第282話 高山ピクニックと星の川
最寄りの神殿までは朝早くから転移陣で行って、それから翼猫やワイバーンで山の花畑ゾーンまで飛ぶというスケジュール。
今日は山なのでコーデはパンツルックだ。
私とリーゼがアスランに同乗し、ラナンは船でレイナートを乗せて来ている。
神殿の転移陣使用料は私が神殿の宝珠か聖杯に光の魔力を注げば無料になるらしいので、喜んで協力をする。
「では、この聖杯に魔力を注ぎますね」
「よろしくお願い致します」
神官に宝珠か聖杯どちらでも良いと言われたので、触ってみたかったという理由で聖杯を選んだ。
光の魔力を注ぐと、聖杯の外側に埋め込まれている宝石が魔力を貯め込んでいるようだった。
聖杯はほのかに光を纏った。
「このくらいでいいでしょうか?」
「はい、ありがとうございました」
魔力を注ぎ終わって、聖杯を神官に返して、マントを付けたリナルドのナビで山へ出発。
『あの辺が花畑だよ〜〜』
わあ、下に綺麗な花畑!
黄色の百合っぽいのとパールカラーの百合っぽいのが咲いている。
そして、断崖絶壁、崖の方には綿毛を飛ばすタンポポに似たフワールと言う花が咲いている。
「綺麗ね〜〜」
思わず首から下げた宝珠のクリスタルを握って、花畑の撮影をする私。
何処からともなく鳥の囀りも聞こえる爽やかな朝。
時おりいい風が吹いてて、崖の方から綿毛が飛んで来る。
ふと見ると、亜空間収納の布からギルバートが虫取り網っぽい物と袋を取り出していた。
「皆! この網でフワールの綿毛を集めて、この袋に集めた綿毛を入れて欲しい」
「はい! ギルバート様!」
「はーい! じゃあ綿毛集めの後でこのお花畑でお弁当を食べましょう」
私も元気よく返事をした。
「ああ。とりあえず私は綿毛を集めて来る!」
「ええ」
騎士達も皆、虫取り網のような物を装備した。
網を持って綿毛を追いかけるギルバートや騎士達の姿がなんだか面白い。
夏休みの少年少女が蝶々を追いかけてるみたい。
「ふふ、皆、可愛い」
さて私も綿毛を追いかけて集めよう。
しばらく綿毛取りに夢中になった。
その次に自分用にもお土産用にもキスゲのような黄色い花とパールカラーの百合、パールリリーを集めた。
ギルバート達はスコップを持って根っこごとパールリリーを集めているようだった。
どこかに移植するのかな。
うちの庭園でもこれって移植すれば咲くのかな?
高山とは違うから無理かな。
まあ、お母様へのお土産と祭壇用と自室用が有れば良いかな。
私はしばらくお花摘みに夢中になった。
自分の持ち帰り用のを摘み終え、私はインベントリからピクニック用の敷き布を5枚ほど出して、花を避けて草の上に敷いて、端っこに重しの石を置いた。
風に飛ばされないように。
そして更に、インベントリから手洗い用のお水の入った樽を用意した。
お水の樽だけ、水が流れるので、敷き布から離れた所にテーブルを置いて、そこに設置。
下に受け皿代わりの桶も置いた。
手を洗ってからインベントリからトレイを出して、お弁当と飲み物をセットした。
「そろそろお弁当タイムにしましょう! 皆、手を洗って来てね!」
その辺にバラバラに散って花集めをしている騎士達に声をかけた。
「「はーい!!」」
皆が良いお返事をくれた。
「今日のお弁当の中身は何でしょう?」
リーゼがワクワクして聞いた。
「とうもろこしとツナの炊き込みご飯と海老フライとミニハンバーグとソーセージと卵焼きよ。
デザートには赤葡萄、トマトとブロッコリーとレタスのサラダも別に有るわ。
あ、おやつはチョコレートよ」
ほぼ、お弁当の定番メニューだ。
飲み物はレモン水。
「わあ! 私の好きな物ばかりです!」
「エビフライだ。やった」
皆、お弁当を見て嬉しそうにしてる。
ポーポー、ポッポーと言う、キジバトっぽい鳴き声も何処からか聞こえるのどかなお昼。
「とうもろこしがプチプチしてて美味しい。優しい味だ」
「とうもろこしとバターのご飯にツナまで入っててお得ですね」
皆と綺麗な花畑を眺めながら、美味しくお弁当をいただいた。
お花を摘んでいる時、何故かギルバート達がこそこそしてた気がするけど、何なのかな?
とりあえず、ちゃんとお花畑に連れて来てくれたからいいけど。
最寄りの神殿へと帰りがけに、山の麓付近に数人の山賊に襲われている商人に出くわした。
当然、助ける為に少し離れた所に降下する。ワイバーンは目立つから。
現場に駆けつけたら、商人は荷台の後ろで震えている。
そして山賊が私達を見た。
「お、ずいぶん綺麗な女の子がいるじゃねえか! プラチナブロンドだ! これは王族や貴族にも売れるレベルだぜ!」
「お頭、俺、こんな綺麗な女、初めて見ましたぜ! 逆に売るのがもったいないくらいだ!」
どうやら私を見付けた山賊が好き勝手言ってる。
商人の荷を狙っていたはずなのに私に気を取られている。
「売らせる訳ないだろう!」
「ふざけるな! 無礼者!」
ギルバートや騎士達が怒って9人ほどいた山賊達を全て叩きのめした。
凄い勢いで。
私は出番が無かった。
「衛兵が来るまで、ここに縛り上げておけ!」
「はい!」
「あの、騎士様方、ありがとうございます」
命拾いした商人がお礼を言って来る。
「荷は大丈夫か?」
「はい、おかげさまで取り戻せました。あの、第三王子殿下のギルバート殿下でいらしゃいますよね?」
「そうだが」「ご希望の火の魔石がいつくかございます。良ければ持って行って下さい」
「ありがとう。いくらだ?」
「おかげで荷物の損害が無いので差し上げます」
商人は袋に入った魔石を取り出し、無償で渡そうとした。
「それでは商売にならないだろう」
「そちらは買い取るわ。何か他に売り物が有れば見せてくれるかしら?」
火の魔石と聞いて、私も思わず会話に割り込んだ。
「美しい糸とアラクネーの糸、組紐、他は胡椒とワサビです。どうでしょうか?」
商品を出して見せてくれたので、私は即決した。
「全部買うわ」
「え、全部!?」
「荷物が軽くなるでしょう? 問題あるなら少しは残して行くわ」
「いえ、近くの村や店でまた仕入れをするので構いませんが」
「では、交渉成立ね」
「金は私が出すぞ」
「あ、ありがとうございます」
あくまで支払いを譲らないギルバートにお礼を言っておく。
「それと、せっかくワサビを入手したのでお魚を市場で仕入れて帰りたいのですが、良いでしょうか?」
「仕方ないな、では少し寄って行くか」
酢飯とお刺身とワサビでお寿司が食べたい。
その後、一応姿変えの魔道具を使いはしたけど、美形集団であるから、盛大に目立っていたけど、無事、ハマチっぽいお魚とマグロとイクラとサーモンもゲットした。
いつの間にか、この辺の市場にも魔道具冷蔵庫が普及している。
市場用には特大サイズがあった。
最近は氷の魔石だけ渡して冷蔵庫の製造販売はうちの商社に任せている。
「最近はこの魔道具の冷蔵庫のおかげで夏場でも食材が傷まなくて済むんだよ。ありがてえこった」
魚屋さんもそんな事を言っていた。
市井の皆の役にも立ってて良かった!
* *
ライリーの城に戻って、夜には屋上で家族と騎士達と、お寿司を食べた。
生の刺身が嫌な人は炙りで食べてる。
輝く星の川を見ながらの優雅な晩餐だった。
それは、星空のとても綺麗な夏の夜────
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