第76話 うっかりしてた

 夕食時に姿変えの魔道具を借りて、銀髪バージョンを披露。

 私もお母様に合わせてアイスブルーのドレスを着て、同じくアイスブルーのドレスのお母様と並んで宝珠で撮影。


「うーん、流石我が娘。可愛いな」

「色を合わせるといつもより親子感が出るね。可愛いよ、ティア」


 お父様も微笑んでいて満足気にしてるし、アシェルさんも褒めてくれた。

 えへへ。私も満足。

 

 晩餐はせっかく醤油が手に入ったので、

 豚肉を使って生姜焼きと米。いえ、ファイバス。


 昼間にご馳走が出てたけど、一度に沢山は入らないから夜には結局お腹が空くのだった。


 ドレス姿でガツガツと食べられないし。


 生姜焼き大好き。お肉の下に千切りキャベツも敷いてある。

 美味しい〜!


 お父様も

「定期的に食べたいくらい美味しい」と、言って下さった。

 お母様も頷いている。


 そしてお母様とお父様のお米のお酒レポ。


 「口に含んだ瞬間は柔らかい味わいですが、濃厚な旨味も感じ、心地よい余韻に浸る事も出来るような……美味しいわね」


 「ふむ、香りも高貴な感じがして、美味しい」


 お米のお酒を一杯ずつ飲んでみて貰った結果、どうやら美味しいようです。


 私は飲めない年齢だけど、生姜焼きにも少し、料理酒代わりに入れました。

 

 生姜焼きは

 厨房の料理人達も「すごく美味しい」って言ってくれたし、また作って貰おう。

 発作的に食べたくなるのよね、生姜焼き。



 * * *


 晩餐後に祭壇へ


 壺に水を入れて、祈りつつ魔力を注ぐ。

 両親の他に騎士の協力者2名でローウェとレザークだ。


「緊張しますね」


 レザークが壺に魔力を注ぎながら言った。


「何が出ても怒らないから、大丈夫よ」


 私は皆を励ます。


「美味しい物だと良いですね。あ、今夜の生姜焼き? も最高でした!」

「そ、そう、良かったわ」


 祭壇前で魔力を注ぎつつ生姜焼きの感想を言う男、ローウェ。大丈夫か? 豪胆な男だ。

 彼の願いははたして叶うかな?


「神様が下さるなら、何でもありがたいさ」


 お父様も真摯に魔力を注ぐ。


「そうですね」


 お母様も真剣なお顔で、魔力を注いでいる。


 ……よし、後は明日の朝に確認!

 だけど、一応自室に戻る前に確認事項がある。



「お母様は今日もウィルと一緒の部屋でねんねですか?」

「そうね、あの子はまだ小さいから」


「じゃあ私は、お父様の湯たんぽになりますね!」

「ん? ああ、ティアが私の寝室に来るのか?」

「はい!」

「ティアの甘えん坊はまだ治らないわね」



 お母様が呆れてるけど、すみません。これ不治の病なんですよ。


 甘えられる年齢ギリギリまで粘るし、頑張るぞ!


 今夜はお父様の寝床に潜り込んで湯たんぽになる! と、お風呂の後に自室を飛び出す。

 手にはレターセットを持ち、意気込んでダッシュ!!



「お嬢様! まだお髪が!」

「お父様の部屋の暖炉で乾かすから!」



 アリーシャが止めたけど、私は止まらない。

 肩にタオル代わりの布をかけたまま、髪も乾かぬ前にお父様の部屋に向かう。

 

 先にお布団内に入って布団を温めておきたいのだ。

 

 お父様のお部屋前で執事に重い扉を開けて貰って、中に入った。


 ドライヤーが欲しいけど無いので、暖炉の前で早く髪乾いて!と願いつつ、

 暖炉の近くに小さなラウンドテーブルと椅子を寄せて、持って来たレターセットでお手紙を書く。


 ラピスラズリの生地を下さった殿下と、赤いドレスを下さったお母様のご両親宛てに御礼状を。

 

 お手紙を書き終わる頃にはお父様もお風呂から上がって来た。

 夜着を着ているお父様の髪は既に乾いている。


 右手に私が作ったエアコン、魔法の杖を持ってる。


 私の後ろに立って、杖をかざす。

 するとふわーっと髪に温風が来た。


「全く、髪も乾かさずに来たのか。風邪をひくぞ」

「ああっ! その手があったんだった!」


 形状がドライヤーじゃないから忘れてた!


「長い髪を乾かすのに便利だとシルヴィアがやっていたので、真似している。

私の髪は長くはないからすぐに乾く」


 う、うかつ! 自分で作っておきながら!


 先にお布団温める作戦も失敗したけど、魔法の杖がドライヤー代わりになるのが分かったから、まあ……いいか。


 お父様が櫛で髪を整えてくれた。や、優しい!


 やだ、これ絶対乙女ゲームならスチルあるべき所じゃない!


 この状況で記録の宝珠を持ってガン見しながら撮影する人はもちろんいないし、頼めないので、嬉しいやら、もったいないやらである。


 あああああああ!


 ……諦めて寝よう。

 私の湯たんぽイベントはこれからだ!


 お父様のお布団の中に入る。

 お父様の胸元に猫のように、すりすりと頬擦りすると頭を優しく撫でてくれた。

 体温を分けるようにひっついて寝る。 ぽっかぽか。


 * * *


 2日目 ログインボーナス 壺ガチャ結果


 私    醤油


 お父様 ウイスキー (穀類)    

 お母様 ブランデー (果物)


 ローウェ ソース   (ウスターソース味)

 レザーク 粉ゼラチン (何かの料理に使える)

 

 以上が本日の壺ガチャ5枠の結果。


 蒸留酒2種とソースと粉ゼラチンかー。


 ウイスキーはミシンの製造をドワーフに頼むのに使えると思う。

 全部ではなく、瓶に入れて。

 壺のサイズは大人が一人で一抱え出来る大きさがある。


 ウイスキーの残りは、両親が飲んだりするかも。

 でも酒好きのドワーフ職人用に瓶に2本分はキープしておこう。

 先に味見させる分と成功報酬分。


 ブランデーと粉ゼラチンはお菓子作りにも使えるね。

 もちろん両親が飲む分は、多少キープするとして。


 粉ゼラチンや蒸留酒等、まだこの世界にない中身の解説は皆の前でリナルドがしてくれた。

 私が解説すると、何で知ってる? ってなるから先んじて。


 できる妖精だ。後でフルーツをあげよう。

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