第202話
殿下の協力で作った星空の布地でドレスを作った。
合わせる髪飾りや腰の飾りの宝石は細かいダイヤモンド。
ダイヤモンドの装飾は殿下が贈ってくれたので、結局身につける事にした。
ダイヤのクリアカラーは色んな色のドレスに合わせやすくて助かる。
「まあ、星の女神の娘のように美しく、愛らしいですね」
「とてもお綺麗です」
「この地の誰よりもキラキラして美しいと思います」
メイドや女性騎士達が褒めてくれる。
本日は殿下の成人の式典が王都で開催されている。
式典に招待されている両親に記録のクリスタルを預けてあるから王都での殿下の晴れ姿はちゃんと記録して来てくれるでしょう。
私はデビュタントもまだの未成年なのでお留守番。
殿下も両親も夜にはライリーの方に来て宴に参加するから私もドレスを着て支度をしているのだ。
夜のパーティーはプールや庭園に魔法の灯りを浮かべて幻想的になっている。
お城の広い庭園は本日ライリーの住民にも解放されていて、一緒に殿下の成人をお祝いできるのだ。
基本的には立食パーティーではあるが、休憩もできるように椅子やテーブルも所々置いてあるので立っているのがしんどい人は座れる。
天才錬金術師の虫除けの魔法具のおかげで夏の夜でも虫除けの効果が発揮され、蛾のような虫が光に寄って来る事は無い。
助かる!
ホタルだけなら来てくれても良いのだけど。
そこまで都合良くは無い。
領民は滅多に口にできないチョコレートや砂糖をふんだんに使われたケーキやスイーツに大喜び。
アイスも有る。
夏の夜でも涼しさを提供するエアリアルステッキも大活躍。
エアリアルステッキはパーティー用に複数作って各所に設置してある。
人気の有る料理も色々出してある。 照り焼きチキンのピザとか。
「わあ! 可愛い! 」
「猫! おっきい! ふわふわ!」
アスランとブルーが大きくなって芝生の上でくつろいでいるのだが、子供達や猫好きに大人気。
4歳になった弟のウィルもブルーのそばでアイスを食べている。
「ウィル坊ちゃま、アイスばかり食べてはいけませんよ」
乳母が弟に注意する。
「はーい」
返事だけは良い。
その時、ざわりと声が聞こえた。
庭園にある転移陣が光ったので、両親と殿下達がライリーに戻って来たのだろう。
私も護衛騎士を連れてお出迎えする。
私は貴族の娘らしく、優雅な仕草でドレスの裾を掴んで挨拶をした。
「お帰りなさいませ。ギルバート殿下。本日はお誕生日と成人おめでとうございます」
殿下は一瞬目を見張って、私を上から下まで見てから、言葉を紡いだ。
「……ありがとう。セレスティアナ。とても綺麗だ。今宵の夜空の星の輝きにも負けていない」
ストレートな賛辞、未だに照れる。
ギルバート殿下もずいぶん背が高くなった。
おそらく170 cmはゆうに有る。
私の身長は今、155 cmくらい。
並ぶと私の頭のてっぺんが殿下の耳あたりに来る。
殿下は筋肉もだいぶついて来た。
その調子で猫の肉球並みの素敵な胸筋を手に入れて欲しい。
お顔も綺麗でイケメンぶりに磨きがかかって来ている。
今日は正装だし、華やいだ雰囲気でいつにも増してかっこいい。
側近達も美形が多いから連れて歩く姿は壮観である。
「お父様とお母様もお帰りなさいませ」
「「ただいま」」
私は殿下のエスコートで、テーブル席に移動して、飲み物などを口にする。
「はあ。生き返る」
「お帰り、ジーク」
「おお、アシェル。今日も留守を守ってくれていてありがとう」
「ははは。良いよ。先に酒も料理も楽しめている」
「どうぞ、シードルです」
「ありがとう」
お父様とアシェルさんの歓談中、執事が林檎酒や温かい料理を持って来た。
私はジュースを飲みつつ二人の会話を興味深く聞いている。
「ジーク、王都の料理はどうだった?」
「孔雀とかウツボとかが出て来たぞ」
ワオ……。
「見た目はともかくウツボの唐揚げは美味しかった」
「そう言えばウツボは結構人気あるんだったな」
そうなんだ……まあウツボもニョロニョロ系だし、うなぎだと思えば食べられるかな。
「私はこの鳥の唐揚げが好きだな。甘酢ソースとタルタルソースが良い」
殿下は美味しそうにチキン南蛮を食べ、そう感想を述べた。
私の護衛騎士達も殿下の側近達や招待客達と近くのテーブルで食事を取りつつ、仲良く談笑している。
翼猫と戯れていた弟も私達のテーブルに来た。
「おねー様、いつもキレイだけど今日すごくキレイだね」
「ありがとう、ウィル。それと今日は殿下の成人のお祝いだから、殿下にも言う事があるでしょう?」
「ギルバートでんか、おたんじょうびとせいじんおめでとうごじゃいます」
「ああ、ありがとうウィルバート」
楽師を呼んでいるので、宴は音楽が奏でられている。
音楽を聞いて今思い出したかのように殿下が私を見つめて言った。
「セレスティアナ、後で一緒にダンスを躍ってくれるか?」
「良いですよ」
「挨拶ばかりでろくに食べられて無かったから、少し食べてから」
「ゆっくり好きなものを食べて下さい」
「ボクはね、さっきアイスを食べたよ!」
「ウィル、デザート以外もきちんと食べるのですよ」
お母様がすかさず注意する。
そのお母様のお膝の上には手乗りサイズのクロエがいる。
めちゃくちゃ可愛い。
「じゃあボクもからあげ食べる」
しばらくして、ダンスタイム。
私は殿下のエスコートで参加する。
「まあ、なんてお似合いのお二人かしら」
「お嬢様のドレス……星空だわ……すごくキレイで素敵ね」
「髪飾りと腰のベルトとブレスレットのダイヤモンドもキラキラして……」
「王子様だ、すごーい! かっこいい──!」
「殿下もだいぶん背が伸びましたね。ますますかっこよくおなりで」
「あれがライリーの宝石と言われるセレスティアナ嬢か、美しい……」
「まさに地上に降りた星の女神が如く……」
吟遊詩人達も何か言ってる。
ずっとギルバート殿下の事を守って来た護衛騎士達も、今日は殊の外誇らしげに殿下を見つめている。
今宵、ターンの度に美しく翻る私の星のドレスには、人々のため息と、惜しみない称賛が贈られた。
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