第270話

 初夏だし、髪を揃えるついでに長い髪を切った。

 腰くらいの長さになった。

 切った分だけ頭が軽くなった。


 せっかくなのでやはり自分用のお人形のウイッグに使う事にした。

 そしてプラチナブランドの綺麗で可愛いお人形が出来た。

 満足。


 お人形のお洋服のデザインもいくつかラフを描いて、針子さんに何着か着替えも作って貰う事にした。

 美しいレースもふんだんに使って、豪華にして華麗!


 お母様に自分のドレスもそのくらい熱心に作りなさいと言われた。

 それは……ごもっともな意見ですね。



 そしてしばらくはお茶会にて乙女ゲーイベントカフェの宣伝をしたり、新商品の靴の中敷き、足裏サポートスライムジェルの宣伝をしたり、社交を頑張っていた。


 疲れて帰って来たら、両親と弟の野苺狩りのクリスタル記録のほのぼの映像を見ながらお茶を飲んだりしている。


 本日のお茶のお供は、中央に円柱状に穴が開いた円錐台の甘いハニーケーキと、アシェルさんが森で見つけたからと、持って来てくれた丸くて可愛いヤマモモのジャムを使ったクッキー。

 クッキーの上中央にヤマモモの赤いジャムがのってる。

 前世ではいわゆるロシアケーキと言われたものに似たクッキーだ。


 ヤマモモは、柔らかな甘みに中に酸味があって甘酸っぱい。

果実の大きさは1.5cm~2cm程度の丸っこい可愛い赤い果実。

 オレンジ、レッド、ワインレッド、ブラックと、熟すと色が変わっていくっぽい。


 ヤマモモの味は桃よりも酸味があって、どちらかと言うとさくらんぼに近いと言われてる。

 種も大きめだからかな?


 赤い実の効能にはアントシアニンの成分から眼精疲労の予防や回復。

 他は抗酸化作用があり、生活習慣病にも効能があるらしい。


 お父様は酒のツマミに、ジャガイモとチーズのガレットと、そのままのヤマモモの実に塩をかけて食べている。


 ヤマモモの花言葉は、遠くからでも花粉が飛んで来るせいか、一途な恋に例えられ、「ただ一人を愛する」だったとか。


 私はクリスタルの映像に再び視線を戻した。

 ウィルが集めた野苺を美しい両親が仲良く分けて食べている姿が本当に尊かった。



 * *


 翌日の朝、目覚めたらリナルドに花冠のお礼が祭壇近くに届いているよと、教えて貰った。夏に向けてアイスの需要が増えるのを見越したのか、木の箱にぎっしりバニラエッセンスが可愛い小瓶に入れられていた。



 その他には、なんとうちの、ライリーの家族のアルバム!

 紙! フルカラーの紙! 写真! 前世で見たクオリティのしっかりした物だ。

 貼り付け式のアルバムに写真がくっついている。

 時間が経った時、無理に剥がすと破ける可能性もあるから大事に扱わないと。


 サイズはA4くらいで、5冊もの紙のアルバムが! まさしく神!


 しかもなんと、私は見た事無かった両親の愛らしい幼少期の、5、6歳時代に、眩しい16、17位の物と、素晴らしい20代前半から現在の物まで入ってる!


 私やギルバートの幼少期、4、5歳の頃の愛らしい写真と10歳位の写真とかもある。

 自分で言うけど、幼い頃の私が可愛い過ぎる。


 弟は生まれたばかりの赤ちゃん位の時の物から今の物。

 更に巻末にはリナルド、霊獣の翼猫、兎、グリフォンの写真もあった。


 私はこの神過ぎるお返しに思わず五体投地して感謝したのだった!


 神に感謝を!!



 * *


 そしてその後、アルバムの私のページを見たギルバートの反応なんだけど……。


「その、セレスティアナのページだけでも欲しいのだが」

「何を言っているんですか、ギルバート様。せっかく綺麗な本の形になっているのに、ダメです」

「く……っ。ダメか……幼い頃から……と、とても可愛いから……」

「可愛いのは分かっています」

「では、借りるだけでも!」


 まだくいさがってくる。


「借りてどうするのですか?」

「そ、それを参考に画家に描いて貰う……」


 ギルバートは恥ずかしそうにしながらもそう言った。


「もう私の肖像画を差し上げたでしょう?」

「まだ一枚しか無いし。幼い時のもいつでも見れるように」

「まさか、部屋の壁を私の絵だらけにするつもりではありませんよね?」

「ライリー城内の自室と、別荘でそれぞれ2枚ずつくらいあっても良いはずだ!」


「ギルバート様、落ち着いて下さい。

その画像をいつでも見たいなら手持ちのクリスタルに記録をすれば良いではありませんか」


 あ! その手があった! バックアップ大事!

 側に控えていたエイデンさんがいい事言った!


「それは良い考えですね、流石エイデンさん。

紙は火事によっての消失などの危険もありますし、汚損などの万が一に備えるのも悪くないわ」


「なるほど、記録しよう。しかし、それはそれとして、やはり画家にも描いて貰う」


 そう言って早速自分のクリスタルで私のアルバムのページを撮影し始めるギルバート。

 それを参考に画家に描いて貰うつもりらしい。


 ──この王子様、私の事が大好き過ぎる!



 まあでも、私もお父様の写真を引き伸ばして、ポスターかタペストリーにして壁に飾りたいとは思うから、気持ちは分かるのだった。


 推しなので!!

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