第180話 年末年始の贈り物

 年末の星祭りはライリーで家族と一緒に過ごした。

 収穫祭でかなり予算を使ったので、大きなパーティーはしなかったけど、ご馳走とケーキを堪能した。


 両親からいただいたプレゼントには自分で希望した通りに、ピカピカの金貨と銀貨のいっぱい詰まったシルクのリボン付きの袋。


 現金だ! やった──! 欲しい物に使います!


 私からお母様への贈り物にはダイヤモンドのイヤリング。

 弟には布で作った絵本。

 お父様へのプレゼントには、予告通りに立派な箱に入れた松ぼっくり!


 マジで松ぼっくり!!


 お父様は私が大人になったらこの松ぼっくりを見て、小さかった私を思い出して、懐かしくて泣くかもしれないなんて言ってらした。

 今から感動し過ぎですよ。


 実は松ぼっくりの下に敷いた布の下には更に、ダイヤのカフスも入れておいたのだけど。

 松ぼっくりのみではお母様とあまりにも差が出来てしまうので。


 ──しかし、ダイヤよりも松ぼっくりの方が、子供らしく、愛らしく感じたみたい。

 ──よもや、ダイヤの輝きが松ぼっくりに負けるなど……。


 別に良いですけど!!


 そして、明日はついに、新年を迎える。

 それから15日も過ぎたら殿下と滝の裏の妖精の花畑に行く予定。


 この夜を越えれば、壺ガチャである!


 年始の福袋ならぬ福壺ですよ!

 一体、何が来るでしょうか!?


 * *


 新しい新年の朝が来た! いざ祭壇へ!

 年始の、今年で最後となるログインサービスを目指して、私は着替えもせずに、寝巻きのまま一階の祭壇の間へダッシュ!


 リナルドも飛んでついて来るし、ラナンは既に着替えて待機していたのか、走ってついて来た。

 祭壇の間に到着!



 ──って、あれ!?


「5つの壺の中で、一つだけ様変わりしてる! 色とか見た目が違う!」


『そのオパールみたいな色の壺は変換壺に変えてあるんだよ』

「何を変換するの?」


『壺いっぱいの大豆と、種となる醤油を少し、スプーンひと匙分だけ入れたら、一晩で同じ味の醤油になる魔法の壺だよ』


「ずっと毎日壺一杯分の醤油が供給されるって事!? 大豆と少しの醤油で!?」

『そうだよ。これで醤油が無くなる恐怖から解放されるだろう』


「神────っ!!」


 バタン! 私はすぐさま床に倒れ伏した。


『ティア。 何してるの?』


「喜びと感謝の五体投地」

『ああ……』


 

「さて、残り4つの壺は……」


 私はむくりと立ち上がる。


「お、新年おめでとう。ティアも早起きで来てるな」

「まあ、ティアったら、夜着のまま一階の祭壇の間まで来てしまったの?」


 寝巻きのまま来たのを両親に見つかった──っ!!


「し、新年おめでとうございます! そして、おはようございます!」

「ティア。おはよう、そして新年おめでとう。でもちゃんと着替えてから部屋を出なさい」


 お母様はおめでとうと言いつつも、ちょっと怒ってる。


「我が君。せめてこのマントを」

「あ、ありがとう、ラナン」


 私はラナンのマントに包まれた。


「ん? 一つ色が前と違うな?」


 お父様が祭壇の壺の変化に気がついた。


「大豆と少しの醤油という素材を入れていたら、一晩で醤油が作れる壺になっているそうです」

「醤油が作れるのか! 良かったな!」

「まあ! では、大豆を切らさないように気をつけましょうね」

「はい! 全力で大豆は確保します!」


「他は? もう見たのか?」

「まだです、今からです」


 確認してみた。二つの壺がお酒だった。


「うち一つはお米のお酒と、もう一つはブランデーだな」

「使い勝手が良いお酒がまたいただけてありがたいです!」

 私は素直に喜んだ。


「壺の残りは……あの二つですね」

 

 お母様の視線に誘導されるまま、私は残りの壺の蓋を開けた。


 中をドキドキしながら見たら、どちらの壺も藁の上に巾着袋が二つずつ入っていた。

 更に巾着が膨らんでいるから、中に何かが入ってるのが分かる。


「巾着の中に何か……卵!? サイズは鶏の卵位だけど」

『目玉焼き用じゃないよ。霊獣の卵だよ』

「「「霊獣の卵!?」」」


『霊獣は君達の役に立つよ。一人一個、懐に入れて三日間は温めて育ててね。

でもティアの弟のウィルはまだ小さいからラナンが代理で温めてあげて。

主の証にウィルに卵にキスさせてから温めてやれば大丈夫。産まれたら彼を主と認識してくれるはず』


 ま、まさかの霊獣の卵!


「私が弟君の分の卵を育てるのですね。分かりました」

「ありがとう。ラナン嬢。よろしく頼む」

「レディ・ラナン。世話をかけて申し訳ないけど、よろしくね」


 お父様とお母様もお願いしてくれた。


「ラナンありがとう。よろしくね」

 私からもそう言うと、ラナンは恭しく頭を下げた。


「リナルド。

ちょっと心配なのだけど、うっかり寝返りをうって体の下になったら卵割れない!? 大丈夫!?」


 私は自分の寝相を心配した。


『辺境伯の体の下敷きになっても割れない強度があるから大丈夫だよ』


「そうか、それは良かった。割れる心配で寝不足にならずに済む」

「そ、そうですわね」


 両親も少し心配だったようだ。


「リナルド、それで、霊獣ってどんな姿をしているの?」


 私はワクワクして聞いた。


『さあ。産まれてみないと分からない。魔力を注ぐ人によって違う』

「そうなんだ! 可愛い子だと良いな!」


 これで新年のお祝い壺ガチャは最後。来年からは無いけれど、沢山良い物を頂いた。

 神様ありがとうございました!


 後は卵からどんな子が産まれて来るのか、とても楽しみ!

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