エピローグ

 防衛都市国家グラネロの建国を周辺都市に発表したあとのことだった。

みんなで夕食を摂っていると、マルヴィナがふと何か気になったようだ。

「ところで、グラネロって何が由来なんだろう」

「このへんの地名かな?」

とヨエル。

「この辺にそんな地名は無かった気がするけど……」

とモモ。モモが言うからにはそうかもしれない、と夕食のあとに食堂に地図を持ってきて確認することになった。

「あれえ、やっぱそんな地名ないなあ」

砦内にあった地図をいくつか持ってきて確認したが、グラネロなどという地名はない。

「そもそもなんでグラネロ砦だったの? 誰か知ってる?」

そこにいた、ミシェル、二コラ、クルト、エマド、そして百人以上の砦のメンバー。誰もそれを知らないという表情だ。

いや、一人だけ、なぜか青い顔をしている人物がいた。ひげ面のエンゾだ。

「エンゾ、青い顔をしてどうかしたの?」

マルヴィナが聞くが、そんなことはありませんと冷や汗をハンカチで拭くエンゾ。

「あ!? そういやあ」

エマドが急に大きな声を出した。

「エンゾって、エンゾ・グラネロだったような……」

そこまで言ったところで、マルヴィナが怒り出した。

「自分の名前を……、なんで先に言わないの?」

他にいい名前いっぱい考えていたのにと文句を言うが、エンゾは顔を赤や青に変えながら口をパクパクさせている。

「もう公表しちゃったし、今さら変えるのも」

「旗にも全部名前入れちゃったし」

他のみんなも状況を理解して、失敗したなあという表情で頭を抱えたり顔を手で覆うのだった。

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マルヴィナ戦記 神聖屍道士と獄炎の剣士 黒龍院如水 @Josui

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