第223話

 春休みも婚約パーティーも既に終わっているので、学院に向かう馬車の中。

 護衛騎士達は馬でついて来ている。

 私は馬車の窓から春の景色を眺めつつ、ギルバートとしばし雑談。


「ガーディアンって貴族の爵位で例えると身分的にはどのくらいなんですか?」


 私は滅多に存在しないガーディアンがどの位偉いのか知りたくて聞いた。


「聖騎士に命令できて動かせるから、侯爵クラスだ」

「わあ! 想像以上に偉いんですね」


 すごーい!


「ルーエ侯爵領も本来なら俺が貰えると王に聞いたが、其方の側にいて、守るのが一番大事な仕事なので、ロルフ兄上にBランク以上の魔物100匹倒したらあの土地の所有を譲る、領主とする契約をした」


「ルーエ領にあるエメラルド鉱山の権利はどうなるんですか?」


「エメラルド鉱山だけは俺所有のままだ。

その代わり、たまに仕事を手伝ってくれとは言われている。

ロルフ兄上は戦闘は得意なのだが、紙の仕事が嫌いなので」


「大丈夫ですか? 山ほど仕事押し付けられたりしませんか?」

「依頼の仕事量はほどほどにしてくれとは言ってあるし、頼まれる場合は文官と同等の仕事料は貰える契約だ」


 ロルフ殿下は外部に信頼できる税理士抱えてるみたいな物かな。



「侯爵クラスで有れば、学院、人前では、ギルバート卿かギルバート様とでも呼べば良いでしょうか?」

「ん──、婚約者なら別に呼び捨てでも……」

「侮られてはいけないでしょう?」


「……仕方ないか」


 * *


 学院に来ると、知り合いの令嬢達から、「婚約おめでとうございます」の祝福の言葉を沢山いただいた。

 照れ臭い。


 その中で扇子で顔を半分くらい隠しつつも、面白くなさそうなオーラを発する見慣れぬ女の子がいた。


「あの方は……?」


「ダレン王国のレイラ王女様です。

先日、セレスティアナ様は婚約パーティーをされていた時に留学生としてこの学院に来られたのですわ」


 へえ……。

 他国から来た留学生の王女様とは……。



 * 


「今日は文化祭についての話合いを行います」


 学院の教室にて、教卓の前でクラス委員の令嬢が議題の進行を受け持っている。

 黒版にチョークを走らせる音が響く。


 *


「──よって、このクラスの文化祭の出し物は演劇となりました」


 わ──っとクラス内で歓声が上がった。

 なんだかんだで協議の結果、演劇に決まった。


 文化祭の演目内容は恋愛物か。ふむふむ。

 乙女ゲームでも文化祭で演劇やるって展開は多いので楽しみ。


 私はワクワクしながら黒板に書かれた内容を見ていた。

 二人の男が一人の女性を恋慕う、三角関係の恋愛話だ。

 最後、ライバル役の男はヒーローにさんざん嫌がらせをした後に、殺されて死ぬ内容だった筈。


「次に、配役ですが、自薦、推薦どちらでも構いません」


 ガタンと挙手をしつつ、席を立った令嬢がいた。


「はい! ガイウスの役にセレスティアナ嬢を推薦致しますわ」


 !? 男役な上にヒーローのライバルの悪役だ!?

 私にこの役を推薦して来たのは転入して来た他国の留学生の王女様だ。



「わ、私が……男役を?」

「セレスティアナ嬢は成人前の女性にしては、そこそこ身長がお有りですし、男装もいけるのでは?

美貌が売りの役ですし!」


 やったーー! 男役の上に悪役だって! 楽しそう!

 でも私身長155㎝くらいだけど、本当に良いの? まだ160㎝いってないよ?


「本当に私でよろしいのですか? 大事な役だと思いますが」

「もちろんですわ、他に自薦もいませんもの! ねえ、皆様!?」


 凄い笑顔で圧をかけている。

 皆、外交問題になるといけないので皆、何も言えないようだ。


「セレスティアナ、男装な上に悪役だぞ、良いのか?」

「私は問題ありませんが」


「ヒロインのメアリー姫役は私がやりますわ!

そしてヒーローのローラン王子役には、ギルバート様を推薦致します!」


「は!? 私がヒーロー?」


「王子様役ですし、このクラスで一番の美貌で王家の血筋の方ですもの、皆不満はないと思いますわ!」


 ギルバートも急な話に面食らっている。


「他に自薦も他薦も無ければメイン配役は決定します」


 ──そして、演劇のメイン配役はそのまま決定してしまったのだった。

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