Case.2-2 猫アレルギーの彼女
『お前、この前の合コンで凄く楽しそうにしていた女の子いたじゃんか?その後どうなった?』
合コンが終わって早三週間が経っていた。
柳瀬から、変なラインが来たが、既読スルーして僕は業務に勤しむ。僕なんかと楽しんで話せる女性なんて、正直いないと思う。
あの、平山未歩という女性とは少しわかり合えそうな気がしたものの、まあ、ご覧の通りだ。やはり、女性は、シンプルに話しやすく、イケメンで、エスコートが出来て、それにサラリーが高い男性が好きなんだ。だから、僕なんかに興味を持つ女性なんている訳がない。
「おい。スルーすんなって。いい話があるから明日の午後七時に、新宿の南口改札で待ち合わせするぞ。絶対に来いよ。来るまで待ってるからな」
柳瀬からこんな強迫めいたラインが来るのは珍しい。来るまで待ってるなんて、ほんとどうしたんだ!?あいつ…。
でも、まあ、あいつには色々世話になっているしな。行くしかないか…。うん。決して強迫に負けたんじゃないぞ。それだけは言わないとな…。
まあ、僕も気分転換したいし。明日は柳瀬と居酒屋で午前様というのも良いかもしれない…。
当日、僕は午後七時十分前に南口の改札が見える柱に寄っかかり、柳瀬が来るのを待っていた。
『ここでいいのかな。柳瀬は外出してたからJRで来るのか?』など思いながら、今日はどこで飲もうかとスマホで候補地を探す。適当な値段で、味の評価が高い店のメニューを真剣に眺めていると、不意に右肩を叩かれた。
ん?、顔を上げるとそこには、あの時の合コンの女性、平山未歩が僕の顔を見上げていた。はっ?一体なんで…?
僕は、身長だけは百八十近くあるのだが、彼女はおそらく百六十前後だろうか。あー、なんだか僕を見上げる顔がとっても可愛い…。
僕の鼓動は急速にスピードを上げていく。
「あー、ご無沙汰っていうか、偶然だね。元気?」
僕は、取りあえずの言葉を捻り出してぎこちなく話し出す。
彼女は、僕の顔を見上げながら、「お久しぶりです。今日は、柳瀬さんに頼んで私も来ちゃいました」と言うではないか。
「はっ?柳瀬?」僕は、スマホを見ると柳瀬からラインが入っていた。
【あとは、若い者二人で頑張れ。今度会ったときに結末聞かせろよ!】
あ〜、はめられた。どうしよう。もしかしたら彼女は柳瀬押しで来たのかも知れない。なのに、その本人がドタキャンなんて…。一体なんていえばいいんだろう。
「どうかしました?」
もう、しょうがない。隠してもすぐにバレるのであれば言ってしまおう。
「ごめん。柳瀬来れないんだって」
「そうなんですか。しょうがないですね」
「えっ?しょうがない?って…。残念じゃないの?」
「はっ?何がですか?」
むっちゃ淡泊な返事だけどどうなってんだ?
「じゃあ、行きましょう」
「へっ?何処に?」
「何処にって…。貴方の部屋ですよ。ニーちゃんに挨拶をしにね」
「はっ?あー、そう言えばいつでもおいでよって言ったっけ…」
「そうそう。早く行きましょう!」
彼女は、僕を促すと改札を入って行く。あれっ、僕の最寄り駅が何処だとか話をしたっけ?僕はあっけにとられながら彼女を追いかける形で階段を降りて行った。
電車で五分ほど揺られ、中野駅の改札を抜ける。
彼女は、「この駅降りるの初めて…」といいながらキョロキョロしている。
「ここからどれくらいなんですか?」
「うん、歩いて十分はかからないよ」
「へ〜。いい所に住んでるんですね。あっ、その前に、夜ご飯の材料買いませんか?私、こう見えても料理だけは得意なんで。ほら、あそこ!あそこにスーパーがある!入ってもいいですか?」
僕は、うんと頷くと「特売中だよ!安いよ!」と声が響く店内に入っていった。
買い物を終えた僕たちは、両手に荷物を持ってゆっくりと歩きだした。
夕立が降ったのだろうか?アスファルトに小さな水たまりが出来ている。そこを「ジャンプ〜!」と言いながら飛ぶ彼女がとても可愛く思えた。
「今日は、簡単に済ますということで、チャーハンと麻婆豆腐にします」
「は、はい?家で中華なんて食べたことないな…」
「えっ?豆腐を麻婆豆腐のもとに混ぜれば終わりですよ」
「はっー!?そんな簡単なの?」
「はい。超簡単ですよ。ふふっ。あっ、でも、私が料理得意なのは本当ですからね。今日は時間も時間なのであえて、簡単なメニューにしたんですからね!」
「うん。それは、はい。分かってます」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「ほんとにほんと?」
「ほんとにほんとだってば」
そこまで言うとどちらともなく笑いが起きた。
Case.2-3に続く
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