第34話

『魔法付与(エンチャット)』にはかなりの可能性があり、工夫次第では有効な力となる。

魔力を纏う事を『魔力纏(まりょくてん)』と言うが、全身に纏えばある程度の魔法の攻撃も防ぐ事が出来る。他の人の魔法が魔力によって霧散するのは人によって魔力の質が違う事により起こる現象と言われている。魔法によって放たれた魔力よりも高い魔力を纏っていれば防ぐ事ができるのだ。

逆に質を同じにすることで相手の力を増幅することも出来る。自然治癒力を増幅すれば怪我などを治す事が出来るようになる。かなり高度な技能だが有名な治癒術師(ヒーラー)はこの力の熟練者と言って良い。

また魔力を纏うことで肉体的な向上の効果もある。『身体強化』と言われる特殊な技能の事だ。ただ、この技能はとても難しい。戦いながら『身体強化』するのは踊りながら食事をするようなもので全く違った事に意識を割きながら行動しなければならない。戦闘についての熟練者でもこなせる者は少ない筈だ。


バージル先生はスキル『特殊強化』があるのでスキルを発動することで『身体強化』を簡単に出来ると説明して皆の前でやって見せてくれた。軽く飛んだのに天井にぶつかる程に高く飛び上がったのだ。


魔法には属性があるのでその属性の親和性の高い技能が出来る可能性が高い。攻撃では『火』属性の魔法がいちばん高く『水』では効果が低い。治癒では『水』属性の魔法がいちばん高く『土』では効果が低い。と言うのが親和性の現れである。


ここで授業は鐘がなって終わった。お昼である。

午後からは実践をするぞと言ってバージル先生は帰って行った。めいめいが席を立ち食堂へ向かう。ミリはクロエと一緒に行った。

「ねぇねぇミリは休みの間は何をやっていたの?」


クロエは答えづらい質問をしてきた。

「お母様が火事で怪我を負う前はミズーリ子爵領のあちこちに行ったわ。森を抜けた先には川が流れているのだけどとても気持ちのいい場所よ。」


魔物を狩っていたなんて言えないからそこだけ誤魔化す。

「クロエはどうなの?」

「わっちは船で近くの無人島に遊びに行ったり、港町を散策したりしてたんよ」


パルファムの港町ならお父様とお母様と行った場所だろう。

「へー、港町ってどんなのかなぁ。見てみたいなぁ」

「色んな物を売ってんよ。『干物』とか『イカ干し』とか『シオカラ』とかね。ミリが見たらびっくりすると思うんよ。」

「あっ、でもあたしも『干物』を食べた事あるわ」

「そうなん?まぁ『干物』はパルファムから他の領へも出してるから、ミズーリ領でも手に入る事もあんのか」


ふふふとミリは笑って言う。

「『干物』は身をほぐすのが出来なくてお父様にお願いしたの」

「そうなん?まぁ『箸』を使えるもんはこっち王都ではみいへんなぁ」

「お父様は器用だから『箸』も上手に使えてたわ」


そんな話をしている内に食堂に着いた。食堂には沢山の人が居たけどそんなに怖く無かった。クロエと並んで普通のセットをトレイに乗せて受け取る。

セットの内容はちょっと細長いパンとウィンナーが入った白いスープに野菜ジュースだ。パンは好きなだけ取れるので2つ取ったら、クロエは3つも取っていた。寮もそうだが学園の食堂も無料なので食べられるだけ取るものだ。その代わり食べ切れないとか残すのは出来ない。しっかり食堂のおじさんに怒られる。


クロエと座る場所を探しているとテラス席の前の扉の近くのテーブルにリリスお姉ちゃんが他の女の子とお喋りしていた。あたしはクロエを連れてリリスお姉ちゃんに声を掛けた。

「アマリリス様、こちらご一緒しても宜しいでしょうか?」

余所行きの言葉遣いでリリスお姉ちゃんに声を掛けると嬉しそうにリリスお姉ちゃんが振り返った。

「あら、ミリ様。どうぞどうぞ。」


あたしとクロエが礼を言いながら相席するとリリスお姉ちゃんと話していた女性を紹介してくれた。

「ミリ様、こちらの方はアリスアラン•ロンドベール侯爵令嬢です。」

「アリスアラン様、こちらはわたくしの同室のミリ•ミズーリ子爵令嬢ですわ」


あたしが驚いて居るとアリスアラン様が言った。

「あら、畏まる必要は無いですわ。アリスと呼んでくださいね」


とっても優しい人のようだ。たとえは良くないがミッチェル•アンドネス公爵令嬢を丸く柔らかくしたような方だ。だからアリスアラン様にクロエを紹介する。リリスお姉ちゃんはクロエを知ってる。

「アリス様、こちらはクロエ•オードパルファム伯爵令嬢です。」

「クロエと呼んで欲しいねん」


クロエがいきなり砕けた口調で言った。するとアリス様は一瞬驚いたがころころと笑った。口に手を当ててとても上品だった。

「オードパルファム伯爵家の方はとても気さくで楽しい方が多いと聞いてましたの。知り合いに成れて嬉しいですわ」


嫌味とかでなく本気で言っているのが良く分かった。ロンドベール侯爵家はクルチャさんの寄親の筈だ。ナランチャさんのお父様が仕えている相手でもある。


少し挨拶を交わしながら食事を一緒にする。それにしてもロンドベール侯爵家なのだから取り巻きの方は居ないのだろうか。それとなくアリス様に聞くと

「あら、そんな下心ばかりの寄り子を連れていたら詰まらないですわ。こうやって知らない領の方達とお話して親交する方が楽しいですもの」


顔はまん丸で可愛らしいのに結構な毒舌だった。

「それにね、アマリリス様とお花の話をするのはとっても楽しいのよ」

「あら、アリス様。わたしが薔薇を苦労して育てる話がそんなに面白いですか?」

「そうよぉ、綺麗な薔薇には棘が歩くと言うけどその棘を育てるのは大変だと知れて興味深いわ」


かなりリリスお姉ちゃんはアリス様と気さくに話をしているのを見てあたしも嬉しくなった。

ふと、アリス様がクロエに話を振る。

「そう言えば、少し前にパルファムの沖に大きな海の魔物が出たと聞きましたがどうなさいました?」


クロエは何故か警戒したように答える。

「ああ、クラーケンの事でっしゃろ。わっちが頼まれたので討伐して食べてもうたわ」

「ええっ、クロエあなたがクラーケンという魔物を倒したの?」


驚いてミリはクロエに聞いて仕舞う。

「そうやで、陸のハンターと同じく海の掃海士のギルドにわっちは入ってるから」


確かにクロエのスキルは『覚醒』で魔法属性は『火』だからとんでも無く強いのは知っていたけど。

「もしかして今日の授業で習った『魔法付与(エンチャット)』を使えるの?」

「まあ、そうや。あんまし上手に『魔法付与(エンチャット)』でけへんけどな」

「凄い!」

「新入生なのに『魔法付与(エンチャット)』が使えるのは非常に優秀よ」


リリスお姉ちゃんも褒める。

「さすがスキル『覚醒』の持ち主ね」


アリス様が言うとクロエは睨むように言う。

「やっぱ、知っとるやないか」

「仕方ないんじゃない?ULTRAスキルは誰も注目するものよ、ね、ミリ嬢。あなたは『影』でしたっけ。」

「ふぇ〜」


いきなりこちらに振られてミリは変な声が出た。

そこで予鈴が鳴った。この鳴り方は上級生の授業の始まりを告げるものだ。

「あら、残念。またお話しましょう」

「また後でね」


アリス様とリリスお姉ちゃんが席を立ってトレイを片付けに行くのをクロエと2人で見送る。

「全く、油断のならんやっちゃで」


クロエはアリス様に何か含むところがあるらしい。

「凄い人だったね、アリス様」

「ロンドベール侯爵家は王都の北西に領地を持ちながら、海に浮かぶ諸島を管理してるから商人以上に曲者が多いねん。油断したらあかんよって、ミリ」


2人でアリス様の感想を言いながら食事を済ます。あたしはもそもそ食べるのでクロエよりも食べるのが遅い。

するとトレイを片付けていたらしいエリザが側を通り掛かった。いつものように取り巻きが2人、あれ?2人しか居ない?

「あら、ミリは食事が遅いわねえ。物覚えの悪い人は食事も遅いのかしら」


クロエか立ち上がって抗議しようとした時にはすでに行ってしまった。いつもの事なのであたしは気にしないがクロエは不機嫌になった。

「まったくもう、どいつもこいつも気にいらん!」

「クロエったら、怒り過ぎよ。それよりエリザの取り巻きひとり居ないよ?」

「ああ、エマ•パッシャー男爵令嬢やろ。焦げ茶の瞳で茶髪くるくるヘアーのニキビっ子やな。なんや知らんけどお家の事情で学園辞めたらしいで」


なんと、辞めたのか。可哀想に、あたしだってもしかしたら辞めなければならない羽目になるかも知れないのだ。笑っていられない。


午後からの実習は先生の指導の元、各自魔力を纏う練習だ。クロエは実戦で使うようで一番早く纏って見せた。性差があるのか男性の方が次々と成功していく中いち早く出来たのはアビーさんだった。さすが女騎士を目指す女性だ。魔力が高いほど成功し易いと言われたようにひとりが成功すると次々と成功していく。

あたしも何とか魔力を纏う事が出来たが維持するのは難しい。気を抜くと直ぐに霧散してしまう。この状態で何かするのは相当に大変だ。

授業中に何とかみんな成功したが持続出来るように各自練習するようにと宿題を出された。明日の授業では魔力を纏ったまま魔法を使って貰うと言った。無理!


身体を使った気だるさを感じながらあたしはクロエと寮に帰る。部屋で着替えているとリリスお姉ちゃんが帰って来た。

リリスお姉ちゃんも制服から着替えて一緒にお風呂に行く。

リリスお姉ちゃんに『魔力纒』の話をすると何度もやって慣れるしか無いと言われ、リリスお姉ちゃんがやって見せてくれた。

しゃぼんが付いた肌から魔力の淡い光が現れる。その状態のまま体を洗って見せてくれたので拍手をする。さすが上級生だ。

「でもね、わたしの魔法属性は『土』だからあんまり効果無いのよね」


と言う。確かに魔法属性『土』の場合どう応用すれば良いのか困る。リリスお姉ちゃんは戦うのは嫌いなので鎧とか着たく無いと言うのだ。確かにリリスお姉ちゃんには似合わないかも知れない。

「ミリちゃんもやって見せて」


とリリスお姉ちゃんに言われたので『魔力纒』をしてみると体から淡い光が現れた。リリスお姉ちゃんが変な声を出した。

「んん~?ミリちゃん待って!」


何かおかしいのだろうか?自分でも裸の体を見てみるがおかしいようには見えない。

「ミリちゃん、あなたの『魔力纒』厚みがおかしいわ」


厚み?見ると確かにリリスお姉ちゃんのより厚そうだ。気を抜いたら解けた。

「何で厚いのかしら、おかしいわね。明日先生に聞いてみた方が良いわよ」


リリスお姉ちゃんが言うのだからそうなのだろう。


お風呂から上がって自室に戻る。自室のあたしのベッドの上に本が置いてあるのをリリスお姉ちゃんが目ざとく見つけた。

「あら、これはなぁに?」

「これはお母様が昔読んだ本です。えと、そのお母様は動物が好きで・・・」

「そうなんだ。それで面白い?」

「はい、面白いですよ。今はここの『7.神話時代と歴史』を読んでいるんですよ。」

リリスお姉ちゃんに読んだ場所を開いて見せる。

「ああ、子供の絵本にある神話のお話ね。」

「そうなんです。神話のお話の間に書かれている細かい文字のお話がとても信じられなくて」


あたしは細かく書かれた部分をリリスお姉ちゃんに見せる。

「え?何処にあるの?何も書かれてないわよ」

「そんなこと無いです。・・・えぇ〜、見えないですかぁ?」

「何も無いわ」


なんとも言えない間が開く。

あたしは細かく書かれた文章をリリスお姉ちゃんに読んで見せる。リリスお姉ちゃんが驚愕の表情になるのを見て、リリスお姉ちゃんも信じられないんだなと思った。

「ミリちゃん、何を言っているの?それ、何処の言葉?」

「え?普通に読んでましたけど・・・」

「そうなの?変ね。わたしにはミリちゃんが聴いたことの無い言葉を話しているように聞こえたわ」

「そんなぁ」


なんとも言えない間が開く。

どうやらこの神話の行間に書かれた文章はあたしにしか見えないし、読んでも聴いたことの無い言葉として聞こえるようだった。

「不思議な事もあるものね。きっとミリちゃんにしか見えないし、読めないんだわ。こんな不思議なことは神様が関与してるのよ」

「人の神様ディンプル様の事ですか?」

「ええっ、誰それ!%℉☆℃§って誰?神様と言ったらミュイーズ様でしょ?」

「ミュイーズ様は美の神様ですよね?」

「違うわよ、ミュイーズ様はこの世界の神様でしょう?」

「ええっ、あたしがおかしいのかしら」

「だって、教会で主神様で祀られているのはミュイーズ様よ。」

「・・・分からなくなっちゃった。」


暫くリリスお姉ちゃんは心配そうにあたしを見ていたけど言った。

「明日、授業が終わったら図書室で確認すると良いわよ」

「分かりました。そうします。」


あたしが気落ちしているのを見てリリスお姉ちゃんが心配してくれたがどうにもならなかった。少し気不味い気持ちでベッドに入った。


次の日、リリスお姉ちゃんと何時ものように朝食を食べて学園に向かう。教室にはミッチェルさんとクロエが何かの本を見ながら話をしていた。そしてアビーさんが側で付き従っていた。クロエがあたしに気付いて手を振って呼んでいたので近づいて挨拶をする。

「ミッチェル様、アビー様、クロエ様おはようございます。」

「あぁ、、おはようさん。それよりミリ、これ見て!」


挨拶もそこそこにクロエが見ていた本を指し示す。厚みがあって歴史を感じさせるような古びた本で、少し黄ばんでいる。

「これはなあに?」


あたしがクロエに聞くと教えてくれた。

「これはな、ミッチェルはんの家の歴史本らしいんや。何でも500年近くも前の稀覯本らしいんやけど、ここにアンドネス公爵家の言い伝えが書かれているらしいんやけど、読めへんのや。で、本好きのミリならこの文字が読めへんかと思うてな」


クロエの説明にあたしは本を自分の方に向けてクロエが指し示す場所を見た。確かに見たことが無いような文字が数行書かれていたが、じっと見詰めていると何故か読める気がしてきた。

「あれは、魔力の根源にして脅威。敵対は愚策なり・・・」


あたしの言葉にあたしが戸惑う。クロエもミッチェルさんもアビーさんですら驚いている。

「やっぱりや、流石ミリ!書いてある意味は分からへんけどな」

「凄いですわ、ミリちゃん。何処の文字なのかしら。」

「文字は今の文字と同じですけど、一文づつ綴りが逆に書かれて、わざと読み難くしているようです。」


アビーさんが頭を近づけて文字を追って言った。

「な、なるほど、そう書いてあったのか!」

「流石ね、ミリちゃん。これで他の文章も読めるようになるわ。ありがとう」

「はぁ」


あたしが気のない返事をしているとバージル先生が入って来たのでお開きになって、席に戻った。


バージル先生の言っていた通り競技室で今日は半日『魔力纒』の練習という事で移動した。最初はバージル先生の前で『魔力纒』をやって見せてその光り方や時間を確認して行く。『魔力纒』が充分出来る者を除いて見てもらうのであたしも見て貰いながら昨日、リリスお姉ちゃんに言われた事を聞いてみる。

「ああ?ミリ嬢のは魔力を外に漏らし過ぎだ。もっと抑えろ。漏らし過ぎだから時間が短いんだよ。」


なるほど、纏う事に意識を集中しすぎて多かったという事らしい。なかなかに難しい。みんなから少し離れた場所で『魔力纒』をしてみて少しづつ抑えて見る。出ている量なんて自分では分かり難く、うんうん唸っていたらクロエが近付いて来て声を掛けて来てくれた。

「もう少し抑えても良いと思うよ」


クロエを見ると『魔力纒』をしながら普通にしている。確かにクロエから出ている魔力の光は服とほぼ同じ程度らしく肌の露出している所を見ないと分らないくらいだった。

全員の確認が終わった所でバージル先生がみんなに言った。

「これから『魔力纒』の状態のままそれぞれの魔法属性に合わせた魔法を発動してもらう。まずは分かりやすく掌に魔法を発動してみろ」


各々が自分の掌に魔法を発動する。あたしもやってみるといつもより簡単に水の玉が現れた。

大きさは手のひらサイズで玉の形を保つ為にぐるぐる回っている。『魔力纒』の状態だと魔法を発動するのは楽な感じがする。あまり掌に集中すると『魔力纒』が解けてしまいそうな気がするので魔法発動を抑えないといけない。


「みんな、よく聞け!片手で魔法発動が出来たら両手でもやってみろ。玉の形だけでなく腕や体にまとわり付かせる事もやってみろ。人によって出来る、出来ないがあるから『魔力纒』が解けてしまったら最初からだな。」

各々の間を回ってみんなの様子を確認したバージル先生が次の指示をする。


あたしは魔法属性が『水』だけどみんなは炎だったり、風だったり、土だったりするので様々だ。バージル先生の言う通りに直ぐに出来るのはやはり『魔力纒』を最初から出来たような人達だった。

一番楽々とやっているのはクロエだった。クロエの魔法属性は『炎』で炎の帯が体中を走り回っている。まるで見世物のような技術だと思う。


次に上手いと見えたのはアビーさんで魔法属性『風』のためか両手だけでなく飾りのように幾つかの風の玉が浮いていた。他の人達は魔法発動に気を取られて『魔力纒』が解けたり、一つは良くても2つ目の魔法発動をしようとして『魔力纒』が解けたりしている。

みんな苦労して居るが魔法を発動するのが楽しそうだ。あたしも2つ目の水玉を出せた所で左右の掌を水が行ったり来たりするように魔法発動が次第に出来てきた。楽しいね、これ。笑みが浮かんで来るのも仕方ないと思う。

瞬く間に時間が来て終わりの鐘が鳴った。各々魔法発動と『魔力纒』を解く。楽しかった分とても疲れた。

バージル先生が明日はもっと難しい『身体強化』に挑戦して貰うので各自自習をするようにと一言追加した。


クロエはあれだけの魔法を使っていながらあんまり疲れていなそうだ。一緒に帰ろうと言うので帰りながら『魔力纒』のコツの話やあの炎の帯の作り方の話をする。

やっぱり掃海士という魔物を狩る仕事を任されるだけあってクロエは凄いと思う。あたしもハンターの仕事に魔力を使ってみたいな。今はスキルのお陰で魔物を狩っているだけだからこそハンターとして未熟さを感じる。


エライザ学園の寮の自室に戻ると今日はリリスお姉ちゃんが帰っていた。

「図書館はどうだった?」


と聞かれ、あっと思い出した。時間があったら行ってこようと思っていたけど『魔力纒』の実践が楽し過ぎて忘れていた。

「じゃないかと思って借りてきて置いたわよ」


リリスお姉ちゃんは図書館から神話に関する本を数冊見繕って借りて来てくれていた。

「ありがとう、リリスお姉ちゃん!」


あたしはリリスお姉ちゃんに抱きついた。

「ほらほら、本は後でゆっくり読めば良いから夕食に行きましょ」


クリーンの魔法で体から埃を払ってからリリスお姉ちゃんの後を追った。

夕食のメニューはお肉がゴロゴロ入ったシチューとまるパンなのに少し堅い石窯パンを食べた。飲み物は薄めた赤ワインだ。石窯パンは堅かったがシチューに付けて食べると意外と食べやすく、途中で追加を貰った。ついでに隠れて影の世界へしまってしまう。


食事の後はリリスお姉ちゃんとお風呂に入って昨日のように『魔力纒』の話をするとリリスお姉ちゃんが面白いものを見せてくれた。濡らした体の状態で『魔力纒』を行い、石鹸を肩に乗せると魔法を発動したのだ。

リリスお姉ちゃんの魔法で石鹸が動き出し、体中を這い回る。見ているとふしぎなアメ光景だったがリリスお姉ちゃんは気持ち良いらしい。

「へぇ~、リリスお姉ちゃん面白い!」


楽しいお風呂の後はリリスお姉ちゃんが借りてきた本を読むお勉強の時間だ。






















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