第182話 霊獣の騎乗訓練

 真冬。

 風は冷たく、吐く息も白い。


『安全に乗れるように霊獣達の手綱は僕が贈るよ』

「あ! 忘れてた」

『ほら、アスランに大きくなれと念じて魔力を注いでみて』


 私は言われるまま魔力を高め、乗れるくらいに大きくなれと魔力を注いだ。

 すると本当に大きくなった!


「わ──っ! 大きい! ふわふわの大きい猫ちゃん!」


 最高! もふもふしたい! 思わず抱きつく私。

 ああ〜〜っ! ふわふわ〜〜!! 気持ち良い!!


 そして、これだけ大きいのなら、肉球も!

 私は思わずアスランに懇願する。


「に、肉球を触らせて貰ってもいい?」

「にゃあ」


 多分了承を得たのでそっと差し出された手の肉球を……ぷにぷに。

 ああ──っ!

 柔らかい……っ! 至福……。


『浸っているとこ申し訳ないけど。ほら、手綱』


 ポン! と魔法陣から四匹分の手綱?が出て来た。

 と言っても、馬に付いてるような手綱や鞍とは違って、犬猫のハーネスみたいな物を体に付けるタイプみたい。


「わあ──! ありがとう!」


 それから騎乗訓練。


『ウィルが育つまでは、ラナンがブルーに乗りなよ』

「王都の竜騎士に頼むと呼ぶのにも時間かかるし、良いのでは」


 私も頷き、同意した。


「我が君がそうおっしゃるのなら」


 そんな訳でラナンも一緒に訓練!


『まずは騎乗に慣れる為、飛ぶ前に、乗ったまま歩く所から』

「「はい!」」


『進路もスピードも脳内で指示出すだけで伝わるよ、霊獣だから』

「「はい!」」


 ふわふわの背中に乗って歩いて貰う。城の庭園を歩いてる。

 城のメイドが、きゃあ!っとか、悲鳴を上げて猫の大きさに驚いている。


「お、お嬢様!? 何ですか!? その生き物は!?」


「あら、ナリオ! 私の霊獣よ! 

今度から竜騎士のワイバーンの代わりに私を乗せて貰うのよ! 今は訓練中!」


 ええ〜!? と、私から直接、説明を受けても驚くナリオ。

 他にも巡回中の騎士に会うと、似たような反応をされる度に説明した。


 でも今は訓練中。集中しないと。


 しばらく歩行訓練した後、いよいよ飛ぶ。


『そろそろ低空で良いから飛んでみようか。

霊獣は決して自分から主を落とそうとはしないから、そこは安心して』


「「はい!」」



 私とラナンは、ふわりと飛翔する。


「わ──!! 感動! 飛んでる!! 飛んでるわ!!」


 ふわふわの猫に乗って低空を飛ぶ! 顔に当たる風が冷たく寒いけど、そんなのどうでも良い! 

 一応パンツルックで防寒服は着てるしね!


 しばらく低空をゆっくり飛んで、本日の訓練は終わり。


『後はティアは風邪ひかないように温かいお部屋の中で、ブロックの上とかで交互に片足立ちをして体幹を鍛えて』

「はい! 分かりました!」


 ラナンは既に基本が出来てて、そもそもバランスが良いらしい。

 今日のリナルドは良い先生だ。


 この後は両親にも手綱ハーネスを渡して来た。

 お父様のグリフォン用の手綱だけ雰囲気が違う。

 戦う人が乗る感じの、手綱と鞍って感じ。


 お父様のグリフォンの騎乗はかっこよかった!!


『辺境伯のグリフォン以外は猫だのうさぎだのは戦闘用ではなく、移動用と愛玩用と考えてね。

特にうさぎ。戦力とは考え無い方が良い』


 お父様は手乗りの小鳥サイズから、騎乗可能な位に大きくなって、凛々しい姿のグリフォンを見上げて言った。


「なるほどな。とりあえず、ギルドや衛兵に騎獣登録して周知させておかねば。

領民が驚いてしまうな。

あ、そこの騎士! あ、レザークか。伝令を頼む」


 お父様は近くにいたレザークに声をかけた。


「イエス・マイロード!」


 一方で、お母様の方は、

「私は戦場に行く予定はありませんので……」


 お母様はクロエを優しく撫でつつ、そう言った。

 一応クロエ用のハーネスも貰ったけど、騎乗してないのだ。

 確かにお母様はよほどの事でも無い限り乗る必要ないよね。

 淑女だもの。


「分かったわ! てか、それは確かにそうかも。

こんなに可愛いうさちゃんと猫ちゃんだもの」


 そう言って私はアスランのもふもふを堪能させて貰った。

 ふふふ。

 戦闘用じゃなくても、こんなに可愛いくて、乗せて飛んでくれるだけで充分!

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