第237話 海辺のバーベキューと虹色真珠。

 ガリッ 

 ギルバートが網の上で焼いた貝を口に入れた時にそんな音がした。


「……!」

「ギルバート様、大丈夫ですか? まさか歯が欠けたとか」

「違う、エイデン。貝の中に何か入って」


 ギルバートはそう言って、後ろを向いて手の平に何かを吐いた。


「……真珠のような物が」

「真珠!? 凄い! 当たりの貝じゃないですか!」

「でもこれ白でなく何故か水色だ」


 ギルバートは早速コップの水で丸い石を洗い流している。


 前世でカラフルな真珠って海外の川の貝を品種改良で作ってるとこがあったけど、この世界は魔法がある不思議世界だからそういうのもあるのかな。


「あら、本当に綺麗なパールブルー」

「口に入る前に気がついていれば其方にあげたのだが」

「口に入った物でもいいのでくれるなら下さい」


 レア物だもの!


「一応洗ったけど、本当に良いのか?」

「洗ったのですから全然良いですよ。気にしません」


「もう一個同じ色のパールが有ればイヤリングに出来ましたね。

一個でも指輪やペンダントに出来ますけど」


 私がそう言うと騎士達がやる気を出した。


「ちょっと口に入れる前に全部の貝を調べてみるか」

「偶然真珠が入ってるなんて奇跡、そうそう無いのでは?」

「まあ、宝探しみたいで良いじゃないか」


「あ! ありました!」

「本当!? レイナード!」

「色はピンクです!」

「え!? 水色じゃないの、惜しい! でもピンクも可愛い!」


「お嬢様に差し上げます。まだ口に入れてませんでした」

「あった! ブルーです!」

「え!? そんなにカラフルなのがよくある物なの?」


「そういう種類の貝だよ。レインボーパールって言う」

「アシェルさんはこの貝を知っていたのね」


 流石の物知りエルフ!


「ああ。貝の内側も虹色で綺麗だろう?」

「本当、外側はゴツゴツしてるのに」


「あ……ハズレた〜」

「これにも無いな」

「やっぱり当たりハズレはあるみたいね」


 私はタコのぬめりを塩で取って、包丁で刺身にしながら会話に混ざっている。


「ティアは何か作りたい物があるんだね?」


「学院の休み明けにバザーが有るから、何か商品を用意していかないといけないの」

「そのバザーには学院外の人も入れるのかい?」


「犯罪者は無理だけど、身元が分かる物を提示すれば入れるわ。

ほぼ生徒の保護者が多いらしいけれど」


「ギルドカードでも良いのかな」

「Sランク冒険者のアシェルさんは大丈夫よ、私の保護者枠で入っても良いし」

「そうか、良かった」

「誰か水樽の栓を開けて。手を洗うから」

「はい」


 ラナンが素早く栓を開けてくれた。


 さて、タコのお刺身が出来たので、醤油をかけて食べる。


「良い弾力……美味しい」


「魚も美味しく焼けましたよ」

「上品な味の白身魚」


「このキス、油があるなら揚げても良いですか?」


 私のインベントリの中身に油があるかを聞いているのだろう。

 もちろんあるので!


「もちろん、良いですよ」

「ありがとうございます!」


 インベントリから油と片栗粉と小麦粉と卵と調理器具を出してあげた。

 後は自分でやれるみたい。


 ジュワー。

 キスを油で揚げる音が響く。良い音……。


 イケメンの料理する姿も見れる。

 腕の筋肉もカッコいい。

 眼福。


「キスの天ぷら、上手にサクサクに揚がっていて凄く美味しいな」


「貴殿、そんな小さくて素早そうな魚、よく沢山捕まえたな。釣りなら分かるが」

「修行だと思って挑んでみました」


「凄いな、其方」

「お褒めに与り、光栄です」

「ほくほくして美味しい」



 海鮮バーベキューの後のデザートはアイス!

 インベントリから取り出す。


「本日のデザートはアイスクリームですよ」


 皆の目が輝いた。


「おお!」


「……甘くて冷たくて美味しい」

「これのおかげで暑い夏も好きになりました!」


 そんなに!


「ジャムをかけたい人はこちらを」


 私はいちごとオレンジのジャムを用意した。


「バニラアイスの甘みにフルーツジャムの程よい酸味が合いますね」


 奇跡的にここには甘いのが苦手な騎士がいないのでデザートも美味しく食べている。


 こうして私達は夏の海の視察とバーベキューを楽しんだのだった。

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