第187話 新入生のクラスで

 4つほど違う科目のテストを受けた後に食堂に移動。


 席を自分で選べるのかと思ったらウエイトレスに、豪華な雰囲気エリアのテーブルに案内された。

 渡されたメニューを見て私達は無難そうなAランチとやらを頼んだ。


「まさかテスト中に寝るとは思わなかったぞ」

「早めに終わったので」

「それなら終わったとテストを提出して教室を出れば良いのに」


「まだ他の人のテストが終わっていないのに外に出て良いものなのですか?」

「皆、早く終わったら茶を飲みに近くの談話室などに行くそうだぞ」


 姉か兄上からの情報なのかな?


「次のテストや授業に間に合わないといけませんよね」

「鐘が鳴るし、使いの者が呼びに来てくれるぞ」


 お貴族様学校〜〜。


 まともな時計を見た事無いから無理かと思ったわ。

 ここでも砂時計を見たし。

 誰か普通の時計を開発して。まさか自分でやるしか無いのかな?


「分かりました。次は外に出ます」


 机に突っ伏して寝るのは確かに貴族らしい優雅さは無い姿だった。

 前世の学生の姿としてはよく見た光景だけど。


 ちなみに机の形状は前世の小中高で見て来た一つずつの離れた机ではなく、長いのが七席分くっついている系だった。椅子だけは一個ずつ離れているけど。


「ああ。食事が来たぞ」

「生徒が取りに行かなくてもこの食堂は運んでくれるんですね」

「それはそうだろ」


 王族、お貴族様学校〜〜。


「ハンバーグとフライドポテトにサラダとパン。同じのを選びましたね」

「ハンバーグのレシピはそもそも挽き肉器に付いていたが、フライドポテトは私が王城内でおやつに要求してたらいつの間にか広まったようだ。すまない」


「芋を油で揚げて塩をふっただけでレシピ使用権取ろうなんて思ってませんから大丈夫です。

でもここは王族貴族の通う学院だから多めの油を使った料理が出るのでしょうね」


「平民の学院では確かに出ないだろうな」


「サラダは酸っぱい系のドレッシングですね」


 私もレモンと塩とオリーブオイルの簡単ドレッシングをよく使う。


「酸味の有る果物のドレッシングを使ってあるんだろう」


 ハンバーグも普通に美味しい。流石貴族の通う学校。良い肉を使ってるのかな。

 ふと視線を感じて周囲を見ると、一部の生徒から見られてる。


「我々は何故見られているのでしょうか」

「俺が王族だったせいで特別席に案内されたんだろう。

話しかけたくても同じテーブルに来れないみたいだ」


 ああ。そういう……。


「ところで、校門ではわざわざ私を待っていたのですか?」

「……な、なんとなく制服姿とかが気になって」


 あらあら。


「毎朝は私を待たずに入って下さいね。目立つので」

「う、分かった」


 別に意地悪じゃ無いですよ。

 女子の嫉妬の目がちょっと……。


 王と王妃との子じゃないから国王の座は狙えなくても、エメラルド鉱山持ちで殿下を伴侶にと狙う人も増えたかもしれない。


「選択授業の二科目だけ必須。

他の授業は五回授業を受けた後にまたテストで、それが高成績だった分は授業免除でテストの時のみ参加。

そして午後は好きなクラブに入ったら同好の者と活動してても良いらしいですね」


「ああ。

この学院の主目的が社交で将来の伴侶を探したり人脈を作る事なので、一応は学院に通わせる為、何かはしていないとな。入りたいクラブはあるのか?」


「早く帰りたくて帰宅部希望なのですが」

「帰宅部などというクラブは無いのだが」


 でも漫画研究部も無いしな……。


「刺繍クラブはあるようですが、服を作るクラブはありませんね」


「騎乗部なら一緒に遠乗りに行けると思う。私は竜で。其方は翼猫で」

「遠乗りと言っても、それ学院が終わる時間内に帰れるんですか」


「空を行けば障害物が無いから、そこそこ行けると思うぞ。近くの森へ素材狩りとか」

「素材狩りは惹かれる響きですね。少し考えさせて下さい」


「ああ。だが午後の活動のクラブを選ばない場合には必須2科目に追加1科目は優秀でも授業を受けなければならない」

「あ、魔法と経済の授業なら選択で取りますよ」

「だと思った。そこの授業は竜騎士コースの私も一緒に受けられる」


 殿下はニヤっと笑った。


 色々雑談してる間に、そろそろお昼休みの時間が終わる時間になったので、教室に戻る。


「本日は初日ですので、授業はありません。

次回、明日は親睦を深める為に景色の良い花園にピクニックに行きます」


 オリエンテーション! 遠足だコレ。

 

 周囲から喜ぶ声が聞こえる。授業が無いのは嬉しいよね。


「静粛に。ランチは各自、用意して来て下さい。有料ですが食事処もあります」


 このクラスの担任の女教師はそう言って紙を3枚配った。

 ピクニックの詳細と授業スケジュールとクラブの種類等が書かれている紙らしい。


 私は鞄から一枚の紙を取り出して、サラサラと短い手紙を書いた。

 殿下がプリントを眺めているその隙に、小さく折り畳んだ手紙を殿下の席にシュっと滑らすように渡した。

 あちらのお客様からですってカクテルが来るみたいに。


 手紙の中身はピクニックのお弁当の用意は任せて。と書いた物だ。

 殿下は慌ててメモを開いてから、一瞬で笑顔になった。


 さて! 学院内の教会見てから我が城に帰宅よ!

 鞄を持って席を立つと、呼び止められた。


「セレスティアナ嬢! 待ってくれ。馬車で教会の転移陣まで送る!」


 あら、今日は多くの貴族の前だから話し方が違いますね。


「ありがとうございます。私は学院内の教会の見学後に帰宅予定ですが、リーゼも一緒なのです。

大丈夫でしょうか?」


「ああ。教会が見たいのか。そこも付き合おう。馬車も余裕で乗れるから大丈夫だ」

「ではまずは、教会見学に行きましょう」

 

 教会の側の花壇にはビオラやチューリップなどの花が植えてあった。

 ふむ。綺麗だね。

 教会も外観や花壇もクリスタルで撮影。


 中には確かにステンドグラスのような物が有る。神様と天使の姿だ。

 お祈りをしてから、ここも綺麗なのでクリスタルで撮影。


「満足したか?」

「はい。さて、後は馬車の中からアーモンドの花の並木道を眺めながら帰りましょうか」

「ああ。そうしよう」

 


 殿下に手をとられ、エスコートされて馬車に乗った。

 綺麗なアーモンドの花の道の途中で、殿下に遅ればせながら誕生日おめでとうと言われた。


 プレゼントには小さな壺を貰った。

 蓋には小さな穴がいくつか空いた油紙が使用されている。


「壺の中身は何ですか? チャポチャポ言うので液体が入ってるのは分かりますが」

「金魚の卵だ。いつぞや水晶の映像を見て欲しがっていただろう」

「わあ! とても嬉しいです! 何色の金魚でしょうか? 赤? 黒?」

「悪いが詳しく無いから知らない」


「そうですか、産まれたら分かりますね」

「ああ。生き物は亜空間収納に入れられないだろう。手持ちで行くしか無いぞ」

「お嬢様、私が持ちます」

「ありがとうリーゼ」


 誕生日プレゼントに金魚の卵! 嬉しい!

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