第0.6話 異世界へのオリエンテーション
いよいよ学生達が待ちに待った、[異世界に関わる授業]のオリエンテーションだ。
中学一年生全クラスは教室からいすを持ち運び、第三体育館に集まった。
この学校の体育館は小学と中学で分かれて複数存在し、このオリエンテーションの時間は三つ目の体育館に集合した。
学生達は高まったワクワクを抑えきれず、全クラスがざわつきを起こしていた。
「生徒の皆さん、静かにして下さい。」
司会の先生の言葉で、学生達のほとんどが静まった。
いよいよ異世界の授業が始まると、学生達は緊張しているようだ。
「これから、[異世界に関わる教科]のオリエンテーションを始めます。」
この時を、どれほどの学生達が待ちわびていただろうか。
小学の六年間の学習を乗り越えて、ついに待望の時がやってきた。
「[異世界に関わる教科]では二名の担当教師が主体になって、異世界で活動して行くための知識を学んでもらいます。
このオリエンテーションでは[異世界に関わる教科]を担当する二名の教師に、異世界に存在する[要素]と異世界にまつわる[歴史]を教えてもらいます。
それでは[異世界に関わる教科]を担当する先生方、お願いします。」
先生に呼ばれ、二人の先生が立ち上がった。
二人の女性の先生は僕ら学生達の前に立った。
二人の先生の内、ストレートヘアの女性が話し始めた。
「おほん。中学一年生のみんな、こんにちは!」
「こんにちはー!!」
ストレートヘアの先生のあいさつに、学生達は大きな声で答えた。
学生達の声には、異世界の授業への期待が乗せられていた。
「うん、元気な声でよろしい!」
続いて、三つ編みとメガネの先生が話し始めた。
「中学生になった新一年生の皆さん、まずは進学おめでとうございます。
私は、皆さんの異世界に関わる教科の[異世界座学]を担当する、
私は中学生になった皆さんに、皆さんがまだ知らない異世界についての知識や常識、異世界にまつわる歴史を教えていきます。
皆さん、どうかよろしくお願いします!」
女性の先生の丁寧な自己紹介とあいさつに、学生達の拍手が送られた。
「私は同じく異世界に関わる教科の[異世界体育]を担当する、
私はここにいるみんなを異世界で活動できる人間にするため、通常の体育では学ばない体の動きを教えてゆくわ。
みんな、よろしくたのむわね!」
再び学生達の拍手が起こった。
見た所博宮先生と対をなす厳しそうな先生だ。
「みんなが‥‥あんた達がこの授業を楽しみにしていた様子は見ていたわ。
これからあんた達が待ちに待った異世界の授業を始めるけど、まずは今のあんた達がどれくらい異世界について知ってるか聞かせてもらうわ。」
今の僕達が、どれほど異世界について知っているか。
それはおそらくここにいる学生達のほぼ全員が、何も知らないだろう。
手保時先生は今、学生達がどれだけ異世界を知っているかを聞き出し、学生達の優秀さを見きわめようとしているんだ。
「まずこの世には今私達が立っているこの世界とは別の場所に、『異世界』が存在している。
これはみんな知ってるわね。
それじゃあこの世に世界は、いくつ存在するかしら?
分かる人は手をあげていってみなさい。」
「えっ、いくつ‥‥?」
「この世界と異世界で、二つじゃないのか‥‥?」
手保時先生が出した問いが、学生達は顔を見合ってどよめいた。
やはりみんな異世界の事はわからない人がほとんどのようだ。
僕は学生達が先生の問いにどよめく様子を、一人だまって見つめていた。
すると、一人の学生が手をあげた。
「異世界は二つ、この世界とあわせて三つ存在します。」
「‥‥お見事、正解よ」
「おー!」
一人の学生が正解を答え、学生達は拍手をした。
答えた学生は得意げに胸をはった。
「俺が答えようと思ったのに‥‥」とつぶやく学生がいる、どうやら数人の学生は異世界の知識を持っているようだ。
「答えられた通りこの世には二つの異世界とこの世界、合わせて三つ世界が存在する。
三つの世界にはそれぞれ名前が付けられているわ。
まず私達人間の多くが住んでいるこの世界は、科学の科に過程の程、世界と書いて『
『第一の世界』とも呼ばれているわ。」
名称に科学の科が付けられているのは、今の時代が高等科学に包まれている事をあらわしているのだろう。
「次に皆さんが気になってしょうがない異世界の一つ目、名前は魔物の魔に合唱の唱と世界で『
僕達が目指している異世界の内の一つ、『
気になったのは、異世界の名前の漢字。
魔物の魔に合唱の唱、魔唱世界。
例えの魔物も気になるし、『魔を唱える世界』、
この名前が表す事は‥‥
「
「異世界に、異種族が住んでる‥‥!?」
「兎人族って、うさみみかな‥‥?」
博宮先生に知らされた異種族の存在に、学生達はどよめいた。
僕も異世界に異種族が住んでいる事『は』知らなかった。
「はいみんな静かに。
そしてこの世に存在する異世界の二つ目、
「おお‥‥!」
手保時先生によって知らされる二つ目の異世界に学生達は少し沸き上がった。
二つの世界が交わる、若者なら興奮する話しだろう。
僕もその一人だった。
「えー、『第三の世界』
「待って博宮先生、
「えっ、先に映像を見せるんですか?
あの映像で学生さん達は『第三の世界』を理解出来るでしょうか‥‥」
「わからない事は私達が教えればいいわ! それが先生の役目でしょ?」
「わかりました! それでは、これから皆さんには一本の『映像』を見てもらいます。
この映像にはかつて
「あんた達が知りたがってる情報もあるから、みんな注目して見るのよ!」
「それでは皆さん、ステージのスクリーンをご覧下さい。」
先生二人が横に移動すると、体育館のステージにスクリーンが現れた。
このスクリーンに二つの世界の開通の歴史と、第三の世界の誕生の歴史を記す映像が写しだされる。
学生達はこれから知らされる世界の全貌を前に、ドキドキとワクワクですでに最高潮だ。
体育館の照明が消えた、まるで映画が始まるかのようだ。
「‥‥それでは、世界の開通と誕生の映像を流します!」
「異世界を知らない学生達よ、心して見なさい!」
博宮先生が手を上げ、パチン!と指を鳴らした。
その合図でスクリーンに映像が流れ始めた。
映写機の音と共に始まる映像。
それは当時中学生で異世界をまだ何も知らなかった僕達にとって、想像を越えた物だった。
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