第7話

ミズーリ子爵領から王都まで馬車で3日掛かった。ダンダン伯爵領からはミズーリ子爵領を通らないと王都には行けなかった。ちなみにダンダン伯爵邸からミズーリ子爵邸までは馬車で2時間程度だった。

その為エリザが王都の学園に向う時には強制的にミリは馬車に載せられ連れて行かれた。エリザの話相手をさせられたが話は自慢話が主でミリにとっては拷問に等しかった。


王都には高い建物が2つあった。一つはエライザ王宮であり、もう一つはエライザ学園だった。その2つの建物を囲むように城壁が二重にあった。第一の城壁内は貴族が住んで居た。第二の城壁内には市民や商人が住んで居た。

貴族は出入りが自由だったが市民や商人は許可が無いと第一の城壁は越える事が許されて居なかった。

王都の第二の城壁の外には大河が流れ、運河が王都の中を通って居た。この運河が上下水道となっていたのである。


エライザ学園の中にも運河から引かれた川が流れ、草花や小さな森の用水となっていた。そんな用水の近くにミリ達が入る寮があった。

貴族しか入れない全寮制で基本二人部屋だった。一つ年上の同性との相部屋である。一度決まると余程のことがない限り相手は変わらない。15歳になると卒業するので14歳の者が一人部屋となる。だから12歳と13歳は一年間は同じ者と暮らす事になる。12歳で入り15歳で卒業するまで3年間は寮暮らしだ。


当然、エリザとミリは別々であり、ミリはほっとしながらも緊張していた。寮の入り口には名前と部屋番号が書かれていて、ミリはビクビクしながらも指示された一階の部屋に入った。

ドアを開けて部屋の中に入ると両側にベッドと窓側に机があった。机の上には戸袋があり、ベッドの下にも荷物が置けるようになっていた。

左側のベッドの前にはカーテンが半分引かれてその横に女性が座って本を読んで居た。長い栗毛をシニョンにして片肩から垂らしている。服は制服のようでピンクのリボンを付けている。


ミリに気付いたその女性は立ち上がってミリを見るとニコリとした。ミリより背が高い。

「こんにちは、あなたがわたしの同室の方ね。わたしの名前はアマリリス•ボアンよ。リリスと呼んでね。あなたの名前は?」


急に話しかけられてミリはビクビクする。

「あ、はい、リリスさん。あたしはミリ•ミズーリです。」


ミリが緊張しているのに気がついたのかリリスは少し声を落して続ける。

「あぁ、ミズーリ子爵家のミリちゃんね。ねぇ、ボアン子爵領を知っているかしら」


聞かれたら答えないといけないとミリは少し考え込んでから答えた。

「えっと、確か王都よりも西のジュゼッペ侯爵の寄子ですよね?」

「そうそう、良く知ってたわね。」


不思議そうにリリスは言う。

「ボアン子爵領って薔薇で有名だったから覚えてました。」


ミリの答えにリリスが花のような笑顔を浮かべる。

「嬉しいわ、結構知らない人も多いのよ?」


少し問い詰められている気がしてミリは小さく声を出した。

「実家の母が薔薇好きなもので」


リリスはミリの手を掴んて言った。

「あらまあ、あなたとは仲良くやれそうだわ。」


積極的でハキハキしているリリスの言動に押されてミリはぎこち無い笑みを浮かべた。そのままリリスはミリに荷物を置かせて、寮の中の案内を始めた。


一階は2年生と1年生の相部屋、二階は3年生の個室部屋だ。年に依って人数は変動するので同じ学年の者と同室になることがあるそうだ。今年は2年生が多かったので2年生の同室の者がいるそうだ。ミリは部屋の合鍵をリリスから受け取った。

寮は部屋数が多く、空き部屋もあるそうだ。


一階には共同のトイレと大風呂があり、二階は個室にトイレと風呂があるそうだ。ミリは贅沢だなと思った。勿論一階の者は二階に上がるのは厳禁だそうだ。でも、先輩から呼ばれれば問題無いらしい。


食堂は一階にあり、全員が一度に食べられる程に大きかった。幾つかの小皿料理が並び好きな物を好きなだけ食べられるという。もちろん無料である。

食事時間は決まっているのでその時間に食べ無いと片付けられてしまう。もちろん寮にも門限があり9時を過ぎると鍵を掛けられ寮には入れないらしい。

ミリはスキルを使えば入れるなと密かに思う。


他にも細々とした規則があるから覚えてねとリリスから言われた。学園に入る前に冊子は受け取っているから暇なときに読もう。


あちこちを見て回ったらもう夕ご飯の時間だからとリリスと食堂で食事をすることにした。



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