第145話 私の騎士
「ラナン。それが、私の名前なのですね、我が君」
妖精界から戻って来たらしいリナルドに言われた。
ヒトガタに名前を付けろと。
なので花言葉に幸福が付いてるラナンキュラスから、ラナンにした。
──そう。
もう、一緒に連れて来てくれたのだ。
ヒトガタと言われる、人そっくりのお人形を。
想像以上に早かった。
髪色は愛らしいミルクティー色。
瞳の色は美しい琥珀色。
胸も大きく、腰は細く、女騎士と言うよりは、静かでたおやかな雰囲気だけど。
「ラナン、私の名前はセレスティアナよ。これからよろしくね」
『食べれない物とかは別に無いから。むしろ別に食料も基本的にほぼいらない。魔力さえ有れば良い』
「でも、食事出来ない事は無いのよね?」
『出来るよ』
「とりあえず、業務内容、基本的には護衛騎士なのだけど、私が書いたゲームの文章を、表向きには貴方が書いたと言う事にしてくれる?」
私はラナンに向かってそう問うた。
「仰せのままに、我が君」
我が君って言われちゃった。
何かドキドキする。
「じゃあ、これからよろしくね」
私は握手のつもりで手を出したら、ラナンは騎士のように片膝をついて、手の平にキスをした。
美しい……。
絵になる。
そう言えば最初から騎士系の服を着ているな。
「護衛騎士と言う事にするので、私のお部屋の隣が貴方のお部屋よ」
「はい」
「でも、急に慣れない場所に来た訳だし、不安だったり、寂しかったらいつでも私の部屋に来てね」
「はい、分かりました」
とりあえず、両親に紹介しないと。
騎士が来てくれましたって!
両親の元に連れて行って、挨拶をして貰った。
「あら、想像以上に可憐な騎士ね」
「しかし妖精が紹介してくれたくらいだから、腕は立つのだろう。娘をよろしく頼む」
「はい」
「じゃあ私はお勉強がありますので。ラナン、一緒に部屋に戻りましょう」
「はい、我が君」
文章と選択肢を作る作業に戻らねば。
錬金術師のヤネス先生には数人の画像サンプルを集めて貰っている。
程よい所で、休むように言ってある。
部屋に戻ったら寝床でリナルドが爆睡してた。
ラナンを急いで連れて来てくれてお疲れなのかも。
「私も作業するから、ラナンはそこのソファで休んでるか、本でも読んでて。
横になってても良いから」
「はい。ここで本を読みつつ、待機しております」
読書を選ぶあたり、何やら学びの姿勢を見せてる。えらいな。
「お嬢様、晩餐のメインのメニューはエビフライとカレーでよろしいのですか?」
私がメニューを書いた夕食のメモをアリーシャが確認して、厨房へ持って行く。
「そうよ、アリーシャ。よろしくね」
「はい、かしこまりました」
せっかく錬金術師さんが来てくれてるから、貴重な神様のカレールーも使うぞ。
* *
晩餐は予定通り、神様のくれたカレールーを使ったエビフライカレーを美味しくいただいた。
「初めての味ですが、凄く、美味しいです」
錬金術師のヤネス先生は目、瞼をパチパチさせて驚いていた。
彼は天才錬金術師として王室にも認められ、爵位持ちの貴族なので我々と同じ席についている。
領地を持たないけれど貴族だ。
「お昼のラザニアも美味しかったな」
「ええ」
「お口に合って良かったです」
お父様とお母様はラザニアの味を思い出していたようだ。
カロリーには一旦目を瞑ろう。
一応、私の専属とはいえ、1人の騎士なので、ラナンは同じく騎士達のいる食堂の方で食事を取る事になっている。
大丈夫かな?
上手くやれてるかな?
うちの騎士は良い人ばかりだから、きっと大丈夫だと思うけど。
*
自分の食事の後に、こっそり食堂を覗きに行く。
ラナンは大丈夫かな?
「いや、こんな美しい女性の騎士が同じ城に配属されるなんて、幸運だ」
「……どうも」
「いや、ラナン殿は大人しいな。だが、上品でそこも良い」
「ローウェ、あまりうるさく構うなよ。ラナン殿が落ち着いて食事を楽しめないだろう」
「そうだぞ、今日のラザニアもエビフライカレーも絶品だった。
せっかく美味しい料理が提供されているのだ、彼女も味わって食べたいだろう」
「全く、この金銀コンビは最近えらく息が合って来たな」
食堂はざわざわと賑わっていた。
今の声ラナンに絡んでるのはローウェね?
口が上手いんだから。
でも歓迎ムードが見て取れるから、そこは良かった。
しばらくこっそりと扉の隙間からラナンを観察してみた。
……前世風に言うなら、クールな感じだ。
クーデレ属性ヒロインは私も好きだわ。
たまに自分にだけ見せてくれる笑顔に一喜一憂出来るやつ。
「お嬢様? そんな所で何をされているのですか?」
「えっ、いや、新人の私の騎士のラナンがちゃんとやれてるか見てただけよ」
びっくりした。こそこそしてたら、メイドのエリーに見つかった。
「お嬢様! お嬢様におかれましては、本日も愛らしく、麗しい。料理もとても美味しいです!」
「お嬢様。新人のラナン殿を歓迎しておりました」
レザークが華やかな笑顔で言った。
ヴォルニーもレザークの言葉に頷いている。
「そうね、ありがとう。私の騎士と仲良くしてね」
「はい! もちろんです」
「我が君……」
ラナンが少し、はにかむように微笑した。
しかし、料理とレディを一緒に語るのはどうなのか、ローウェよ。
まあ良いけど!
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