第0.5話 中学、異世界に関わる授業
卒業式を終えて、小学を卒業した。
卒業式の翌日からは、約三週間の春休み。
学生達は友達と遊びに行ったり、旅行に行ったりしたらしい。
僕はというと闘嵐君、いや颯杜君と連絡を取り合いながら家で課題をこなしてのんびり過ごした。
闘嵐君と連絡を取った時、闘嵐君に「俺達もうダチなんだから名前で呼び合おうぜ」と言われ、颯杜君と呼ぶようになった。
そしてあっという間に三週間が経ち、中学の始まりの日を迎えた。
▽▽▽
僕達は中学生となって校舎は中学棟になり、新たな教室、メンバーで新たな授業を受ける。
新年度の始業式を終え、僕達は新しい教室に向かった。
僕は三つ存在するクラスの二番目の教室に入った。
小学の頃からの雰囲気が残る広い教室、そこに二番目のクラスに所属する学生達が次々と入ってくる。
僕はどこの席か、誰と一緒かを知るために、教室の黒板に示された座席表を確認する。
自分の席を確認し、一人ずつ配置される名前を読み上げる。
そこで、僕は見覚えのある名前を見つけた。
「あれ、颯杜君が一緒のクラス‥‥」
「おーい、蒼人ー!」
颯杜君の名前を見つけた所で、颯杜君が僕の元にやって来た。
「颯杜君! 君もこのクラスに入ったんだね。」
「おう、まさかお前と一緒のクラスになるなんてな! これから一年、よろしく頼むぜ!」
「全員揃いましたかー? 皆さん、席についてくださーい!」
颯杜君とあいさつした所で先生が学生に呼びかけ、HRが始まった。
最初のHRでは担当する先生の紹介と、中学から入る教科の説明を受けた。
まずは担任の先生の紹介と、新しく入る教科の説明だ。
クラスの担任の先生は特に語る事の無い普通の先生なので省くとして、次に新たな教科についてだ。
数学や英語の教科は良くある中学の授業だが、この時代の教科で特出するのは、[異世界に関する授業]が存在することだ。
[異世界に関する授業]は大きく分けて二種類存在する。
[異世界座学]と[異世界体育]だ。
[異世界座学]は国語や数学の要領で、座学で異世界についての知識を学ぶ授業だ。
異世界座学では主に異世界の常識や歴史について学ぶ。
異世界は地球とほぼ同じぐらい広く、時代も長く続いているので、教わる事は多い。
そして[異世界体育]は異世界で活動するための体力を身につける授業だ。
異世界では数多くの場面で[自分が武器を持って戦う]時があり、いつか自分達が異世界の地に立った時にいついかなる相手でも戦えるようになるために、通常の体育では学ばない体の動きや[武器]の扱い方を学ぶ。
僕達は異世界に関わる二つの授業を学び、異世界の地で活動してゆくための力と知識を身につける。
そしていつか僕達は力と知識を持つ大人になり、自らの意思で本当の[異世界]に立つのだ。
異世界に関わる二つの授業の説明を聞いた学生達は、期待に満ちたざわつきを見せていた。
小学六年生の時から、異世界の存在は学生達の中で盛り上がりを見せていた。
「小学を卒業すれば、異世界の授業を受ける事が出来る」
「夢にまで見たあの異世界を学ぶ事が出来る」
と、卒業を控える学生達は異世界の授業の話題で持ちきりになっていた。
そして始まった中学、待ちに待った異世界の授業に学生達の期待感は最大にまで上がっていた。
「最初のHRは以上です。休み時間の後授業が始まりますので、皆さん授業の準備をして下さい。」
授業の説明がすむと、最初のHRが終わった。
学生達が「異世界の授業はいつ始まるのか」と担任の先生に聞くと、
「今日の給食の後、午後の五・六時間目に異世界に関する授業のオリエンテーションがあるので、覚えておいて下さい。
ちなみに、オリエンテーションは全クラス合同で行います。」
と答えた。
どうやら異世界の授業は午後までお預けのようだ。
学生達は飼い主にご飯をお預けにされるペットのように、がっかりしたりウズウズしたりしていた。
チャイムが鳴り、午前の授業が始まった。
学生達は中学の授業に取り組んだ。大体の授業は教科の説明だったり小学の授業のおさらいだったので、学生達は難なく授業をこなした。
そして給食を取り、あっという間に異世界の授業前の昼休みになった。
学生達は異世界の授業の期待感にざわつきながらクラスメイトと会話を楽しむ。
その中で僕は2組の教室の中で颯杜君、鳴日さんと三人で集まっていた。
「鳴日さんのクラスは1組だったかな?」
「うん、想為君と闘嵐君は一緒のクラスだったんだね」
「まあな、同じ土俵の上で競うライバルとして、授業のランキングトップはゆずらねえからな、蒼人!」
「争い事はほどほどにね、颯杜君。それにしても‥‥」
僕は二人に促すように辺りを見渡した。
教室の中に居る学生達はすでに授業の準備を終え、チャイムが鳴るのを今か今かと待ちわびている。
「みんな異世界に熱中してるんだね」
「そりゃそうだろ、あの異世界だぜ? 冒険と発見に満ちた異世界に行けるとあっちゃあ、みーんなはしゃぎまわっちまうぜ」
「そっか‥‥」
「お前も異世界が楽しみだっただろ、蒼人」
「うん、でも僕達子供はまだ異世界を何も知らない、何があるかわからない世界に行くのが楽しみなのは僕だけだと思ってたから‥‥」
自分の知らない場所、知らない世界に足を踏み入れる事は、恐怖がともなう。
僕も最初は異世界に向かうのが怖かった。
早い内に異世界への恐怖を克服して、今異世界が楽しみなのは僕だけだと、当時の僕は思っていた。
「そうか‥‥」
「‥‥二人は異世界の事、どう思ってるの?」
「俺達か? 俺はお前と同じで楽しみにしてたぜ。なぜなら俺のこの体に宿った有り余る筋力は、異世界に出て初めて本領を引き出すんだからな!」
「颯杜君は小学から体力が自慢だったもんね、君らしい答えだよ。それじゃあ‥‥鳴日さんは?」
「‥‥‥」
鳴日さんに異世界の事を聞くと、鳴日さんは口をつむいでうつむいた。
その顔は心配と不安に満ちていた。
「その顔は楽しみって感じじゃねえな」
「‥‥鳴日さんは、怖いの? 異世界へ行くのが」
「怖いってわけじゃないの。でも、不安なの‥‥」
「心配‥‥」
「これから学ぶ異世界はどんなところなんだろう、異世界には何があるんだろう、もしかしたら、危険な事があるのかもしれないって‥‥」
「光差‥‥」
「それに異世界には‥‥異世界にもきっと、色んな人達がいる。強い人も、厳しい人も、‥‥話しを聞いてくれない人も。そんな人達を前にしてみんなは‥‥私は、ちゃんと答えられるのかな‥‥ちゃんと胸をはって話しあえるのかなって、心が不安でしょうがないの‥‥」
「‥‥‥」
この娘は‥‥鳴日さんは、異世界に歩みを進める不安を僕達に隠して、ずっと一人で不安を抱えていたんだ。
僕達に、心配させないために。
「‥‥鳴日さん、心配は要らないよ」
僕は鳴日さんに、優しく語りかけた。
鳴日さんは、やっぱり良い人だ。
だから異世界への不安を、一人で抱えないで欲しい。
「確かに異世界にも、どんな世界にも沢山の人がいる。
強い人も、厳しい人もいると思う。
その人達とちゃんと話しあえるかは、わからない。
でもど世界にも色んな人がいて、心やさしい人達もきっといるはずだ。
どんなに時間がかかっても、異世界の人達ともきっと分かりあえると思うよ。
今この世界と異世界が共存しているのがその証拠だよ。」
「想為君‥‥」
「そうだぜ光差、それにお前には俺達がついてるじゃねえか! 異世界に何があるかはわからないが、どんな事があっても強くて優秀な俺と蒼人がそばにいれば、何があっても怖くねえだろ?」
「闘嵐君‥‥」
「大丈夫、何があっても僕達が、みんながついてる。
だから安心して、一緒に異世界の授業を頑張ろう。」
「‥‥うん、ありがとう。」
そしてチャイムがなり、ついに異世界に関わる授業の時間になった。
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