第3話

「ミリ、薔薇を摘んで来て頂戴」

「あ、はい」


今日もミリはエリザの側に仕えさせられて命令を受けていた。ミズーリ子爵家の庭に居るのにである。まるでエリザ

は自分の家に居るような態度だ。どうしてエリザがミズーリ子爵家に頻繁に来るのかと言うとミリの兄に逢うためだ。

ミリの兄ロベルトは2歳年上でとても美男子なのだ。そして『上級剣士』のスキルを得ていたのだ。後には騎士となるだろうと言われている逸材であり、 そんなロベルトに薔薇をエリザは捧げて迫る積りだったのだ。


ミリが庭の薔薇園からメイドの手助けを受けて摘んで持ってくる。

「遅いわよ!」

エリザの罵声が飛んだ。


それでもエリザは薔薇の深い赤い色はお気に召したようだ。薔薇で叩かれなくて良かったとミリは思った。以前エリザに言われて持ってきた花は色が気に入らないと花で叩かれたのだ。

エリザは深く赤い薔薇を持ってロベルトに婚約者になって欲しいと迫った。そんなエリザを見てロベルトは困惑しながら言った。

「ごめんね、エリザ。この間王都でのデビュッタントで婚約者が決まったんだ。」


「「えっ?」」

エリザだけでなくミリも驚いた。


「グリフォン伯爵のマリアンヌ様なんだ。」

ミリはそう言えば父親がそんな話をしていた事を思い出した。兄のロベルトが家を出るとミリが家を継がないといけなくなると言っていた。マリアンヌ様はロベルト兄さんと同い年でグリフォン伯爵のたった一人の娘だ。だからロベルト兄さんは婿に行くのか。

伯爵家から所望されたら断れない。ダンダン伯爵でも意を唱えられない。ましてやミズーリ子爵家にとってはとても光栄な事だ。

伯爵家なら選り取り見取りだろうにどうしてロベルト兄さんなのだろうか?


ロベルト兄さんに断られ、振られてしまったエリザはミリに更に辛く当たるようになった。今度はミズーリ子爵家に来るのではなく、ダンダン伯爵家に呼びつけて、無理難題を言うようになった。それはミリ達が10歳になるまで続いた。











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