第20話 ねずみ顔の情報屋
♰
不夜城とも呼ばれる一帯は、まだ、開店前で、ひっそりとしていた。
電飾が灯っていない看板の横から、細い路地に入ると、そのビルの裏に、地下に下りる階段があった。
フラグは、ユウカから受け取った紙袋を持って、その階段を下りる。地下には、腕にタトゥーを入れた
「なんの用だ? 名前は?」
「井出フラグ。五時半に約束している」
男は、ドアのある方にアゴをクイッと上げた。入れということだろう。
中に入ると、チープなテーブルが一つあり、その向こうに、ねずみ顔の男が座っていた。
「あぁ、フラグさん。こりゃ、どうもどうも。お待ちしておりましたよ。ささ、座って、座って」
ここは、情報屋のアジトだった。
フラグは、日南のことが気になってしまって、情報屋に日南の彼氏のことを調べさせていた。
どれほどのDVをしているのか、同じような遍歴がないのか、今日、調査結果を貰えることになっている。
「早速ですけど、これが、報告書ですわ」
ねずみ顔の男は、メモの書かれた用紙を、テーブルに置いた。
フラグは、その紙を取り上げて、読む。
「結果は、白でっせ。真っ白ですわ」
報告書には、結論の欄に『彼氏なし』と書かれていた。
「どういうことですか? 日南さんには、彼女を拘束する彼氏がいるはずなんですが」
「そんなん、おりまへんで。間違いおまへん。本人が、そう言ってるのなら、そりゃ、狂言のたぐいか、妄想か、どっちかですわ」
頭の中が、真っ白になった。
フラグは、日南から、二度もアリバイ作りの依頼を受けたし、決して安くない代金ももらっている。
なのに、彼氏がいなかったという調査結果が出たのはなぜなのか。
報告書には、日南に関する情報の記載もあった。
『職業:WEBメディアの記者。UMA班のリーダー。現在は、謎の天才数学者を追っている』
「記者? 日南さんは、記者だったんですか? 彼氏の件が嘘だとすると、ボクのことをさぐりに来ていたということ? な、何が目的で、ボクのところに来たんですか?」
「それも調べたんですけどね……。ちょっと、これだなっていう確実な理由はわかりませんでしたわ。残念やけど……。ただ……」
「ただ?」
「フラグさんのお父さん、
「は、はい。それが、何か?」
「彼女がフラグさんに興味を持つとしたら、一点だけ……そこぐらいしか」
「えっ? そ、それは、どういうことですか?」
「彼女が追っている天才数学者が働いているのが、
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