第140話 味噌とじゃがいもの料理

 早朝に、庭園に来た。


 華やかな春の色彩を瞳に映して、どの花を選ぼうか、しばし迷って、私は明るい黄色のフリージアを選んだ。


 ハサミで切って、籠に入れ、今日はこの花を祭壇に飾ってお祈りをする。

 祭壇の間は、春色と、フリージアの香りに包まれるだろう。


 * 


 畑では密集して芽を出しているお野菜の間引きをする。

 ベビーリーフはサラダに入れる。


 芽が出ると言えば、チョコと砂糖の瓢箪畑は芽が出てから順調に育っていると報告を受けた。

 収穫出来る日が楽しみだなあ。


 * 


 朝食後にアトリエで物作り。


「わあ、お嬢様、それ、まん丸で綺麗な玉ですね」

「そうでしょ、光を通すと、キラキラしてて、お気に入りなの」


 アリーシャが私が作っているビー玉みたいな物を見て、褒めてくれた。


 固める樹液の中に砕いた色付きの魔石を入れて、ビー玉のような物をいくつか作ったのだ。


 前世で子供がプール遊びをする時に、水底のビー玉を探して集めるって言うのがあった。

 夏にプールでそれをやりたい。水の中の宝探しみたいで楽しいのではないかと思う。


 樹液で固めて作りたいのは他にも有るのだけど、定期的に採取の仕事依頼を冒険者ギルドの出してもすぐに足りなくなりそう。


 いっそあの木を庭に植えて、松の木みたいにポーションで育成出来ないものかしら。


 * *


 お勉強の時間。


 と言っても、私の場合、ほぼ経費節約で自習してる。

 家庭教師を雇わず、本を読んだりしてる。


 本といえば、エーリレフではギルバート殿下の家庭教師の先生から借りてた本を読んでて良かった。

 実はグラフを教えた対価に貴重な光、治癒魔法の本を借りていたのよね。

 魔法の本は高価だし、光属性持ちは数が少ないから教本も入手困難だった。


 本を読んでたお陰で怪我した女性を助けられた。

 早く本を書き写して返却しないと……。

 いや、待って。

 記録のクリスタルで撮っておけば後でゆっくり書き写せるのでは。


 学校の授業の内容を書いた黒板を、ノートをとる代わりにスマホで撮影するかの如く……。

 よし。

 クリスタルで撮っておいて、写本はアルバイトを雇う事も視野に入れておこう。


 日本で教育を受けていた私的には、こちらの世界で10歳から通う王立学院で学ぶだろう算術の勉強内容は、普通に出来るので、飛ばした。



 次に魔物に関する研究の書を読む。

 スライムには色んな種類がいて、品種改良までされているらしい。


 浄化作用に使えるスライム、物を柔らかくするスライム、ゴミ処理スライム。

 便利だな〜。


 浄化スライムはプールを使って無い時に、入れておきたいな。

 勝手に緑色の藻とかが光合成で増えまくったら、掃除が大変だし。

 

 * *


 ミシンの方も5台程組み上がって納品されて来た。


 なので五人、女性を雇って使い方を指導して、馬車の座面のスプリングコイルを入れる袋を、ライリーの城の一部を借りて作業場にして、縫って貰っている。


 かなり頑張って貰っているから、ふわふわパンケーキにメープルシロップをかけた物を出して、労おう。


 あ、プールサイドでお母様やウィルのお世話するメイドさん用の水着もあった方が良いかな。


 * *


 お昼のメニューは福島の郷土料理と言われる、味噌かんぷら。

 厨房で一度料理人達の前で作って見せ、覚えて貰う。


 まず、よく洗った皮付きのままの小玉のジャガイモをフライパンに入れて、多めの油で揚げ焼きにする。

 ジャガイモを油の中で回しながら、じっくりと火を入れる。


 蓋をして様子見。爪楊枝で刺してみる。

 良き具合なら一旦フライパンの中にあるジャガイモを取り出す。

 油を減らして、同量の味噌と砂糖をフライパンに入れる。


 弱火でかき混ぜ、練り上げる。

 とろ〜っとしたタレになったらフライパンにジャガイモを戻す。


 甘く味付けした味噌タレと小玉のジャガイモをしっかりと絡ませると完成。

 早速味見。


「うん、美味しい! 味噌と砂糖とジャガイモの組み合わせは美味しい!」


 料理人達にも味見をさせてみる。


「おお、砂糖を贅沢に使っただけは有りますね。美味しいです」

「ええ、本当に美味しいです。甘い味噌って最高ですね」


 ははは。


 確かに高価な砂糖を沢山使うから、こちらの世界では贅沢料理になってしまうな。

 でも無性に食べたくなったから、仕方ないよね。


 先日の街行きに同行した2人の騎士を食堂に呼んだ。

 ナリオとローウェにも特別に食べさせてあげる。


「「美味しいです!」」

「砂糖を贅沢に使っているから」

「「そんなに!?」」


 よくセリフのハモる人達だ。

「えへへ、わりと」


 味噌かんぷらは前世でTVで見てから美味しそうだなって、作ってみたら美味しくて気にいったんだ。


 昼食に出してみたら両親にも美味しいと言われたので、わりと贅沢に砂糖を使ってしまったけど、許されたい。


 * *


 晩餐後にまったりとお風呂に入りつつ、考える。


 明日は王都の方に行ってメイドさん用の水着生地買いに行きたいな。


 ダメかな〜?

 商人に注文しろって言われるかな?

 さっと行って買い物してさっと帰れば大丈夫だと思うんだよね。


 あ! 

 王都と言えば!


 メアトン工房でクリスタルで乙女ゲームやれるか相談するために聞かないと!

 やっぱり頑張って外出許可貰おう。

 

 *


 寝る前に突撃、お父様の寝室!


 お父様のお部屋で風呂上がりのお父様に遭遇!


 濡れ髪姿もセクシーでかっこいい! 

 私の推しのお父様はいつもかっこいいけど!


 濡れ髪をエアリアルステッキで乾かす係に志願し、許可を得た!


 喜びで寿命が3くらい増えた!……ような気がする!


 ついでにお父様に甘え倒して外出許可を貰う事に成功した!

 王都の先生に貴重な魔法の本を返さないといけないと言うと許可が出た。


 あざとさが1上がった!……気がする。


 あ、でも王都の先生は貴族だから先触れが必要かな。

 先生がもし、居なかったら王都で侍女をしている知り合いのブランシュ子爵令嬢に本を預けるかな。


 そんでさっと帰ろう。

 お城にいる知らない貴族とか怖い。


 

 よし、とにかく明日は王都でお買い物!


 家令に先触れの手配を頼む。


 *


 寝る為に部屋に戻ると朝から姿を見なかったリナルドがいつの間にか戻ってた。


「リナルド、お帰り! ところで生きて動くお人形さん、ヒトガタって何を食べるの?」

『人間と同じ物で大丈夫だよ』


 よし、これで一緒に食事は可能だと分かった。

 

 生きたお人形さんの髪の色ですごい悩んだけど、外出時に私がよく茶髪のアリアになるから、その時にお姉ちゃんのふりをして貰う為にも、あまりかけ離れた色はやめようかと思って、ミルクティー色にしようと思う。


 柔らかい印象の可愛い色で好きなんだよね。

 デザイン画を描く。

 ミルクティー色のロングヘアーで瞳は琥珀色。


 騎士っぽいお洋服とお出かけ用ワンピースをデザインも描く。

 ジュリエットのような寝巻きは普通に売ってると思うから明日買って来よう。



 〜 一方、その頃のギルバート殿下 〜


「明日は何か有る気がする!」

「殿下? 何かとは?」

  

 側近のチャールズが王子の部屋に入るなり、主たるギルバートに声高らかに報告をする。


「ライリーから王城に先触れが来ました!

 殿下の家庭教師のキーン殿に、令嬢が借りた本を返しに来るとの事!」


「それだ! 何か予感がすると思った! セレスティアナが王城に来るじゃないか!」

「そ、それは大事件では!?」

「エイデン殿。令嬢は本を返して即帰るつもりでは?」

 

「あ、ありうる。少しは俺の方にも顔を見せてくれよ……」

「とりあえず明日、殿下は令嬢に会う時間を作るのでしょう?」

「当然だろ!」

  

 にわかに生セレスティアナが見れるかもしれないと言う噂が立ち、王城内がざわつくのだった。

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