。あれほど魔力の操作に長けていたクロエが苦労していた。

「と、このように『魔力纒』を絞るのは難しいのだ。」

バージル先生がクロエにありがとうを言って戻らせる。クロエは照れながらあたしの隣に座った。


「少し早いがこれで午前の授業を終える。午後からは歴史の勉強になるから寝るなよ」


お昼は何故かミッチェルさんのお誘いでクロエと一緒に食事をすることになった。当然アビーさんもいるから少し広めのテーブルを確保するために食堂の外のテラスで食べた。その時ミッチェルさんが何故自分の家の歴史本を持ち出して読んでいたのか教えてくださった。

「アンドネス公爵家は先々代、詰まりお祖父様が今の王家から分家した事から始まっておりますわ。当時の王様ラムエル•エライザの兄サイサス•エライザですわね。お祖父様であるサイサス様は病弱で王として国を支える力が無かった為に弟君であるラムエル様に王位を譲りましたの。」


ミッチェルさんが縦ロールの金髪を揺らす。

「病弱であったけど頭の良かったお祖父様サイサス様は王になられたラムエル様の力となるために国内外問わず近隣からも本を集めたのですわ。“書を以て国礎と成す“がお祖父様の口癖で凄い読書家でしたの。その知識でラムエル王を支えたと聞いていますのよ。」


少し憂いを帯びた碧眼を伏せてミッチェルさんが言う。

「少しでもお祖父様のような方に成りたくて本を読んでいたのですけどお祖父様の残された日記のあの部分で読めなくて止まっていたのですわ。それで他の方の知恵を借りたくて学園まで持ち込んだのですけど、ミリちゃんのお陰で助かったのですわ」


ミッチェルさんのそんなにキラキラした目で見詰められたら恥ずかしいです。

「ほんとに助かったのよ」

「いえ、あたしなんか大したこと・・・」


あたしとミッチェルさんが見つめ合っているのをアビーさんが咳払いで止める。

「そんで、何て書いてあったん?ミッチェル様。」


クロエが話を戻すとミッチェルさんがメモを取り出して読んだ。

「『あれは、魔力の根源にして脅威。敵対は愚策なり。黒き穴に気をつけよ。決して全種族にて掘り返すな。全てをエンドに導く罠と知れ』と書かれていたのですわ。他の所は普通の日記だったのですけれどね」

「意味がわんないんよ」

「『エンド』とは地の神『エンド』でしょうか」


アビーさんも疑問を示す。

「“穴“と言えばミズーリ子爵領にある穴(ダンジョン)を思い浮かべますね」


あたしも思いつきを言ってみるがどうだろう。穴(ダンジョン)が魔力を吹き出しているという話もあるのだ。それも言ってみる。

「そうですわね。ミズーリ子爵領に穴(ダンジョン)が多いと聞きますが、他の場所にも幾つか点在しているようですわ。お祖父様の時代くらいまでは穴(ダンジョン)にハンターが潜って魔物を狩って居た事もあったらしいですが、何か厄災が起きて今は禁止されている所がほとんどの筈ですわ。ミリちゃんのところもそうすわね」

「ええ、ミッチェルさん。うちの領でも今は許可を出して居ませんが無断で潜って帰ってこれなくなっているという話もあります。」

「何を警告しているのかは不明ですけどこれだけでは判りませんわ」


結局よくわからないねえと言う事で昼食を終えてあたし達は教室に戻った。


あたし達が教室に戻って来ると直ぐにバージル先生がやって来た。あたし達はそれぞれ着席して授業を受ける。

「あーエライザ王国の歴史の概要は既に説明しているので今日は歴史上の偉人について話して行くぞ。」


エライザ王国はおおよそ1000年前に建国している。建国前はエンド王国、パルファム王国、パンドーラ連合だった。山間部にはまだ人が少なく幾つかの部族があるだけだった。

エンド王国の英雄王エライザが山間部を統合し、パルファム王国とパンドーラ連合を降して、エライザ王国となったのだ。だから最初の偉人として英雄王エライザの話を聞く事になった。


英雄王エライザのスキルは『友愛』で魔法属性『風』だった。エンド王国の王太子として生れ、王国を支えなければ成らない身であったがその性格は優柔不断、戦いに不向きと周りに評価されていた。しかし、文武両道に優れていたので国を守り発展させる事には問題ないとは思われていた。

しかし、飢饉がエンド王国のみならずパルファム王国、パンドーラ連合にも襲い、食糧を得るための戦いを選択せざるを得ない状況となってエライザのその性格が災いする。パンドーラ連合の軍隊に対応出来ず、助力を求めたパルファム王国に付け入れられる事になったのだ。エンド王国の存亡の危機が訪れたのだ。

だが、天はエライザに味方した。後の無二の親友エージとの出会いである。


エージの出身及びそのスキルは不明であるが、先見の明に優れ、状況判断の正確さはエライザを大いに助けた。エライザの望む状況をエージが作り出す事で幾多の危機を乗り越えたのだ。パンドーラ連合の副将レジンを懐柔し、不戦へ導いたのはエライザのスキル『友愛』故とも言われている。パンドーラ連合の強硬派ステルの魔物群を壊滅に追い込んだのはエージの謎のスキルだったとも言われている。これによりパンドーラ連合はエンド王国を追い詰めていたにも関わらす逆転されたと言われている。

反面、エンド王国やパンドーラ連合よりも飢饉の度合いが低かったパルファム王国はエンド王国と戦うことを止めて、協調路線に走ったのだ。

是によりエンド王国はパンドーラ連合とパルファム王国の自治を認め、統合してエライザ王国と名を変えて始まったとされる。


なかなかに興味深いエライザ王国建国記だなあとミリは思う。特に出自不明のエージとは誰だろう。

すると、授業中にも関わらず眼の前にアン様の幻影が現れて説明が始まった。

「エージ様はスキル『影』の持ち主じゃぞ。儂の前世じゃ。」

「は?」


あたしが不覚にも声を出したから隣のクロエが反応した。

「どうしたの、ミリ」

「あ、いや何でもない」


いきなりアン様が答えたので声に出さないように心の内で質問する。教室ではバージル先生がエライザ英雄王の業績を説明していた。

「エージ様ってスキル『影』の持ち主ならあたしの前前世ってこと?」

「そうなるの」

「うひゃーびっくり。一体エージ様って何者だったの?」

「エージ•カゲノという転移者じゃ」

「えっ、ちょぅと待って!初代『シド』様も転生者だったよね?」

「『転生者』と『転移者』は違うのじゃ。初代『シド』様は異世界よりこの世界の平民に生まれた『転生者』で3代目『エージ』様は『転移者』なのじゃ」

「う〜、分かんない」


思わず出てしまったあたしの声にクロエが答えた。

「えっ、“灌漑“ってわからない?」

「えっ、そうじゃ無くってぇ〜」

「じゃあ、何が分かんないのよぉ?」

「あはははは、気にしないでぇ〜」


あたしはクロエの言葉を誤魔化す。

「“灌漑“ってえのは水路を作って田畑に水を引いて緑豊かにすることなんよ。主にパルファムで発達したんよ。」

「あはははは、そうなんだ」


あたしは適当に誤魔化す。

「英雄王エライザは凄い知識を持っていた事になっているがほとんどはエージ様の知識じゃぞ」


もう、アン様は黙って居て欲しい。授業中だと混乱するわ!


「・・・ということでしっかり覚えろよ。テストに出すぞ。今日はこれまでだな。明日からまた、2日休みだ。羽目を外しすぎないで『魔力纒』の練習をしておけ。来週は練度を確認するからな。」

というバージル先生の言葉で授業が終わった。


何だがアン様の幻影のお陰で授業が混乱したけどエライザ王国建国にもスキル『影』の持ち主が関わっていた事が知れた。誰にも言えないけど。こんな歴史の闇のような話は誰も信じないだろう。


今日もクロエと一緒にエライザ学園の寮に帰り、自室に戻った。リリスお姉ちゃんはまだ帰って無かった。夕ご飯まではまだ時間があるし、王都周りでの森の様子もあまり確認出来て居なかったのでちょっと調査に出掛けよう。


王都を北上して暫く行くと海に出るけどあたしのスキル『影』に取って水はあまり相性が良くないので海の魔物を狩るには適して居ない。だから南側が更に西に行かないと森がない。

取り敢えず革鎧に着替えて南の森へ『影の世界』を通ってやって来た。現実世界の森は南下して深く入らなければあまり動物も居ないようだ。


最初に出会ったのは普通のうさぎだったので無視した。もっと深い森へ行きたくて南下して見たが山が迫って登り坂になったものの、木立は多くなく見つけたのは森ねずみ2匹のみ。直ぐに『影操作』で捕まえて影の世界へ連れて行く。

山を抜けて更に奥地に行けば山が高くなるだけで森が深くなるわけでも無かった。遠くから魔物の鳴き声などしていたので今度時間があれば行く事にして引き換えして、取り敢えず寮まで帰った。


部屋に戻るとリリスお姉ちゃんは帰って居て来たらしく、部屋には居なかった。そそくさとクリーン魔法で埃を払った後に着替えを済ませると食堂に向かう。幾人か廊下で先輩や見知った人達とすれ違ったがもうオドオドしないで要られる。


食堂ではリリスお姉ちゃんは他の上級生と歓談しながら食事をしていたので声を掛けずに一人で食事をすることにした。何気に一人で食事をするのは久しぶりな気がする。寮ではいつもリリスお姉ちゃんが一緒にいてくれたからだ。


もそもそ食べていると誰かに肩を叩かれた。クロエかなと後ろを振り返るとそこにはエリザが居た。一人だ。いつも取り巻きが居るので何だが拍子抜けしてしまう。

「ミリ、あなたひとりで寂しそうね。ふん、お母様のご様態は如何しら」


エリザにまともに言われたので思わず答えを返しそびれていると

「何よ!返事も出来ないのかしら。」

「いいえ、気にかけて下さってありがとう。順調に回復されているわ。ポーションさえ手に入れられればもっと早くなるけど、お医者様から頼らないでゆっくり療養するように言われてるの」

「ふん、そう」


言うだけ言ったらさっさと食堂を出て行ってしまった。何だが取り巻きがいないだけでなくエリザの迫力も減ったように感じたのは気の所為だろうか。


もそもそ食べているとリリスお姉ちゃんがちらりとこちらを見ながら軽く手を振りながら食堂を出て行った。早く食べ終えて自室に戻ろう。何とか食べ終えて自室に戻るとリリスお姉ちゃんがゆっくりと読んで居た本から顔を上げた。

読んでいた本は昨日読みかけで終えていた『神話の世界』だった。

「あら、ミリちゃんお帰り。この本読んで見たけど難しいだけで、おかしな所は無かったわよ」


リリスお姉ちゃんから渡された本はを受け取り返事をする。

「そうだったんだ。あたしも読んで見るね」


リリスお姉ちゃんから指摘された部分を読んでもあれ以上に主神ディンプルの名前に言及した所は無かった。主神はミュイーズでスキルを与えて下さる理由とかは魔物や魔人と戦うためと書かれていて、変な文章も見えなかった。


どうもお母様の『森の生態系』だけなようだ。何故あたしだけに読めるのか、見えるのか分らない。

リリスお姉ちゃんと一緒にお風呂に入り、昨日の事を話したり、エリザが元気なかった事を話したりして寝ることにした。考えても仕方ない、明日にでもアン様に聞いてみる事にしよう。


























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