第77話 鰻だと思えばいける

 3日目 朝のログインボーナス 壺ガチャ結果


 私    醤油


 お父様  胡椒

 お母様  ドライイースト


 アシェル 菜の花の種 (人体に有害な成分除去の品種改良済み)

 ナリオ  カレールー (キューブ)


 以上が本日の壺ガチャ5枠の結果。

 

 良かった! また醤油がある!


 胡椒! こちらの世界だとお高いので助かります!


 ドライイースト! 天然酵母は自作もわりと面倒なので、正直助かります!

 パンにケーキに大いに助かります!


 そしてわざわざ品種改良済みの菜の花の種を下さった!

 菜の花畑を作って、油が取れる。やったー!

 流石エルフの魔力! 見事良いものを引き当てて下さいました!


 

 更に、カレールーをキューブ状にした物が壺にぎっしり入ってるのも驚いた。


『肉と野菜炒めて、水を加えて、後はこのカレールーを入れるだけで味が決まるよ』


 と言う、リナルドの説明であの日本の市販のルーと変わらないレベルの仕上がりなのだと、理解した。

 ら、楽!


 久しぶりにカレー食べれる!

 でもキャンプとか、特別な日に食べようかな? 悩むな!

 ひとまず、もったいないので置いとこう。


 **


 せっかく醤油をいただいたので、カレーの前に、鰻のタレを作りましょう。


 タレを作るのに必要なのは、醤油とみりんとお酒と砂糖 。

 味醂がないので、そこは蜂蜜に変更。


 料理酒も無いので、神様がくれたお米のお酒を贅沢にも、使う。


 黒くて大きい蛇。

 狩りで貰った大きくて黒い蛇を、無理矢理に鰻と見立てて、ちょっと、食べてみようと思う。

 これはでかい鰻だと思えば、食べられる!


 リナルドも頭部以外なら毒も無く、食えると言ってくれた。


 毒と眼球に利用価値があるらしいので、蛇の頭は落として、ギルドの素材屋に売った。


 皮は剥いで職人に渡して、財布やベルト、鞄等にする様に依頼してある。


 *


 料理長に大きな蛇肉をなんとか3センチくらいの厚さに切ってもらった。


 魔物の肉は死んだ後に体に張り巡らされていた魔力が消えて、急に柔らかくなる事が多いらしい。

 この魔物も通常は刃が通り難い程に硬いそうだ。

 柔くなってくれて良かった。


 騎士じゃないと捌けない硬さだったら、この肉の使い道はどうしようかと思った。


 蛇肉を料理人達に運んで貰い、ピザ窯とは別に、庭に作ってあるバーベキュー用コンロに移動。



 コンロに網をのせ、炭火で鰻のように網の上で焼く。

 じゅわ〜っと、脂が垂れる。 ワクワクして来た。

 焼いて、タレを塗って、ひっくり返して焼いてまたタレを塗る。


 この作業を繰り返す。焼く度に身が縮んでくる。これは想定内。


 焼ける肉とタレの香ばしい香りが、周囲に広がる。


「……いざ、味見」と、焼けて小さく切った蛇肉に手を伸ばすと、

「お嬢様! 先に我々に毒見をさせて下さい!」


 料理人が慌てて制止して来た。


「大丈夫、この蛇は頭部以外には毒は無いって妖精のリナルドも言ってるし」


 リナルドも私の肩の上で頷いている。

 

「しかし……」

「大丈夫、私には浄化能力があるし」



 そう言うと料理人達は、そう言えば! みたいな顔をして黙ったので、いざ、実食。



「……これはイケます! ほぼタレの力かもしれないけど!」



 臭みも無い。もちろん鰻よりはずっと歯応えがある。


 地鶏肉のような食感。

 味もなんか、鶏のもも肉のような味……?

 魔物肉ってなかなか美味しいな、不思議。


 もぐもぐと蛇肉を味わっていると、香ばしい香りに惹きつけられ、騎士達までが集まる。

 わらわらと。


 この大蛇を狩って私にくれたのはローウェなので、私の次に試食させてあげる。


「美味い! またこの甘辛いタレが濃厚で、凄く良いいですね!」



 狩った本人も満足で何より。

 次に頑張って捌いてくれ、私が実食するのを固唾を飲んで見守ってた料理長に味見をさせる。


 身分的には騎士が上なんだけど。まだ味見の段階なので。


「あれ!? 鶏肉みたいな食感ですね、蛇肉もタレも美味しいです」


 苦労してバカでかい蛇を捌いてくれてありがとう。


 他の料理人や騎士達にも味見をさせてみても、


「タレのせいかもしれないけど、凄く美味しい」

 と、好評だったので、城内の人達の昼食のオカズに採用する様に言った。



 よし、これならお父様やお母様に出しても、問題無さそうね。


 * 


 そして昼食に出した時のお父様とお母様の反応。


「不思議だ、鶏肉みたいな味だ。そしてこのタレが……美味すぎる」

「これがあの大蛇なの? 驚いたわ。特に……甘辛いタレが美味しいわ」


 主にタレが絶賛された。

 タレは……偉大なり。


 タレの力を存分に感じつつ、蛇料理を食し、お茶を飲みつつ、雑談。


「そういえば新年の挨拶に商人が来るぞ。雑貨商だ。

騎士達が額縁を希望していたが、其方達も何か希望する物が有れば、先に言っておくといい」


「ええ、急に!? えーと、綺麗な……紙とインクと糸と空魔石を複数?」

「紙とインクと糸と空魔石か」



 お父様に急に欲しいものと問われ、何が良いかよく分からなくて私は焦って答えた。

 ハンドミキサーや霧吹きとかは作らせてるし。


 画材に鉛筆と消しゴムとか有れば欲しいけど、ないからね。

 ちなみに空魔石は好きな属性の魔力を込めて使える便利な石だから、ストックが欲しい。



「私は美味しい紅茶の茶葉でいいですわ」



 お母様は紅茶の茶葉を希望した。


  

 * *


 夕食の準備前くらいに、私はまた厨房に足を運んだ。


 タレがかなり美味しく出来たので、魔物肉ではなく、鶏肉の照り焼きに使い、それをお皿に乗せて、祭壇の捧げ物にしてみた。 


 蒲焼きのタレに使う材料って、鳥の照り焼きと、基本的に同じなんだもん。

 美味しいはずよ。


 ランチョンマットのような小型魔法陣も用意して、それの上に置いてみた。


 すぐに魔法陣が光って、鶏肉が消えたので、神様に受け取って貰えたようだ。

 良かった。

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