第18話 UMA班が追うもの
「飯島君は、今、何を追っているの? 取材がピークだって、言ってたけど?」
「なぞの数学者です」
芽衣が話題を変えると、飯島からは思いもよらない答えが返ってきた。
「え? 飯島君って、
「そうですよ、確かに。でも、ある意味、その数学者も未確認生物なんです」
飯島が言うには、追っている数学者は、『ミス・ハナ』とだけ名乗り、顔も名前も公表していない謎の日本人女性だという。そのミス・ハナが、学会誌に投稿した論文が、九十年前に提示されたコラッツ予想という未解決問題を証明できているかもしれないということで、今、話題になっているらしい。
なんでも、その未解決問題には、一億円以上の懸賞金が駆けられているそうだから、当然だろう。
現在は、世界中の天才数学者たちが、彼女の証明論文を検証していて、本当に、解けているかどうかは、立証されるまで、あと数カ月はかかるみたいである。
「ふーん……ミス・ハナね……。確かに、謎めいた人物だけど、かなり、
「そ、そうですね。ただ、それは、置田編集長も了承の上なので……。っていうか、むしろ、編集長の方から、提案してきた案件ですからね」
芽衣のことを軽くあしらった置田の顔が浮かぶ。
普段から、芽衣らサイエンス班には、特に興味が無さそうなのに、UMA班には積極的に関わっているようである。
「ふーん、あの編集長が……。そうなのね……」
「それで、取材がピークって言ったのは、ついに、先日、独自インタビューに成功したんですよ。ミス・ハナに会うことが出来たんです」
「うそ? 本当に? 世界初なわけでしょ? よかったじゃん」
「はい。情報屋を介して、段取りしてもらったんですけど、はっきり言って、異様でしたね。あんな取材、初めてでした」
「へえ、どんなふうに?」
「指定された場所が、ラブホテル街の中の常夜灯だけの暗い部屋で、電気を点けることすらNGと言われたんです。もちろん、写真を撮ることもNGです」
ミス・ハナからすれば、顔も公表していないから、はっきりと見られたくなかったのだろう。
その意図するところは、想像に難くない。
「日南さんと二人で取材したんですけど、ミス・ハナは、発表した論文に関する質問にはスラスラ答えてくれたんですけど、本人自身のことは一切教えてくれないんです。かなりの切れ者で、天才だということは、話す内容や素振りで、すぐにわかったんですけど、人間のように血が通っているようには思えなかったですね。偏見もあったかもしれないですけど」
「偏見? そんなのが、あったの?」
「そうなんです。実は、彼女のインタビューをアテンドしてくれた情報屋が、事前に教えてくれたんです。彼女は、人間じゃなくて、AIロボットじゃないかっていう噂があるって。SF映画みたいですよね、ハハハ」
「ほぅ。なかなか、興味深い話ね。なんか、根拠でもあったのかな?」
「情報屋いわく、彼女が働いているのが、
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