第308話【おまけSS】辺境伯令嬢、秋のイベント

 15歳の成人式を終えた、とある秋の日。

 近場の林に翼猫とお散歩がてら遊びに行ったら落ち葉が綺麗だった。


 赤と黄色と葉の裏のくすんだピンク色とか混ざり合って木の下は鮮やかな花畑みたい。


 思わず記録の宝珠で記念撮影をした。


 お散歩から帰って、晩餐の時に私は要求をやおらきりだした。



「お父様、お母様、せっかく秋ですし、秋らしいイベントをしようと思います」

「収穫祭があるじゃないか」



 お父様の言葉はもっともではあるけど、



「それも大事ですが、芋掘りをしたくて」

「芋掘り!? ティア、それは成人式を終えたレディーのすることではないでしょう」


 お母様の言われる事はもっともだけど、ギルバート殿下もしばらく王城におられるし、ちょっとくらいはいいのでは?



「人生の楽しみというか、季節の行事は大切にしたいのです」

「貴族令嬢の季節の行事に芋掘りは無いのよ」



 う! 相変わらずのお母様のクールなツッコミ!



「そこをなんとか! 美味しいスイートポテトも作れるんですよ!」


 私は食い下がった!


「まったくこの子は……」


 お母様が呆れる。


「そうだ!」成人のお祝いに許してください!」

「成人の祝に芋掘りだなんて斬新過ぎるぞティア」


 お父様も呆れはしたけど、


「少しだけでもいいですから、目立たないよう変装もしますからっ!」


「仕方ないな」



 変装発言のダメ押しが効いた!?



「あなたったら、娘に甘いのですから」

「俺が付き合うから、シルヴィアはウィルを見てやっててくれ」



 二歳も過ぎたら弟も芋掘り可能な気はするけど、貴族は普通は土なんかに触らないものね。

 誘ったらお母様にまた反対されそうだから、ごめね、ウィルも、もう少し大きくなったらね。



「仕方ないですね」



 折れてくれた!!

 やったー! 小学生の時の学校イベントの芋掘り体験は楽しかったから、またやりたかったの!!


 * * *


 そんな訳で紫いもと言われるこちらでのサツマイモを収穫する日。

 畑に来ました!

 ちなみにリナルドは私の肩の上。


 これぞリアル収穫祭よ!! と、私は汚れてもいい服、ズボンを履いて、手袋をし、ゴム長靴の代わりのブーツ。

 茶髪のアリアに変装し、芋掘りを開始することにした。


 あらかじめ、葉やツルを畑の持ち主が撤去してくれている。

 葉っぱを刈ってよける作業を終わらせてくれてる心遣い。


 だから今から掘る畑の様子はほぼ茶色で、たまに取り残した緑の葉っぱが見える状態。



「さて、どのくらいの芋が出てくるかしら!?」

「どうぞ、スコップです」



 女性護衛騎士のラナンが柄の長いスコップを渡してくれた。



「ありがとう!」

「さて、どこに芋があるのか予想してスコップを土に……あ、畝が高いとこはたいていそのまま下で、低いとこは左右のどちらかです」


 農場主に言われるまま、私もやってみる。

 イモのツルを目安に畝の端っこにスコップをざくっとするため、スコップの端に足を置いて体重をぐっとかける。



「さあ、芋を傷つけないよう、土を揺らして……どこにいるかな?」

『左だよっ!』



 リナルドのナビ通り掘り当てた!

 カセキの発掘作業みたいに土をどかし、一つのツタからなるものを持ち上げたら複数の芋が出てきた!


 大きい芋がついてる!

 大きさに違いはあるけど七個はついてる!



「わあ! これはなかなか見事な大きさでは?」

「やりましたね! お、いや、アリア、さん!」



 お嬢様! と言いたいとこをレザークは堪えた。今は変装中でアリアなのでね。



「うふふ、ありがとうレザーク」

「楽しそうで何よりだ」



 お父様はフードを目深に被り、側にて見守りつつ微笑んだ。

 私だけ変装してもあんまり意味がないため、冒険者風の出立ちでフードを被っている。


 一般的にさつまいもの大きさは縦23.5cm、横6.2cmが大サイズだし、私が掘り当てた大きいものも、そのくらいはある。


 しばらく芋掘りに熱中し、大小色んないろんなサイズの芋がとれた!


『おめでとう、ティア』

「ありがとう、リナルド! これでスイートポテトと大学いもが作れるわ!」


「満足そうだな」

「はい! お父様!」


 畑から帰宅してから料理長にレシピと芋を預けた。

 キッチンで指導をしつつ覚えてもらった。


 ややして料理完成! 

 食堂に運んでもらった。


「これは甘い芋のおやつです」


 大学芋と言っても通じないから呼び名に困るな、どうしよう。



「ほんとに甘いな、外がカリカリで飴が絡まっているようだ」

「蜂蜜とゴマと砂糖などを使っています」

「ティア、それでこれは何と言う料理なの?」


「は、蜂蜜を使ったのでゴマ蜂蜜芋とでも」

「ゴマ蜂蜜芋か」


「こちらはスイートポテトです」

「こちらも甘いくて美味しいな、優しい甘さだ」

「秋らしくていいわね、美味しいし」

「このスイートポテトにアイスを沿えても多分美味しいのですが、既にゴマ蜂蜜芋という甘味もあるので、アイス添えはまた次回に」


「まあ、楽しみね」



 お母様が美しく微笑んだ。


 ちなみにこれらは芋掘りを手伝ってくれた騎士達にもおやつとして振る舞われてる。


 そんな感じで、今回はほのぼのと秋の味覚を堪能した。

 ご馳走様でした!

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