第131話 第二王子帰国の知らせ
〜ギルバート王子の側近、エイデン視点〜
「エイデン様、お手紙をお届けに参りました」
「ああ、ありがとう」
暖かい春の午後、ライリーのメイドが客室に来て、側近の私に手紙を渡した。
私は手紙を開いて中を確認した。
ご丁寧にメジャーまで入ってる。
早速殿下の泊まる客室に移動する。
「エイデン、さっき休憩に下がったばかりなのに、何かあったのか?」
「ギルバート殿下の腰周りを測らせて下さい」
「エイデン、急に何を言い出す」
「セレスティアナ様から手紙をいただきました。殿下の腰周りのサイズを教えて欲しいらしいのです」
「腰周りの? 殿下にベルトでも贈られるつもりでしょうか?」
殿下の着替えを手伝っている同僚のリアンが声をかけて来た。
「贈られるのは、もしや、ズボンでは?」
護衛に控えていたブライアンはそう言うが、「それなら腰周りだけで無く、足の長さも聞くだろう」
と、私は答えた。
「何にせよ、セレスティアナが俺に何かくれるみたいだな」
殿下が嬉しそうで良かった。
私はメジャーを使って殿下の腰周りを測って、メモを取り、メジャーと共にメイドに渡した。
* *
翌日の朝。
殿下は早朝に起きて、辺境伯やライリーの騎士達と剣の鍛錬。
いつもは我々も鍛錬に付き合うが、たまには違う相手とやる方がいい。
戦い方の癖とかそういうのは人によって違うし。
辺境伯は槍使いだけど、剣も使える。
いつ見ても男前だ。
殿下が入浴中、ライリーの祭壇で、祈りを捧げる。
殿下の想いがセレスティアナ様に届きますように……。
それにしても神殿に飾られるような色付きの絵が美しい。
どなたの作か、近くにいたメイドに聞いてみるとセレスティアナ様の作品らしい。
あの方、多才過ぎる。
朝食はドラージルとファイバスの炊き込み飯。
ドラージルは外側が桃色で綺麗な鱗の高級魚で白身の魚だ。
ワミードで令嬢が買い込んでいたやつだ。
令嬢が「タイメシ」とか言っていた。通称「タイメシ」らしい。
優しく、上品な味で美味しい。
付け合わせはタコとベビーリーフのサラダ。
ドレッシングはオリーブオイルとレモンと塩。
アオサのお味噌汁。
全部美味しい。
特にドラージルの料理のタイメシとかいうもの。
朝の10時くらいから二時間くらい、令嬢は殿下と一緒に先生の授業を受ける。
歴史と宗教関係。国内で行われる季節の行事について。
令嬢は他領ので良いから春祭りに行きたいと言っている。
殿下と一緒に連れて行って差し上げたいが、ライリーから出ると魔物関連で安全圏では無くなる。
無念。
お昼はロールキャベツにふわふわパン。このパンは本当にふわふわで驚く。
そして驚く程美味い。
聖下が驚いて宝石を砕いたリボンを贈るくらいだ。
さもありなん。
フルーツ入りヨーグルトサラダ。
このヨーグルトも美味である。
爽やかな酸味が有る。フルーツの甘さと組み合わさって良いバランスだ。
しかもかなり健康に良いらしい。
昼食後。
殿下と令嬢のダンスレッスン。
殿下は令嬢と踊れて嬉しそうである。
殿下の瞳が王城にいる時と違ってキラキラしてるし、一目瞭然だ。
宝珠を預かっているので、私が記録係だ。
それにしてもダンスの最中、令嬢は殿下と目を合わせようとしない。
それを殿下が問い詰めると、耳まで真っ赤になってしまう。
照れ屋さんだ。
あんなに中身男らしい面もあるのに。
可愛らしい。
光を集めて編み上げたようなプラチナブロンドと新緑の瞳、シミ一つない美しい白い肌。
セレスティアナ嬢は本当に愛らしく、綺麗なお嬢様だ。
将来は絶世の美女になりそうだと皆が言ってる。
殿下も美しい夏空のような蒼の瞳と、小麦色の健康的な肌が美しい美少年だと思う。
こういう肌色の方は、年頃になると、かなりエキゾチックで色っぽくなる傾向が強い。
殿下はお顔立ちも綺麗なので、今より更にかっこよくなるはず。
できれば令嬢には伴侶として殿下を選んでいただきたい。
ダンスレッスンを終えた殿下は、汗を流しに入浴。
* *
お茶の時間。
お菓子はソフトな食感で口溶けが良い、赤いイチゴのジャムを使ったクッキー。
見た目が可愛いらしい、ロシアケーキと言われるクッキーらしい。
クッキー生地を使ってるけどケーキと名が付いている。
よく分からないが美味いので問題無い。
お茶は紅茶かオレンジジュースの二種。
殿下は令嬢と同じくオレンジジュースを飲んだ。
私は紅茶をいただいた。
晩餐にホクホクの「野菜コロッケ」と言う物が出て来た。
揚げ物だ。
美味い。ソースをかけると、さらに美味い。
ほうれん草のおひたしとやらも美味い。かかってる調味料が多分神ってる。
ファイバスと一緒にいただくと、とても合う。
スープはコーンスープ。
とろみと甘味があって美味しい。
*
食後に王城から殿下に連絡が来た。
第二王子が熱を上げている隣国の姫との間で、あまりに婚約の話が出ないので、業を煮やした王妃様が隣国の姫と進展はありそうなのか、婚約できるのか知りたくて占い師を使者に立て、迎えにやっていたらしい。
じきにシエンナ様の結婚式が控えている事もあり、第二王子が帰国されるとの事。
最近お抱えの占い師が王城にいなかったのは、そういう訳だったのか。
それにしても、ようやく第二王子が緊急帰国とは。
だが、何やら雲行きが怪しいな。
隣国の姫がシエンナ様の結婚式に列席する話が無い。
第二王子の恋は実らないのか。
ともかく、第二王子のお迎えが有るので、ギルバート殿下も翌朝には帰らねばならないと言う。
ライリー側にそう伝えると、令嬢が第二王子の分のエアリアルステッキを追加で作って下さったらしい。
朝には出来ていた。
晩餐後から朝まで制作に取りかかって下さったのか?
驚くべき仕事の速さだ。
第二王子は留学中だった為、最近まで作るのを保留していたらしい。
お手数をおかけしました。
殿下が王城へ帰る前にと、急いで完成させて下さった。
ゆっくり休んで欲しい。
殿下には更にお土産としてフルーツケーキを渡して下さった。
しかしこれはおそらく、シエンナ様に気を使って下さったのだろう。
ともかく、殿下のライリーでの短い癒しの時間が終わってしまった。
──この後、王城でとんでも無い事実が発覚するとは、思いもよらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます