第74話 新年早々に家族会議

「ほ、本当に来たのか、神様からのご褒美が」

「まあ、何という事でしょう……!」


 私のお部屋に両親を呼んで、祭壇前に椅子を三つ並べて、そこに座っている。

 家族会議中。 

 

 お父様とお母様も驚愕している。


 神様からの贈り物が目の前にあるから信じるしかない。


「チョコレートというものは知らないが、砂糖が自領で採れるようになるのは助かるな。土地ならあるし」


 はい、お金の匂いがします!



「チョコレート用の土地も絶対に確保して下さい、絶対美味しいので」

「無論、神様がわざわざ種を下さったのだし、無駄にはしないさ」

「ところで、このお酒は飲んでみてもかまわないの?」



 お母様がお米のお酒に興味を示しておられる。


 これ、もしかしていわゆる神酒では? 

 料理酒としてしか私は味わえないのが本当に残念。


「大人の人は良いですよ。壺を入れ替えましょう。

なんでも洗って水を入れて置いて魔力を注ぐと一晩で違う何かになるそうです」


「まあ!」

「何と……!」



 両親が目を丸くして驚いた。

 魔力を注ぐ人によって中身が変わると言う事も説明すると両親ともやる気を出していた。



『ちゃんとお祈りしつつ、魔力を注いでね、あと、一応これ、期間限定の贈り物だよ』



 リナルドが注意事項を言ってくれる。



 期間限定の贈り物だったの! 

 確かに私か家族が死ぬまでずっと続くとかだったら話がうますぎる。



「それはもちろん。それにしても凄いな、一回きりのご褒美じゃ無いのか」



 お父様は言いながら壺をしげしげと眺めている。



『新年から7日間の贈り物だよ。

 新年1日目のはもう来てるからあと6日ね』


「なるほど、服のお礼と新年のお祝いだったのね」


 年始の福袋みたいな。

 あと6日、何が入ってるか分からないと言う、壺ガチャをする事になる。


 これって一週間連続ログインボーナスを貰えるような物ではないだろうか?

 しばらくは朝起きるのが楽しみに出来るね!


 だけど醤油の追加が来ますように!

 じわじわと城の雇用人数が増えるとなると消費量も増えるものね。


「誰か騎士にもやらせてみるか、壺は5つあるから」


 お父様の提案にリナルドが答えた。


『でも祭壇前で祈りつつやらないといけないからね。お返しが来るのがあと6日とはいえ、ティアの部屋に男を入れたく無いなら祭壇を別の場所にも作った方が良い』


「!! 確かに。誰でも娘の私室に入れる訳にはいかないな。祭壇を新しく作ろう。城内の部屋は余ってる」


「壺に水を入れるなら用意するお部屋は一階がいいですね。でも祭壇に飾る絵は台を作って高い位置に」



 水を運び入れる事も考慮してお母様も合理的に考えておられる。



「しかし、手の早い画家相手でも期間内に祭壇に飾る絵の依頼と納品は難しいのでは」


 あと六日の奇跡ですものね。お父様が悩んでるので私から提案する。


「私の祭壇の絵を、代わりが来るまで置いておきましょう」


「そうか、それなら間に合うな。今度の祭壇は城の人間も参拝出来る様にしよう。

いずれ、劣化しにくい彫刻に変更しても良い」


「壺のお返しが無い期間も大事に奉らなければ。

何しろ砂糖とチョコの魔法植物は、大事に育てていれば残るのだし。

お供えの為にもお花はいっぱい作りたいですね、なんならお花畑とか」


 私は期待を込めてお父様を見上げて言った。


「ふむ。あの子爵令嬢の庭師だった男に連絡を入れてみるか」

「それはいい考えですね! 庭師さんの収入につながる訳ですし」


「畑に使う土地の選定とか、忙しくなるな」

「視察に行くのなら、連れて行って下さいね!」


「ああ。神様の下さった植物を植える訳だし、ティアがいた方がいいかもしれないな」


 やったー! お父様とお出かけ!


「お二人共、まずは、城内で騎士や使用人達へ、新年の挨拶と宴でしょう」



 お母様の言葉にそうだった! と、お父様と二人して焦ってしまった。

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