第126話 メロンアイスパフェ


「あの令嬢の髪飾り、可愛いですね。……ダイヤモンドかぁ。

やはり透明だと色んなドレスに合わせやすくて良いですね。私なら小ぶりのダイヤ集めてカチューシャにしたいな、あ、パールと組み合わせても可愛い気がする」



 ブライダルの髪飾りによく見るタイプみたいなのも良いな。

 なんかパールと組み合わせて枝みたいなやつ。


 私とアシェルさんと、殿下とその側近達はサロンにて、殿下が撮影してくれた貴族のお茶会の記録を見ていた。



「セレスティアナはダイヤモンドとパールが欲しいのか?」

「!! 欲しければ小さいのを自分で買うのでお気使い無く!」



 やばい事を口滑らせたかな。

 近くの椅子に座って殿下が良い事を聞いたぞ、という風にニヤリと笑っている。



「あの令嬢のドレスは美しいレースを使っていて、色も綺麗でセンスが良いですね」

「そう言えば人気の有るデザイナーのドレスだと言っていたような」

「あれは繊細な細工の砂糖菓子ですね」

「見た目は華やかで凄いがひたすら甘いばかりの味だった」

 

「──あ! 市場!」



 しばらく茶会の様子が映っていたけど、他領の市場が映った。



「ああ、あの市場はなかなか盛況だった」

「あー、良いですね。色鮮やかで瑞々しい野菜や果物が並んでるあの様子」

「其方は本当に市場が好きなんだな」


「待って! あそこ金魚売ってる!?」



 金魚売りが映ってる! こっちの世界だと初めて見る。



「あの、小さくて赤い魚は鑑賞魚らしいが、欲しかったのか?」

「い、いえ、でも、金魚みたいな小さなお魚可愛いじゃないですか。売ってるの初めて見ました。

でも、素朴な川魚のメダカとかも大好きですよ、私は」

   

「ああ、メダカ可愛いよね」

「やっぱり、アシェルさんもそう思う?」



 エルフのアシェルさんも、小さいお魚が好きみたい。


 前世ではホームセンターとかに行くと、ペットコーナーのネオンテトラの水槽前でじっと眺めていたりしたな。

 


 酸素の出る魔法のブクブクの出る石も神様の壺ガチャの稚魚を貰った時についていたし。

 小さいお魚は飼おうと思えば飼える。

 いつか自分で市場に行って買いたいな。


「……良い物を見せていただきました。

夜はお土産にいただいたメロンがありますので、食後のデザートにメロンを入れたアイスパフェでも作ってお出ししましょうか? 

冷たいスイーツなので夏の方が似合いますけど」


「アイスか! 楽しみだな。今日は十分暖かいし、構わない」


「あれ、でも、甘いものを沢山食べて来たなら後日が良いでしょうか?」

「砂糖の塊のような菓子の事なら、ふた口くらい食べてからエイデンに押し付けたから大丈夫だ」



 え、エイデンさん、子供が食べきれなかった料理を代わりに食べるお母さんみたいな事まで……。



「晩餐のメイン料理に希望はありますか?」

「辛いのか塩味」

「ではワミードの香辛料でやや辛い、カレー……いえ、カリーを作りますか」



 まだ子供だし、辛くなりすぎないように調整しないと。



「辛いのですか! ありがたいですね!」



 黙って控えていた側近のエイデンさんが急に会話に参加して来た。

 よほど辛いのが食べたかったと見える。



「エイデンさん、嬉しそうですね。甘過ぎるお菓子が辛かったんですね」



 エイデンさんは苦笑いをした。 



「でもエイデン殿は我々にも極甘菓子をこそっと押し付けて来ましたよ。ほぼ砂糖の塊を」



 ブライアン殿が味を思い出したのか、辛そうな顔をしている。



「贅沢に砂糖を使えば良いと思ってる貴族の見栄を感じました」



 殿下の他の側近さんも巻き添えを食っていた。



「皆様、私の作る甘い物を普通に食べていたと言う事は、別に甘い物が嫌いな訳では無いのですよね?」

「全然違うのですよ、甘い物でも」

「そうです、至高の甘味と砂糖の塊は違います」



 まあ、いくら甘い砂糖の塊のような物でも、タッパーに詰めて持って帰って少しずつ消費するとか出来ないものね。


 とはいえ、護衛騎士の間で押し付けあいをするのはセーフなのかしら。

 一口食べただけで残すよりかは良いのかな。

 ……食べ物は粗末にできないし、大事だものね。



 うち、ライリーの騎士のいる食堂では、どちらかと言うと「それ、食べないなら貰ってやるけど!」

「違う! 楽しみにとって置いているだけ!」みたいな会話は聞いた事がある。


 押し付け合いは見たこと無いけど、隙を見せたら奪われそうな……。

 兄弟の多い家みたいで微笑ましく思ったものだった。



 * *


 晩餐のカリーも、メロンアイスパフェも好評だった。


「鶏肉と豆のカリーか、美味しいな、辛さも丁度いい」

「大人用はもう少し辛いのをお出ししています。私のと殿下のは少し辛い程度です」


「子供用と我々が食べているのは味が違うのか」

「はい、お父様。一応ですけど。子供用のも少し味見してみますか?」


「ふむ、じゃあ一口だけ……ん。大人用で良かったみたいだ。

この大人用の方の辛さが癖になりそうだ」


「……私も辛さは大人用でちょうどいいみたいです」



 お母様も辛口がイケるっぽい。



「お待ちかねのデザートはメロンとアイスのパフェです」


 私の言葉と共に執事がメロンのアイスパフェを運んで来た。


「見た目が華やかだな。メロンも自然な甘味で美味いし、アイスも美味しい」



 殿下の食レポに皆、同意していた。


 パフェって見た目も良いよね、瑞々しいフルーツとアイスの組み合わせは最高。

 今度は苺でもパフェを作ろう。


 * * 


 今回も竜騎士さんのお力を借りて菜の花畑予定地に飛んで行く。

 殿下の家庭教師の先生が過去の分の資料にもグラフを使って手を加えると、日数がかかりそうな今のうちに。

 今回はお父様とアシェルさんも同行して下さる。


 我々の留守中、お城は騎士を増やして警備に気を使っている。


 菜の花の種を壺ガチャで引き当てたアシェルさんも種撒きに参加したいだろうと思ったの。

 ゆえに、Sランクの護衛が一時的に城から居なくなるのだ。


 殿下が気を使って聖騎士を7人、ライリー城内の護衛の為に付けて下さった。

 お母様と弟が留守番なので。


 我々の出発少し前に聖騎士様が七人も転移陣から現れた時は壮観だった。

 白と青を基調にした鎧姿の聖騎士達。

 マントを靡かせ、華麗! 強そう! かっこいい。

 いや、お父様の方がかっこいいけど!


 ちなみに聖騎士と竜騎士の出張費用は王妃様が出して下さったらしい。

 殿下を危険に晒したお詫びなんだろうな。


 なお、護衛を増やした分、厨房の料理人とメイド、執事、下働きの者も臨時で人を増やしている。

 聖騎士様方のお部屋の用意とかお世話係がいるものね。

 皆様、留守中、宜しくお願い致します!

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