第0.4話 小学卒業、進む道

僕は鳴日さん、闘嵐君と友達になり、 学校の時間を三人で一緒に過ごすようになった。

授業の合間の休み時間、授業が終わってからの放課後の時間、僕達三人は同じ時間を一緒に過ごした。


僕達は一緒に過ごす時間に、色んな話しをした。

好きな事は何か、どんな科目が得意か、家では何をしてるか。

僕達三人は余暇時間の合間に様々な情報を共有した。

僕は闘嵐君と鳴日さんに自分の事を興味津々に聞かれ、答えていった。


ほとんど楽しい出来事が無かった小学時代にお互いを良く知らない友達と、知ってる事や知らない事を語り合うのはとても楽しかった。

特に「この三人だけの秘密」と称して僕に関する秘密にしてきた事を二人に話して、話すたびに驚く顔をする二人の顔を見るのは、いつまでも飽きなかった。


そして闘嵐君にはすでに友達になっていた人が数人いて、僕は闘嵐君の友人達とも関わる事になった。

その人達はほとんどが僕に憧れを持つ人達で、僕がその人達と遭遇して軽くあいさつをすると、いわゆる[黄色い声]が響いた。

彼らは後に僕を支持する人達に加わり、僕の非公式の[ファンクラブ]のメンバーに入る事になる。


そんなわけで小学五、六年生時代は楽しく過ごし、小学の卒業式の日を迎えた。


卒業式に関しては泣いたり眠ったりしてる人がいたけど、僕は前日しっかり寝て起きてお目覚めぱっちりで卒業式に取り組んだ。

先生の話しは先生自体が印象に残って無いのでほとんど聞き流したが、唯一校長先生のお話は最後までしっかり聞いていた。


放課後、卒業生が卒業証書を手に先生、学生達と別れを告げながら、校舎を後にする。

僕はというと、玄関を出た途端僕を支持する学生達の集団に囲まれていた。


「想為さん、進学おめでとうございます!」

「想為さん、あなたの活躍をそばでずっと見ていました!」

「想為さん、中学生になっても更なる活躍を期待してます!」

「あ、ああ、ありがとう、ございます…」


僕は学生の集団にもみくちゃにされ、対応に困っていた。

そこに助け船と言わんばかりに、闘嵐君が友人を引き連れてやって来た。


「おいお前ら、蒼人が通れないから道を開けてやれ。」


闘嵐君が集団に声をかけ、僕が通れるように道が出来た。

闘嵐君は開いた道のまん中を堂々と歩いて来た。


「よう蒼人、卒業式お疲れさん。」

「闘嵐君、来てくれてよかったよ。鳴日さんはまだ来てない?」

「まだ来てねえが、もうじき支度が出来る頃だろ。おっ、噂をすれば‥‥」

「お待たせしましたー!」


鳴日さんが玄関を通り、僕達の方に駆けて来た。

友達三人組が揃って、僕は安心感に包まれた。


「鳴日さん、卒業式お疲れ様。」

「お、お疲れ様です‥‥!」

「いやー、小学時代ももう終わりかー」

「六年間、長いようであっという間だったね」

「‥‥おっと、長居は無用だな。じゃあ俺は二人と一緒に帰るから、後の事は頼んだぜ! よし、行こうぜ二人共!」


闘嵐君は友人達にその場を任せ、僕達を校舎から連れ出した。

闘嵐君の友人達は自分達の扱いにやれやれとした顔を浮かべていた。


家への道を歩く僕達三人。

空は青く、カラスがカアカアと鳴いている。


「それにしても小学の六年間、まさに長いようであっという間だったなあ」

「‥‥二人はこの六年間で、何が記憶に残ってる?」

「記憶に? そうだなあ‥‥俺は運動会で1000m走トップを勝ち取ったことかな!」

「君の体力は無尽蔵だよね、羨ましいよ」

「私は修学旅行かな。二泊三日で道内を回るのはとても楽しかったな」

「そっか。二人共良い記憶を持ってるね」

「そう言うお前は、この六年で何が記憶に残ってるんだ。」

「それはもちろん‥‥」


僕は二人の前に立ち、振り返って言った。


「君達二人と、友達になれた事だ」


僕は恥ずかしげも無くそう答えた。

僕の言葉を聞いて、二人は少し顔を赤くした。

うん、良い反応だ。


「お前なあ‥‥そういうハズイ事を堂々と言うなよな」

「恥ずかしがる事じゃないよ。

あの時二人が僕に声をかけてなかったら、僕の小学生活は退屈な物になっていただろう。

だから君達二人には感謝してるよ。

ありがとう、僕を仲間に入れてくれて」

「蒼人‥‥」

「想為君‥‥」

「‥‥さて」


二人に感謝を伝えた所で、僕は話題を変える。


「小学を終えて中学に入ったら何があるか、わかってるかな?」

「何がって‥‥ああ、[あれ]か」

「そう、[あれ]だ。僕達は中学で[あの場所]で活動するための知識と力を身につける事になる。」

「正直、いまだに信じられないよな。まさか[あの世界]が本当にこの世に存在するなんてよ」

「昔の人はきっと、誰も[その世界]の存在を信じようとはしなかったわ。[この世界]の人類が、[その世界]を実際に眼にするまではね」

「そう、そして今の時代を生きる僕達は、いつの日か[あの世界]に足を踏み入れる事になる。

その日のために僕達は、どんな世界でも活動してゆく力を身につけなきゃいけないんだ」

「なるほどなあ‥‥」

「僕はね、ワクワクしてるんだ。これまで長い時間をかけて知識を付けて、ようやく[あの世界]に触れる事が出来る。

[あの世界]には沢山の未知や冒険が広がっている。

僕は今、一刻も早く[あの世界]の地に立ちたくてウズウズしてるんだ。」

「なるほど、待ちきれねえって事だな。

っと、交差点に着いた。二人共、ここで別れよう。」

「うん。それじゃあ二人共、次会う時は‥‥



[異世界]を学ぶ者同士だ」

「おう!」

「うん!」


僕達は、三人で拳を突き合わせ、それぞれの帰路に着いた。


‥‥[異世界]。

それはこの地球とは別の場所に存在する世界。

僕達、この世界の人類は、異なる時空に存在する[異世界]の存在を確かめ、その存在に触れ、その地に脚を踏み入れる事に成功した。


そして今この時代、人類は[異世界]と[もうひとつの世界]を開き、[三つの世界]を果てしなく巡る。


[三つの世界]の名は‥‥


[三億世界さんおくせかい]。

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