第185話 春の日に佩剣の儀式
ライリーに帰城した。
そしてサツマイモらしき芋を手に入れたので、花畑遠征に付き合ってくれて騎士の皆様にも振る舞う為、早速石焼き芋パーティーだ!
アルミホイルのように加工されたメタリックカラーのスライムで包んで、石焼き芋を作るべく焼いてみた。
そろそろ焼けただろう頃合いで、半分あたりで割ってみると、見た目は蜜で甘いサツマイモそのものだった。
やはり味はねっとりと甘くってほくほくしてた。
美味しい焼き芋が完成した。
「美味しく焼けました!」
「甘い……」
「本当だ、すごく甘い」
「あの紫色の芋に砂糖をかけたのですか?」
「砂糖などかけていません。焼いただけですよ」
皆、芋の甘さと美味しさに驚いていた。
さもあろう。
王都組の皆様には帰り際、お土産にチョコ味のマドレーヌを渡した。
「立派な剣をありがとう。それとお土産も」
「立派ですとも。私のお父様の採ってきたミスリルで出来た剣ですから。
ギルバート殿下。
あなたの護りとなるように、外出時はいつもお持ち下さいね」
「勿論だ」
帰りの転移陣前。殿下のお見送りも完了した。
* * *
そして冬が終わり、春になった。
私は10歳の誕生日を迎えた。
自分の護衛騎士を新しく四人選ぶ。
本来なら5人選ぶはずだったが、先にラナンを迎える事が出来たからだ。
一人は女性。
珍しく女性騎士がいたからお父様があらかじめ声をかけておいてくれた。
女性のみ既に内定済みなのだ。
明るく元気で朗らかな人らしい。
だから実際は男性騎士を3人選ぶ。
お父様の考えでは、殿下が成人して守護騎士になる頃には殿下ともう一人加えて全員で7人にする予定らしい。
騎士の訓練所に行って選んだ。
選考基準? イケボで強そうな人です。
お父様が私が選んで良いと言ったので。
騎士団長に頼んで条件の合う騎士達を練習場に並ばせて、自己紹介をしてもらった。
声質チェックの為である。
私の守護騎士はほぼライリーの城詰めの騎士となるので、家で寂しい思いをする奥さんとかがいないように未婚の者から選んだ。
こんなにイケボでかっこいいのに何で結婚して無いんだろうって人がいて驚いた。
選びはしたが、私に仕えたいとも限らないので拒否権を渡す。
騎士全員を訓練所の広場に一旦集めて貰った。
騎士の自室のハンガーに、自分の騎士服の着替えのジャケットをかけて置いて貰う。
リナルドには選んだ騎士の部屋に行って貰い、ポケットにそっと花の種を入れて貰った。
花の種を手に入れた人には、私の騎士になるつもりがあるなら、種を持って騎士宿舎から荷物をまとめて、ライリーの城に来て欲しいと言った。
部屋はもう用意してある。
騎士達は部屋に戻ったら、自分の騎士服の着替えの上着のポケットを探った。
種を見つけて、喜んでくれた人が、三人、私の元へ来てくれた。
つまり私が自分で選んだ全員が来てくれた。
一人は長身の黒髪眼鏡インテリ風イケメン。
眼鏡はダンジョンで入手した鑑定鏡を加工してあるらしく、本人に似合うよう、フレーム等をいじってある。
もう一人はイケボで渋い感じの男前。
精悍な顔立ちをしている。
最後の一人はやっぱりイケボで明るくムードメーカーになってくれそうな人。
* *
騎士の叙任式。
私は白く美しいドレスを着て、ライリーの城の花咲く春の庭園で行った。
「佩剣」の儀式。
騎士が主の前に跪き、頭を垂れる。
主は長剣の平を以てその肩に触れさせる。
私はしきたり通りに、誓いを求める言葉を口にした。
「汝、我欲を捨て大いなる正義のため、我が剣となり盾となることを望むか」
迷い無く、凛とした声が返って来た。
「誓います。貴女の剣となり、盾となります。
この命尽きるまで、我が命は貴女の為に。我が君」
儀式の後には騎士からこんな言葉も貰った。
「騎士の宿舎に戻った時、種が無かったと、嘆く仲間達の声が聞こえました。
お嬢様はライリーの救世主で、仕えたいと思う者は多かったのです。
私は自分の上着から見慣れぬハンカチに包まれた種を見つけて、感動で震えました。
セレスティアナ様はこんなに誇らしい気持ちを下さった」
私は「これからよろしくね」と言って微笑んだ。
──花咲く春の日に、私は新たに自分だけの守護騎士を得て、歓迎の宴を開いた。
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