第33話

翌日、あたしはお父様に学園へ戻ることを伝えた。学園の自室にも転移扉を描く予定なのでいつでも戻って来れる。お父様お母様には影従魔『ルキウス』の眷属も見張り兼護衛が付いているので何かあれば直ぐに対応出来るようにもなってる。

お母様の大怪我の演技も今のところ執事長やメイドにもバレていないから、怪しまれる事は無いと思う。時間を掛けて治った事にして貰うのでお母様には不自由を掛けるけど『拠点』のアン様の家で寛いで貰えるように色々な物を持ち込む積もりだ。

乗り合い馬車を使っての移動をしながら、行く先々で魔物を狩って王都で資金に少しでも変える積もりだ。森の深いところまで行かないで狩れば森ねずみや一角うさぎなら簡単に手に入る。

川向うの猪オークの集落については今のところ放置だけど、熊獣人のマタギさんも気にしてくれているので大丈夫だろう。彼にも影従魔『ルキウス』の眷属は付いているらしい。

王都周辺の森にはあまり魔物は居ないが代わりに動物が居るようなので狩れば狩人ギルドへ持ち込める。まだ、王都の狩人ギルドには顔を出した事は無いがある程度獲物が出来たら行こうと思って居る。


あたしが4日後、王都に着いた時には森ねずみ10匹40000エソ、一角うさぎ21匹105000エソとまぁまぁの成果だった。金貨14枚はギルドに預け、大銀貨1枚は手持ちにした。

それからエライザ学園の寮に行ったが丁度昼頃だった為に誰も寮には居なかったので、自室の壁に『転移扉』を描いて、アン様に教えて貰った『隠蔽』の魔法で見えなくして置く。


『転移扉』を使って『拠点』のアン様の家に行き、影の世界に保管しておいた物を家の中に移動したり、家の中で寛いでいたお父様やお母様にエライザ学園の寮に無事着いた報告をした。お父様も『拠点』のアン様の家が気に入ったようで、執務疲れを取るために度々やってきているようだった。

この『拠点』のアン様の家の事はリリスお姉ちゃんにも教えて、自由に入って貰う積りでいることをお父様に報告したところ、あまり良い顔をされなかった。


アントウーヌの森を含むボアン子爵領は山を隔てているので分かりにくいがダンダン伯爵家の寄親ジュゼッペ侯爵家の寄り子なのだと言う。だから、ボアン子爵にその気が無くてもジュゼッペ侯爵家に命令されれば拒否は出来ないからと言われたのだ。ダンダン伯爵家とかジュゼッペ侯爵家には良くない印象しか無いけど、ボアン子爵にも良くない印象しか無いけど、リリスお姉ちゃんだけは別なのだ。

たとえ、お父様の注意でもこれだけは聞けない。ロザリアお姉様の代わりでは無いがリリスお姉ちゃんがあたしの大切なお姉ちゃんなのだ。心許せる唯一の人なのだから。


あちこち行って疲れたあたしは寮の自分の部屋のベッドサイドでミズーリ子爵領の館から持ってきた本を広げた。言うまでもなくお母様の『森の生態系』である。

目次

1.動物の種類と生態

2.魔物とは

3.魔物の種類と生態

4.動物と魔物の生態系

6.人とは

7.神話時代と歴史

8.森の生態系

6番目の“人とは“まで読み進めたので、7番目の“神話時代と歴史“を読んで行く。そこには小さな子供が絵本などで読んだ事のある神話に付いて全く違う事が書かれていた。


この世界の始まりは人が居ない自然の楽園だったところから始まる。神が宇宙を作り、海を開き、陸地を現し、森を広げ、動物を増やした後に人の姿で神が天よりやって来た。この世界に初めて神が暮らした。沢山の神は自由にこの世界を満喫し、動物達とも仲良く暮らした。

ある時、神のひとりが自分だけの動物が欲しいと思った。そして森に暮らす動物達に似せて魔物を生み出した。その神は魔物が自由に暮らせるように森の中に魔力が湧き出す場所を作った。そして魔物が動物を食べて仕舞わないように動物を襲わないように命令した。魔物達はその神様に従い、崇めたので神様は魔神様と呼ばれるようになった。

他の神も暮らす場所に応じて山の神になったり、海の神になったり、空の神になったり次第にその呼び名を持つようになって姿を変えていった。

魔神様に倣って他の神様が自分達を崇めてくれる存在を欲しがり、人や獣人やエルフやドワーフや魚人や鳥人を作った。人に至ってはその土地にあった神の癖が出た種族が生まれた。

世界には多様な“人間“が増え、様々な文化が生まれた。最初のうちは互いに尊重しあい、畏敬の念を忘れることは無かったが時を降るに連れ、優劣を競う流れが争いを生むことになった。

特に生まれ持っての才が無く、集団としての力しか持たなかった人は知恵を集め、自然を利用し、人工物を生み出すようになった。そして魔物の体の中に魔物の力の源である魔石を見つけ、利用するようになって他種族を越える力を得た。


そして、人は国という概念を生み出した。国は他の人間を巻き込み争いを激化させてしまった。それを収束させたのは魔物の神の魔神が生み出した“人間“である魔人だった。魔人は魔物を越える魔力を持つ存在だった。


魔人が世界を統べた。魔人の寿命は他種族よりも長く、人が生み出した人工物ですら敵わない個の力を持っていた。そのため、長く魔人の統べる世界は長く続き、文明は発展を極め、空を越えて天を突き抜けてその居場所を増やした。

だが、その繁栄を崩し終わらせたのはある人だった。


人を生み出した神ディンプルは不満だった。個の力を持たずとも知恵を集団の力を駆使する人が一番素晴らしい存在だと考えていたのに、魔神が生み出した特殊な個の力を持つ魔人が一番素晴らしい存在だと証明されてしまったからだ。

そこで神ディンプルは人の魂の持つ技術力を『スキル』として与える事にした。技術力は人が年月を掛けて得る技量であるがそれをある特定の時期に何の努力も無しに『スキル』として前借りのように得られるようにしたのだ。


魔人の生み出した文明を崩し終わらせたのは『スキル』を初めて得た人だった。初めての『スキル』は過剰過ぎて、瞬く間に他種族を始め、多様な人間を減らし始めた。そのため天に達した人間とも連絡が途絶え、海中深く存在した魚人とも連絡が途絶え、互いに意思疎通していた連絡が途絶え、分断と衰退の歴史が始まった。


この暗愚と混乱の時代は魔人が世界を統べていた期間と同じほど長く、その間にも魔人が懐古して世界に平和を齎そうとしても強力な『スキル』を持つ人によって阻まれた。そのため魔人を始め、他の種族達が一丸となって初めて『スキル』を得て世に災いを齎せた人と戦った。

戦いは7日間続き『スキル』を抑えて何とか地中深く、誰にも手が出せない場所に堅く堅く封じた。世界が初めて『スキル』を得た人を必要としない限り開放されないように特別な魔法鍵が掛けられた。それは戦いに参加した種族全ての魔法鍵が無ければ開かない特別なものだった。魔人や獣人やエルフやドワーフや魚人や鳥人や天人がひとつづつ持つ事になった。


混乱と災の『スキル』を初めて持った人が居なくなっても魔人は世界を統べる事は無かった。戦いで激しく消耗してしまった為に魔人だけの国を造り、回復を待つ事にしたのだ。

獣人やエルフやドワーフや魚人や鳥人や天人にも世界を統べる野心など無くそれぞれ安心安全であれば良いとそれぞれの国を造り平和に暮らした。唯一『スキル』を得た人だけが自らの優位性を誇る為に戦った。それも人同士で種族の違いがあるという理由だけで戦った。


人を生み出した神ディンプルは世界に混乱と災を齎した『スキル』を与えた事で他の神から非難を浴びた。特に魔神からの強い非難を受ける事で自分を正当化するために人に神話を与えた。それは『神々が統べる世界に混乱と災を齎したのは魔神が暗躍したせいである。人が他種族を率いて魔人を打ち、世界に平和を齎した。今もそのために神ディンプルは人にスキルの祝福を与えている』というものだった。



何と言う事が書かれている本だろう。絵本のように神話のお話が描かれている間に沢山の文字が書かれていた。あたしは読んでいて頭がクラクラしてしまった。あたしが読んだ絵本には最後に書かれていた神ディンプルの神話の内容に沿った分かりやすいものだった。細かく書かれた文章はとてもあたしに衝撃を与えたが、何となく本当なのでは無いか、神話は間違いなのでは無いかという疑いを植え付けた。

混乱したままあたしは睡魔に導かれて眠った。


肩を揺すられてあたしは目を覚ました。目の前にはリリスお姉ちゃんが居たので思わず抱きついた。

「リリスお姉ちゃん!!」


リリスお姉ちゃんは優しくあたしの背中を叩きながら応えてくれる。

「あらあら、寂しがり屋のミリちゃんいらっしゃい、うふふふ」

「だって、リリスお姉ちゃんが居なくてとっても寂しかったんだよ、あたし!」

「そうね、わたしもミリちゃんが居なくてちょっぴり寂しかったわ」

「ええっ〜、ちょっとだけなのぉ〜?」


あたしが身体を離してリリスお姉ちゃんを見ると満面の笑顔で言った。

「嘘よ、う〜そ!わたしもミリちゃんが居なくてとっても寂しかったわ!ふふふ」

再びリリスお姉ちゃんに抱きつきあたしは言った。

「リリスお姉ちゃんだぁ~い好き!!」


暫く抱き合ってお互いの温もりを確かめあっていたがリリスお姉ちゃんから身体を離した。

「もう、そろそろ夕食の時間だから食事に行きましょう、ミリちゃん」


くぅ〜と鳴るお腹を擦ってあたしは元気に答えた。

「はい!」


食事をリリスお姉ちゃんと済ます時にあたしが沢山の人に動じなかった事に驚き、ミリちゃんも成長してるのねと褒められた。お風呂も一緒に入ったら、誰かの下着が無くなったと騒ぐ者が居て少し騒動になったが、リリスお姉ちゃんは放って置きましょうと言うので気にはしたがリリスお姉ちゃんに従った。下着が無くなったと騒いだのはダンダン伯爵家エリザの取り巻きの男爵令嬢だったからだ。


部屋に戻り、寝巻きに着替えるとリリスお姉ちゃんの質問ラッシュが始まった。アントウーヌの森に行った用事とは何だったのか。目的は達せられたのか?スキル『影』は派生スキルを生んだのか?何で学園に戻るのが遅れたのか?

あたしはひとつひとつ順番に話をしていく。

狩人ギルドのギルマスである黒狐族のアルメラさんから情報を貰い過去の『影』スキル持ちであったアントウーヌの森の魔女の痕跡を探しに行って、『拠点』のアン様の家を見つけた事。

そこで幻の秘薬ポーション『エリクサー』を手に入れてミズーリ子爵領の館に帰ったら燃えていた事。

『拠点』に居た影従魔『ルキウス』の力で辛うじて生きていたお母様を救い出し、幻の秘薬ポーション『エリクサー』を使い何とか助けられた事。

幻の秘薬ポーション『エリクサー』を秘匿するためにお母様が重症の演技をしながらお父様に助けられている事。

やっとミズーリ子爵領に用事が無くなったのでエライザ学園に来れた事を話す。

リリスお姉ちゃんは一つも疑うことなく受け入れてくれた。時々驚いたり悲しんだりした表情を見せたが何時ものリリスお姉ちゃんだった。リリスお姉ちゃんは自分の中で咀嚼しているのか暫く黙っていたが、あたしを抱きしめてくれた。

「良く、頑張ったわね。ミリちゃん」

その一言でお父様やお母様とは違った安心感を感じてまた涙を流してしまった。


リリスお姉ちゃんは言葉だけで信じてくれたけどちゃんと見せて証明したい。お父様は危惧したけど絶対リリスお姉ちゃんはあたしを裏切らないと信じている。あたしはベッドの上に置いてあった鍵をリリスお姉ちゃんに渡す。

「これはね、秘密の『拠点』であるアン様のお家に行くための鍵なの。リリスお姉ちゃんにあげるから肌見放さず持っていて」


鍵は首から下げられるようにネックレスのようにしてあったのでリリスお姉ちゃんは嬉しそうに直ぐに首に下げた。

「これにはあたしの魔力を込めてあるから影の世界であたしと手を繋がなくても大丈夫。でもあたしが一緒でないと戻って来れないから気を付けて」


あたしはリリスお姉ちゃんと手を繋ぐとあたしのベッドの上に乗って壁に手を滑らせる。『隠蔽』の魔法が掛かっているのでリリスお姉ちゃんにはあたしが壁を撫でているようにしか見えないだろう。壁に影の扉が開き、リリスお姉ちゃんはびっくりしたが手を引いて中に入る。

そこは『拠点』の家の中だ。家の中には誰も居ないのでお父様もお母様も館の自室に戻ったのだろう。ソファには影従魔『ルキウス』が丸くなって居た。

「ここがアントウーヌの森に500年前に住んで居た魔女と呼ばれたアン様の家なの!」


リリスお姉ちゃんは驚いて周りを見回していたが次第に喜びの表情になった。あたしが手を離したので少し不安そうにしたけど自由に動ける事に安心したようだ。

「うわぁ〜、本当に絵本に出てくる魔女の家みたい。ねぇねぇ、ミリちゃん、あれはなあに?」


初めてここへ来たお母様のようにリリスお姉ちゃんははしゃいでいた。ひとしきりあちこちを見回して歩き回って始終笑顔だったリリスお姉ちゃんはソファの所に来て固まる。

「あ、あれは何?」


あたしは危険なモノでは無い証拠に影従魔『ルキウス』に触れながら説明した。

「この子が影従魔『ルキウス』よ。大丈夫、大きな犬みたいなものよ」


影従魔『ルキウス』はあたしの言いように不満があったらしく頭を上げて言った。

「犬ではないのじゃがな、あるじ様。まあ良いわ。初めてお目に掛る、儂は『ルキウス』、あるじ様の影従魔じゃ」


リリスお姉ちゃんは影従魔『ルキウス』が喋るのに驚いたが全く敵意が無いので安心したようだ。はじめはおずおずと次第に大胆に影従魔『ルキウス』を撫で始めた。

「もっふもっふ、うふ」との感想だった。せっかくなのであたしは影従魔『ルキウス』にアン様から『トリ』と呼ばれた他の影従魔の事を聞いてみた。

一度影従魔『ルキウス』はリリスお姉ちゃんを見たので頷いてやると話し始めた。

「確かに前の御主人様に『トリ』と呼ばれておった影従魔はおるのじゃ。儂が呼べばこの場所に来るだろう。呼ぶのか?」


影従魔『ルキウス』の話し方は呼んで欲しく無いようだがあたしは興味ある。影の世界で空を飛べるなら是非とも側に置きたい。

「呼んでちょうだい、お願い『ルキウス』」

「うむ」


リリスお姉ちゃんに撫で撫でされながら影従魔『ルキウス』が顰めっ面をして数秒固まった。すると何処からか何かの影が『拠点』の家を覆ったのが分かった。そして家の外で収束すると鳴き声が聞こえた。

「かぁ〜」


カラスかよ!と心のなかでミリは突っ込んでしまった。そしてその存在が家の中に入り込むと丸テーブルに置かれた椅子の背もたれに現れた。

「ようこそ、あるじ殿。ワイが『トリ』です。」


何だかイントネーションがおかしかった。自己紹介した影は確かにカラスのように見えたがその大きさは3倍以上の1m程の大きさがあった。翼長なら3mはあるだろう。

「出来たらで良いんで名前を貰えませんか?『トリ』って、前のあるじ殿は酷いです。初代みたいに『ロプロス』のような格好いい名前を所望しますよって。」


やっぱり『トリ』は嫌なんだなと思いながらリリスお姉ちゃんを見るとくすくす笑っていた。

「リリスお姉ちゃんは何か無い?」


あたしがリリスお姉ちゃんに聞いてみると薔薇には因んで無いけどと断った上で言った。

「極楽鳥と言う意味の『ストレリチア』と言う花の名前があるわ」

「じゃあ、そこから『レリチア』ってどう?」

「うん、今日からワイは影従魔『レリチア』だっせ!」

何とか満足して貰えたようでバサバサと羽を広げて喜んでいる。


もう遅いのでエライザ学園の寮の部屋に戻って寝ましょうとリリスお姉ちゃんが言うのでここで一緒に寝ませんかと誘う。勿論朝には影従魔『ルキウス』に起して貰えば良い。寮のベッドよりもこの家の2階の部屋のほうがふかふかのベッドだし、大きい。リリスお姉ちゃんは少し迷ったがあたしの言葉に従ってくれた。早速2人で2階に上がる。手前の部屋があたしの部屋で奥はお父様とお母様の部屋である。


部屋を見るなりリリスお姉ちゃんはきゃあと声を上げた。やっぱり思った通りの可愛い部屋だったらしい。勿論取り揃えたのはアン様なんだけどね。


リリスお姉ちゃんに気に入って貰えて嬉しいな。2人で向かい合って仲良く寝ました。


翌日影従魔『ルキウス』と『レリチア』に起こされ、あたし達はエライザ学園の寮の自室に戻り、着替え、食堂へ行った。リリスお姉ちゃんも普通の授業なので食事の後は学園へ行く。校舎の前で別れた。授業が終わればまた会えるのだ。寂しくなんで無いよ。


いつもの教室に行くとみんながこちらを振り返り、クロエが跳んできた。思いっ切り抱きつかれて倒れそうになる。

「ミリ!お帰り!大丈夫?お母様の様子はどうなの?」


矢継ぎ早に質問を受けるとクロエらしいせっかちさだなと思う。他の生徒達も近付いて来て周りに集まる。みんな興味津々だ。取り敢えず、挨拶、挨拶。

「皆さん、ご心配をお掛けしました。この通りあたしは元気です。ご心配頂いているお母様の容体ですが少しづづ快方に向かっておりますし、お父様が付いて居ますので大丈夫です。ただ・・・うちは貧乏子爵なのでまだ館の立て直しは出来ていません。でもご心配要らないです。生活は何とか出来ますので。」

「本当に大丈夫なのかしら、ミリちゃんって可愛過ぎるから」


ミッチェルさんが良く分らない心配をしてくれる。隣でアビーさんが頷いているのは何故だろう。

「俺達も心配していたぞ」


マクスウェル様と一緒にクルチャ様、ナランチャ様も口々に声を掛けてくれる。普段あまり口を開かないのにこんな時は声を掛けてくれるなんて嬉しいな。


その反面、こちらに来ないで遠くから睨んでいるのはエリザ様とその取り巻きだ。あたしに声を掛けてくれる人達のファンも冷ややかな視線を向けてくる。

そんな雰囲気を全然ない気にしないのはクロエだ。

「良かった良かった!またミリと一緒に勉強出来るね!」

「そうか、そんなに勉強したいか。なら早く席に付け!!」


クロエの言葉尻を捉えていつの間にか入って来たバージル先生が授業が始まる事を伝えた。そして、あたしに優しいシルバーの瞳を向けて言った。

「良く戻ったな、ミリ•ミズーリ嬢」


万感が籠もって居るようで少し涙が浮かんだが頭を下げて言った。

「はい!また宜しくお願いします。」


みんなが席に付いて授業が始まると浮ついた空気は直ぐに消えて授業に集中していった。


復帰第一の授業は『武術の技能』についてだった。

「あー先日まで武術について概要は話したので今日はその方法論になる。ミリ嬢は隣のクロエ嬢に後で教えて貰え。」


武器には剣、槍、弓、槌、手甲などがあるがこれらに魔力を使って特殊能力を与える事を『魔法付与(エンチャット)』と呼ぶ。魔力を纏わせるだけでも効果はあり、魔法を発動することで炎を帯びさせたり、冷気を帯びさせたりすることが可能となる。

人によって得意不得意があるので出来なくても問題は無い。魔力が多い者は魔力を纏わせる事が得意な傾向があるが、長い時間継続させるのは練習が必要だ。

風の魔法を『魔法付与(エンチャット)』させると武器の動きを速くしたり、切れ味を上げたりも出来る。土の魔法を『魔法付与(エンチャット)』すると剣の長さを変えたり、槌の重さを変えたりも出来る。















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