第193話 リーバイ子爵領

 学院が休みの日にオリビア様のリーバイ子爵家に鯉の卵とチョコの交換に行ける事になった。

 卵じゃない育った鯉も少し分けていただけるそうなので、貴族なので氷室は多分あるとは思うけど、念の為冷蔵庫も一つ差し上げる事にした。


 冷蔵庫は一個以上欲しければ、そのうち注文をくれるでしょう。


 ついでに市場にも買い物に行きたいと言う要求も通った。

 やった──っ! よその市場!

 しかし浮かれてばかりもいられまい。


 急いで土魔法を使い、池を作らねば!

 見栄えの良いように石で囲んだり。

 あ、水も用意しないと。


 大きな樹木は落ち葉で大変になるので、あんまり大きな樹木が近くに無い場所に金魚用と鯉用を。


 * *


 土魔法で鯉用の池は金魚用より深く作った。


 しかも魔石パワーで作動する滝付きにして、濾過層には浄化スライムを使用。



 野苺狩りの時についでなので泉の近くにあった苔を少し持ち帰ったのを、池の滝の側に移植した。


 後はスイレンとか欲しいな。

 ひとまずお魚のお迎え準備はできた。

 順調に鯉を増やせたら田んぼに使う予定。

 50匹は必要だった気がする。


 * *


 学院休み当日。


 成体の鯉はインベントリに入れられないから、私専用の男性護衛騎士に転移陣から大きな樽に入れて運んで貰う。


 女性騎士二人も同行してくれる。


 庭園にある転移陣から出て来て、子爵家の方々に歓迎された。

 早速自慢の庭の池などを見せていただいた。

 

 鮮やかな色の鯉が優雅に、スイレンの葉の有る池の中を泳いでいる。


 赤と黒。

 赤と白。

 赤黒白のコントラストが綺麗なもの。

 赤と黒とゴージャスな金色の、単色のものもいる。


「わあ! 鯉も見事ですが、スイレンまでが有りますね! 素敵!」


 私がつい、はしゃいで声をあげたら、子爵が素敵なおまけを付けてくれた。


「ええ、夏になるとピンク色の綺麗な花が咲きます。

スイレンも少し持っていかれますか?」


「え、良いのですか?」

「高級そうな魔道具の冷蔵庫まで付けていただいたのですから、当然です」


 子爵家にも氷室はちゃんとあるらしいけど、冷蔵庫も一つつけると申し出たらとても喜ばれた。


 お庭にテーブルセットが置かれている。

 鯉を眺めつつお茶も出来るわけだ。


 チョコの価値を高めるべく、お茶の場にふわふわパンケーキも用意した。

 パンケーキにチョコをかけて召し上がっていただいた。


「この度は快く鯉と当方のチョコレートの交換を快諾していただき、誠にありがとうございます」


「こちらこそ、チョコレートは最高に美味しくて、家族も皆、気に入りましたよ」

「わぁ……このふわふわのケーキもすごく美味しいのに、かけられたチョコがまた格別ですね」


「うん。やはりライリーの食べ物はいつも素晴らしい」

「ジェイクお兄様は本当にいつも、良い思いをしていたんですね」


 子爵夫人もチョコかけパンケーキの美味しさに目を丸くした後に、息子をジト目で見て言った。


「本当に、そうだわ」

「ははは。すまないな、皆」


 両親と妹から「狡い」みたいな視線を送られる竜騎士のジェイク殿。


「またジェイク殿にお仕事の依頼をした時は多めに手土産を渡しておくので許してあげて下さい」

「まあ、そのようなつもりでは……」


 慌てる子爵夫人。


「良いのですよ。本当にいつも良くしていただいているので。

チョコが皆様に気に入っていただけて、嬉しいです。ありがとうございます」


「この後は市場にも行かれるのですよね。私も案内がてら護衛として同行しましょう」

「ジェイク殿。ありがとうございます」


 マジ親切〜〜!



「では鯉と卵とスイレンは帰り際にお渡ししましょう。市場から帰るまでに用意をしておきます」

「はい。よろしくお願いします」


 お忍びモード。

 なるべく地味な服に着替えて、外套を被って護衛騎士とリーバイ子爵領の市場へ向かう。

 いつもの王都の市場と場所も変わって新鮮!


 ゴボウとレンコンを発見した!

 レンコンは時期が違う気がしたので、こちらでは春に大きくなるのかと聞いてみたら、やっぱり旬は9月〜10月、秋あたりからで、亜空間収納持ちに収納して貰ってたらしい。


 レンコンの天ぷらやきんぴらが出来る〜〜! 最高〜〜!

 私が上機嫌でニコニコしてるとジェイク殿が声をかけて来た。


「嬉しそうですね」

「当然です。欲しかった食材を見つけたので!」

「当地の食材も貴女の料理で魔法のように美味しくなるのでしょうね」

「醤油があれば私ではなくとも、きっとなんとかなりますよ」


「このレンコンはスイレンに似た蓮の花が咲きますが、観賞用ではなく、食用の方の蓮を根っこごとか花の種を手に入れて来て下さったら、醤油1瓶と交換しますよ。」


 ちなみに花の観賞用の品種は細いため食用にはならないらしい。

 蓮の根、と書いてレンコンだけど、正確には地下茎であり、実際は地下茎からまた根が生える。

 我々は茎を食べている。


「良いんですか?」

「はい」


 醤油は一晩で壺一杯分は作れるようになったのでね。

 あんまり大量じゃないなら何とかなる。

 

「ちょっとレンコンの売り手に入手元を聞いて来ます!」

「はい。私はあそこの石屋を見ていますね」

「はい!」


 ジェイク殿がレンコンの店まで戻って行った。

 綺麗な砂利が売ってる。金魚鉢の下に敷き詰めよう。


「これ2袋分下さい」

「あいよ。お嬢ちゃん。けっこう重いが大丈夫かい?」

「お兄ちゃんの魔法の布に入るから大丈夫」


 後ろに控えている自分の騎士にお兄ちゃん役をやってもらっている。

 今日はわざと冒険者風の衣装を着て貰っている。

 魔法陣を描いてある偽装用、亜空間収納の入り口の風呂敷で買った物を収納する。


 石屋で綺麗な石を他にも眺めて時間を潰していたら、ジェイク殿が走って戻って来た。


「レンコンの種は入手可能です!」

「了解です。嬉しい」


 蓮根畑も用意しないと。

 できれば粘土質の泥の有る水持ちの良い、川か湖の近く……かな。

 収穫が大変そうだけど……。

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