第146話 小さなサプライズプレゼント
椅子より先に魔石で冷やす冷蔵庫用の扉付き棚の納品が来た。
しれっとお試し一個だけでなく、お手紙で追加の棚を3つ希望したけど、知り合いの家具屋と協力してやってくれたみたい。
ドワーフのおやっさんの方にも追加で用意してくれた温度を保つ金属で内側を覆うようにはめ込む。
更に固めた引き出しの様な樹液トレイをはめ込む。
ラストは冷凍と冷蔵の二箇所の扉に嵌めた魔石にお母様の氷の魔力を入れて貰って仕上げとなる。
お母様の部屋に来て、とりあえず、魔石への魔力注入待ちの冷蔵庫を4台並べてある。
「では、お母様、宜しくお願い致します」
「分かったわ」
お母様が冷却系の魔力を高め、練り上げる。
室内が冷気で冷んやりした。
指先から魔石に魔力が冷蔵庫の魔石に次々に注がれた。
「出来たわよ、ティア」
「お母様、ありがとうございます! 夏前に完成して良かったです!
厨房用の魔冷蔵庫は大きいので、そこに置いてます。
魔力が回復したら魔力だけ注入しに行って下さい。
冷蔵庫は嵩張って大きいので亜空間収納に入れてから運びます」
「じゃあ一個は、私の部屋に貰って良いのだな」
「はい、お父様」
「ありがとう。ティア」
お父様は、お礼を言いつつ、腰をかがめて頬にキスをしてくれた!
えへへ! 満足!
これで簡易版から、ちゃんとした冷蔵庫完成!
部屋にいつでも冷えたジュースとアイスクリームがある生活って良いよね。
お前は亜空間収納あるじゃんと言う話は置いといて。
自分の部屋に普通サイズと、両親の部屋と、アシェルさんの部屋と、厨房にでかいのを置く。
客室の分とかはまた追加で注文する。
ギルバート殿下も風呂敷型亜空間収納を持ってるけど、泊まりに来て、冷えたジュースとかが冷蔵庫に入っていたら、嬉しいでしょう。
側近さん達も殿下の許可が有れば中の飲み物自由に飲めますってなってたら嬉しいでしょうし。
シエンナ様や公爵様も夏には来るとなれば、複数個あった方が良い。
とりあえずシエンナ様達より先に錬金術師の先生が来てるから、そちらの部屋に、差し当たり、私の分を置いとく。
私の部屋にはしばらく簡易版ので、いいや。
家具屋さんは、椅子作りもあるから。
……それとも、協力してくれる下請け工房の職人がいるなら、発注だけでもしておいて良いのかな?
手紙で受注可能か聞くだけ聞いてみよう。
あ、食堂にも一個置いて騎士や使用人が冷たい物が飲めるように置いておきたいな。
せめて、夏場だけでも。
「さて、アシェルさんの部屋にも一つ、運びましょう」
廊下に出ると、アシェルさんがちょうど通りかかった。
「あ、ティア。庭師からプールの常緑樹を植え終わったと、言付けを預かったよ」
「伝言ありがとうアシェルさん。それと、贈り物があるよ」
「え、この間ブレスレットを貰ったばかりなのに?」
「いつもお世話になっているから。大きい物だから亜空間収納に入れてあるの。
アシェルさんのお部屋に行って良い?」
「良いよ」
アシェルさんのお部屋はエルフらしく、緑が多かった。
ハーブの様な良い香りがする。
鉢植えとか、ドライフラワーのスワッグもある。
オシャレ。
私は亜空間収納から空いている壁側に、冷蔵庫を出した。
「これは?」
「冷やしたい物を入れておけば冷える冷蔵庫と言う物なの。生温い果実を絞って作ったジュースも、入れておけば冷える優れもの。
アシェルさんは亜空間収納を持ってるけど、いちいち飲み物の為に魔力使って出し入れが面倒な時は、これは扉開けるだけで良いから。
あ、冷やしつつ数日熟成させてから食べたい物がある時にも使えるの」
「なるほど、便利で良いものだね。ありがとうティア」
アシェルさんは一瞬驚いた顔をした後に、優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。
日向でまどろみつつ、撫でてもらう猫ってこんな気持ちではないだろうか?
ぽかぽかして優しくて気持ちいい。
「これは葡萄ゼリーよ。早速冷蔵庫で冷やして食べてみて。その方が美味しいから。
ちなみに下段が冷蔵で、上段が凍らせる冷凍庫だからね」
「ゼリーありがとう。綺麗だ。……そうだ! お返しにこれをあげよう」
「わあ! 美味しそうな桃!」
「この間、春祭りに呼ばれた領地でいくつか貰ったんだ。お裾分け」
「いつの間にか他所の地域の春祭り行ってたの? 良いな〜」
「祭りに出る領主の護衛任務だったんだ」
そう言えばアシェルさんはSランク冒険者だから、そういう特殊な依頼も来るのか。
「もしかして、指名依頼ってやつ?」
「そうだよ」
「そのどっかの領主。美しいエルフを侍らせて春祭りとか最高すぎない?」
「さあ、でもライリーでも今期こそ秋の収穫祭がやれそうなんだろう?
エルフを侍らせてみる?」
「えーー、でも、お高いのでしょう?」
私はクスクスと笑いながら、冗談で某通販番組っぽく聞いてみる。
「魔法の冷蔵庫のお礼でチャラって事で良いよ」
「あはは! じゃあお願いしようかな!」
アシェルさんからは亜空間収納から出してくれた桃をいくつか貰って、私はおまけのゼリーを渡して、部屋を出た。
お父様とお母様と錬金術師の先生の冷蔵庫には、先にプリンとかゼリーを潜ませている。
開けてみたら、既に入ってたと言う、小さなサプライズ。
小さな幸せを、喜んでくれたら良いなと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます