青空ベンチ ~万年ベンチのサッカー少年が本気で努力した結果こうなりました~

青空

小学生編

第1話 才能無いからやめろ

日本サッカー協会は「公式試合数を増加させ、試合によって選手が成長することを期待する」という方針を打ち出し、リーグ戦を増加させた。


その結果、以前は夏開催だった全日本少年サッカー大会が冬開催になり、予選の必要条件として通年リーグを必ず伴わなければいけないことになった。


沢山の試合を経験しサッカーを楽しむ子供達の裏でただベンチの時間だけが増えた子供達がいる。



「がんばれー。がんばれー。」

「がんばれー。がんばれー。」


僕は朝からずっと大きな声を出している


ベンチから…


僕の名前は青井空

小学校6年生

3年生からサッカーをやっている

ポジションはと言うと…

ほとんど試合に出た事が無いので

それを聞かれるとちょっと辛い

今日は地区の大会でもちろん僕は

朝からずっとベンチだ

この話はそんな僕の物語である



「何やってんだ。やる気あんのかよ。」


横から佐々木コーチの怒鳴り声が聞こえる

負けている時の佐々木コーチはメチャクチャ機嫌が悪くてずっと怒鳴っている


今日は1試合目0対3、2試合目1対4、そして今の試合が0対2で負けているので不機嫌度はMAXだ


ピッピッピー


試合終了のホイッスルが鳴った

「整列、例。」

「ありがとうございました。」

みんなで挨拶をした後すぐに佐々木コーチは背中を向けて歩きだした


「前半のシュート惜しかったな」

「1点目は止められたよね」

レギュラー達が色々話してる後ろから僕達ベンチ組も付いて行く


「俺達また出れなかったな」

同じ6年でベンチ組のトモキが言った


「次こそ出れる様に頑張ろう」

僕は明るく言ったがトモキは下を向いた


みんなで佐々木コーチの所に着くと

「来月も試合があるからみんな5分でも良いから毎日ボールに触る様に。じゃあ解散。」

「ありがとうございました。」


みんなで挨拶をして各々帰って行く


毎日5分どころか1時間は触ってるんだけどなぁ

なかなか上手くなれないなぁ

僕は心の中で思った



帰りの車の中

「今日も1度も出れなかったなぁ…」

心の中で言ったつもりが声に出してしまった様だ


「空、サッカー楽しい?」

母さんが少し悲しそうな顔で言った


「楽しいよ。今日も楽しかったよ。」

僕はあたりまえの様に言った


母さんはホッとした顔で

「じゃあもっと楽しくなる様に頑張ろうね」

と言ったので僕は二つ返事で

「うん。」

と言った


僕はみんなといるのが好きで試合は出れないけど本当に楽しいんだ



家に着くと父さんと弟のカイが庭でサッカーの練習をしていた

弟は僕より3つ下の3年生ではっきり言ってサッカーが上手い

僕が10回練習してやっと出来る事を1、2回で出来てしまう

きっとこういう子が天才って言うのかな


試合から帰ると必ず父さんは聞いてくる事がある


「今日は試合出たか?」

僕は1度も出てない事を伝えると

「才能無いからサッカー辞めろ」

と言ってくる


僕はすかさず

「辞めたくない」

と言い父さんもすかさず

「辞めないなら死ぬ気で練習しろ」

と強い口調で言ってくる


「さぁ行くぞ」

と言って近くのグラウンドに父さんと2人で練習に行く


試合の後の儀式みたいな物で毎回この繰り返しだ

こうやって父さんはいつも僕を傷つける…


グラウンドで1通り練習が終わるといつの間にか2時間位経っていてあたりは真っ暗だ


「練習をする前と今、間違いなく成長してる。練習の成果はすぐ出ないかもしれないけど上手くなってるからな。」


さっきまて辞めろって言ってたけどいつも結局は応援してくれるから僕は父さんの事は嫌じゃない


父さんはサッカー経験者じゃないのに色々な練習方法を知っていて不思議な人だ

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