第256話

 本日は学院から戻ってから転移陣にて美肌の為にギルバートの温泉地の別荘に移動。

 温泉でお母様と合流して、美女と一緒に風呂イベント!


 でもビキニ……水着を着ているから大丈夫!

 お湯はぽっかぽかで温かい。

 極楽〜〜!


「ティア、結婚式にお金をかけなくていいとかギルバート殿下に言ったの?」

「はい、お母様。経費削減でいこうかと」

「そこは下々の者の為にある程度は使ってあげないと」


「あ……というと、平民の為に。えっと、ライリーの城下街で食事やお酒を振る舞うとかでしょうか?」

「そういうのも含めて、記念品とか」


 記念品!? 記念硬貨とか切手なんてのは無理だわ。

 私達の顔が描かれたマグカップとかもいらんだろうし、こっちもそんなの配りたくないし。

 貰って嬉しい物が良いわよね。


 生活の助けになるような……。


 ──あ、あれならば!!


「あ、じゃあ、記念品ですが、ライリーは広いし、全世帯は流石に難しいけど、片親しかいないとか、親が病気で働けないとか、孤児院とか、近くで薪が拾えないような困窮世帯に、冬に寒さで凍えずに済むように火の魔石か、太陽……熱を放出する魔石を配りたいです。

各地の教会に魔石を配って貰えるよう要請してみます……」


 各地の教会ならば困窮世帯の事も分かるのでは?

 神父さんて周囲の家庭の事を気にかけてるのを前世の海外ドラマで見た……。


「記念品が魔石……ね。それでも構わないけど、珍しい選択ね」


「空魔石か火の魔石集めます。

火魔法は持ってませんが、太陽……光魔法なら私、頑張って熱を放出する石を作りますので。

煮炊きにも使える火の魔石とは違いますが、家全体を温める事は可能かも……なので」


「まあ、いいでしょう。火の魔石と空魔石は多めに集めておきましょう」

「はい」

「…………いいお湯ね……」

「……ふあ……はい……」


「ちょっと、ティア、気持ち良いからってこんな所で寝ないのよ?

危ないでしょう。お風呂で寝たら溺れてしまうから」


「……ふぁい……」


 カクンと、私の首が揺れた。


「あ! ラナン卿!」

「我が君!!」


 お母様がラナンを呼ぶ声とラナンの声と、ザブザブお湯が波立つ感じがして、私は……寝落ちた。


 スヤァ……。



 * 


「──どうした? セレスティアナ? 長風呂でのぼせたのか?

気をつけないと駄目だろう」


 目が覚めたら別荘のサロンにある長椅子に横になっていて、ギルバートが膝枕で扇子を使い、あおいでくれていた。


 何と! 何とですよ! 知らないうちにイケメンの膝枕イベントを成し遂げていた!

 乙女ゲームならこれ、スチル有る所よね!

 びっくり!

 僥倖!


「ラナン卿が服を着せてここまで運んでくれていたぞ」

「……昨夜刺繍で……うっかり夜更かしをしてしまい、お風呂で眠くなったようです」


「刺繍は出産祝いに間に合えば良かろう。懐妊祝いにはとりあえず夜着と栄養のある食べ物などで」

「……ああ、お祝い品を2回に分けるんですね……分かりました……」


 私は今、イケメンに扇子で風を送って貰っている……優雅……。

 ほわほわとした気分になる。


「シルヴィア夫人に聞いたが、火の魔石と空魔石を集めて婚礼の記念品とするのだな?」


「ええ、空魔石には私が期日までにコツコツ光の魔力で熱を放出する石になるように、魔力を注ぎます」


「火の魔石もちゃんと集めるから、其方は倒れるまで頑張るなよ?」

「はぁい」

「信憑性のない、はい。だな……」


 うう、信用されていない……。ギルバートは苦笑いをしている。


「我が君、お目覚めですか。お水です」

「ありがとう、ラナン。……お水美味しい」


 ギルバートが背中を支えてくれて体を起こし、私はゴクリと水を飲んで喉を潤した。


「エイデン、空魔石と火の魔石はこちらでも探しておいてくれ」

「承知しました」


 側に控えていたらしき、ギルバートの側近のエイデンさんが返事をした。

 あ、そこにいらしたのね……。

 窓際でメモをとってる。


「でも集めるのは、在庫が、枯渇しない程度に……。火の魔石は冒険者も使いますよね」

「それは、そうだな」


 ギルバートは頷いて言った。


「あ、そうだ、結婚式にはライリーの城下街と教会で先着何名かでクジもやって貰いましょう。

景品にポーションや米やチョコや化粧品を入れる」


 ガチャみたいにワクワク感が有るかも!


「クジか。

其方のポーションならば効果が高いから、クジは争奪戦になるかもしれんが、ポーションは市販品か?」


「両方入れましょう。クジを引く時ドキドキワクワク感が増すかも」


「お嬢様、クジの景品にドールは入りませんか? 

私の姪っ子があの関節の動く美しいお人形に憧れているのです」


 リーゼもサロンでお茶を飲みつつ、私が目を覚ますのを待っていたようだ。

 彼女の願いに応えよう。


「ああ、いつもお世話になってるリーゼの姪っ子になら普通にお誕生日か何かにあげてもいいわ。

でもクジの特賞に、ドールを入れてもいいわね」


「わあ! 本当ですか! 姪っ子も喜びます!」


 思いの外、結局結婚式関連でお金がかかりそうだけど、一生に一度の事だし、下々の為に何か放出するのも貴族の役目らしいので、これもノブレス・オブリージュだと思う事にした。


 たまに祭りっぽい物があった方が日々の生活も潤うよね。

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