第68話 聖なる夜に

 早いものでなんだかんだと縫い物したり贈り物の準備などしていたら、聖者の星祭りの日が来てしまった。

 

 お母様から、美しい手編みのレースをいただいた。

 びっくりした、いつの間にこんな凝った作品を作っていたのかと。


 お父様からは冒険者時代にダンジョンで見つけた、美しい宝石の付いた宝箱。

 大! 中! 小!の三つの箱である。

 ロマン溢れる逸品!


 ドラゴンスレイヤーがダンジョンで見つけた宝箱ってオークションに出したら高値が付きそう!

 出さないけど!


「お父様、お母様、ありがとうございます、こんな素晴らしいものを」

 そして私からのプレゼントを渡す。


 お父様にはアスコットタイを留める金具にエメラルドを埋め込んだ物。

「とても上品で高貴な感じだな、ありがとう」

 受け取ったお父様が華やかに笑って、ほっぺにチューまでくれた!


 至福!


 お母様にはアレクサンドライトをブレスレットにして渡した。

「まあ、光によって色が変わるのね。とても神秘的で素敵。綺麗な物をありがとう、ティア」


 お母様も女神のような微笑みで喜んで下さって、これまたほっぺにチューと言う大サービス付き。


 私が男なら昇天しかねない。

 聖夜に召される。

 

 弟のウィルバートには健康祈願の模様を刺繍したシーツをあげた。

 日本にあった御守り刺繍のちゃんちゃんこを一瞬考えたけど、ここの西洋風文化圏内で激しく浮くので諦めた。


 弟は「あーあー」と、多分愛らしい「ありがとう」を返してくれたのだと思う。

 可愛い。


 私の両親は優しいのでどんぐりや松ぼっくりでも喜んでくれる可能性はあるけど、まだ若く綺麗なうちに、呼ばれたパーティーとかお茶会で綺麗な宝石を身に着けておいた方が良い気がして、超高級店の物じゃ無くても、本物の宝石を贈った。


 未だ節約意識が高くて、自分で宝石を買いそうに無かったというのもあったから私から贈った。


 昼のうちに城内のささやかな身内向けパーティーでご馳走を食べたり、贅沢な果汁100%ジュースなどを飲んだりした。


 料理は私がリクエストしたえびグラタンに鳥の丸焼き。ピザ、ケーキ、果物等色々並べられた。


 ちなみにグラタンのマカロニは伸ばした生地に編み棒のような棒を押し付けて転がして筒状にして手作りした。


 それと予定通りに、使用人用の無料レンタル服を始めると言ったら、大変、喜んでくれた。

 メイド達は用意された部屋で早速着替える事が許された。


 綺麗目ワンピースにつけ襟を付けて、星祭りパーティーに華やいだ姿で参加出来たのである。前回の贈り物の花飾りも付けてくれていた。

 うん、着飾った女の人、可愛いねえ。


 執事は平民の普段着より執事服の方がかっこいいのでそのままでいてくれと言う女性陣の希望により、今回は着替えて無い。


 あはは! 確かに執事服かっこいいよね!


 なお、給仕は臨時で雇った外部の人がやってくれた。


 星祭りは本番が夜なので、少しだけ王都の祭りも見に行く。

 教会の塔の転移陣に7時ごろこちらの転移陣から移動するとギルバート殿下に伝えてある。


 私はライリーの星祭りパーティーで着ていた淡いピンクのドレスから、ラテカラーのワンピース、一応平民に見えるだろう服に着替えた。


 時間になって、ライリーの若い騎士とアシェルさんを伴って、転移陣を起動し、転移した。


 すると、どうでしょう!

 殿下達が転移陣の側で出迎えてくれるのは、まあ想定していたけど、予想外の人までがおられた。



 なんと、聖職者のトップに君臨している、聖下が目の前に……!


 白い豪華な聖職者の祭服に、サファイアの宝石の付いた三角っぽい形のローマ法王みたいな特徴的な帽子を被ってるから初見でも分かる。


 きゃーーーーっ! 何で!? どうしてこうなった!?


 私の脳は一瞬フリーズしてからの再起動。

 ギルバート殿下を見てどういう事ですか!?という眼差しを向けたら、困惑した顔で、俺にも分からないって雰囲気で苦笑いされた。


 く、覚悟を決めて挨拶をするしかない。

 

 「初めまして、ライリーのセレスティアナ嬢とお見受した。私はレイモンド・ラ・エマニュエルと申します。お会いできて光栄です」


 プラチナブロンドに宝石のような金色の瞳の20代後半くらいのイケメンは悠然とした笑顔でそう名乗った。

 凄く聖なる光魔法が使えそうな高貴な外見!


 先に聖下からご挨拶をされたけど、私は今、姿変えで茶髪に平民服で擬態してるんですけど!

 ここはお見受けしないでスルーして欲しかった!


 まあ平民は普通転移陣を使えない上に、殿下が待機して人を待っていたから、そこから推測したのかもしれないけど!

 

「セレスティアナ・ライリーにございます。拝謁を賜り光栄に存じます」


 平民服でカーテシーをするはめになった。重ねて詫びを入れる。


「お忍びのつもりでしたので、このような見苦しい姿で申し訳ありません」

 頭を下げて私はそう言った。


 何でわざわざ聖者の星祭りの忙しい日に、私を待ち構えていたの!?


 不安なんですけど!

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