第53話 新素材

 お父様を探して、神様に贈り物をしたらお礼に「何か貰えるらしいです」と言っても、

「なんだそれは?」

と、神様が直接何かを下さるなんて途方も無い話に混乱するしか無かったようであった。


 確かに! と、私も思った。


 本当に困惑するけど神様が下さるなら良い物には違いないと思う。

 すっごい気になる。


 そしてまず、神様が気に入って下さるようなお洋服を考えなければ。

 かなりのプレッシャーである。

 とりあえず、頭がパンクしそうなので、出来そうな物から先に。


 必殺現実逃避とも言う。

 締め切りの前にあえてゲームやったり、寝たり、テスト前に急に部屋の掃除はじめるようなもの。


 とにかくそろそろ食事の支度をしなくては。

 エビが好きなのでガーリックシュリンプを作る。


 にんにくを使うけど、良いよね? 今晩どなたもキスの予定はありませんね?


 エビのぷりぷり食感を楽しもう。


 エビ。 人数を考え、大量に用意。


 他に片栗粉、塩。


 ガーリックソースを作る。


 材料はニンニクと玉ねぎのみじん切り、それとオリーブオイル、ハーブソルト、レモン汁で。


 ボウルにエビ、塩、片栗粉を入れ、全体を絡めるようによく揉む。

 流水で洗い、片栗粉を完全に落とす。

 この作業でエビの汚れや臭みを取り除く。


 鋏を使い、エビの殻に切り込みを入れる。

 切った殻の間から、爪楊枝を……いや、爪楊枝無かったわ、針を刺して背ワタを取る。


 尾の半分ほど斜めに切り落とす。(尾に汚れがたまりやすい為)

 布巾でエビの水気をしっかり拭き取る。


 エビとガーリックソースの材料を袋にすべて入れて、袋の上から揉む。

 冷蔵庫の代わりの氷の魔石入りの箱の中で1時間ほど漬ける。

 レモン果汁の働きでエビの臭みが抜けるはず。


 エビとソースをすべてフライパンに出す。

 エビが重ならないように広げ、中火くらいでしっかり焼き目を付ける。


 殻が赤くなり、切り込みを入れた部分が開いてきたら、裏返してもう片面を焼く。


 仕上げに使うのはバター、塩、粗挽き胡椒。

 バターを加えて溶かし、全体に絡めたら火を止める。

 ふわりと良い香りが漂う。


「美味しそうな香りがする……」

と、寄って来る騎士に「待て」をする。


 それとトッピングのレモンとパセリ少々を用意。


 パンは塩パンとバゲットと、柔らかいロールパンをあらかじめ用意して来てあるので、それを出す。

 好きなのを食べれば良い。


 スープはコーンスープ。

 ジュースは臭い消しに林檎ジュース。



 茹でた豚こま肉とキュウリとトマトのサラダ。

 レモン汁と鶏がらスープの素で味付けしたさっぱり系のサラダ。


 ついでに人気の高い山盛りフライドポテトがまた登場。

 揚げたイモ、大人気。

 お酒を出してあげたいけど、お外で警護任務中だし、また今度ね。


「美味しい……!!」


 皆様にもご満足いただけたようだ。


 お食事中に殿下のイケメン騎士達のお話なども聞いてみる。

 飯が美味過ぎるからずっと殿下と共にライリーにいたいとか言う。


 高貴な王族に仕える名誉ある騎士様が飯に釣られて何を言っているのか、気持ちは分からないでも無いけど。


 * * *


 既に暗いけど、寝るのにはまだまだ早い時間。


 リナルドが儀式の現場からわりと近い場所にある、森の中に夜になると探しやすい良い物が有ると言うので、夜の冒険。 


 ドキドキする。


 当然子供の私と妖精だけで行く訳にはいかない。


 殿下も冒険好きなせいか、ついて来ると言うので当然護衛としてお父様や騎士達も来た。


 灯りの魔法で照らしながら森を行く。

 ここは魔の森とは違うけどこの世界には魔物がいるから油断は出来ない。


 前世で夜の山にカブト虫やクワガタを取りに行く動画を見た事などを思い出した。


 またキノコや野苺みたいな物が有るのかな? と思っていたら、見つけたのは何か幹が赤っぽい印象のうっすら光る木々だった。



「このうっすら光る木は何なの?」



 私がリナルドにそう聞くと、私の肩の上からピョーンと幹に飛び移った。

 流石見た目がモモンガ系妖精、様になっている。



『この光る木の幹に傷を入れると特殊な樹液が出るんだ』

「美味しいの?」

 私はメープルシロップや白樺の樹液を思い浮かべた。


『飲み物ではなくて、この樹液は魔力と共に太陽光に当てると、やや柔らかく固まるし、月光に当てると、硬く凝固する特殊な魔木の樹液なんだよ』


「……ん?」

『つまり、僕は君とリンクしてるから、君の知る知識内で分かりやすく言うと、レジンのような透明の液体が出て、アクセサリー作りとかに使えるって話だよ』


「な、何ですって!!」



 私は驚いた後に、少し離れた位置で不思議そうに木を見てるお父様に駆け寄った。



「お父様! バケツ、いえ、何かツボのような物を複数とナイフを貸して下さいませ!」


「あ、ああ」



 私の剣幕に若干引きつつも、お父様は亜空間収納から壺をいくつか取り出して渡してくれた。


 ナイフは騎士が代わりに使ってくれた。


 指示通りに樹液が滴れるよう切り込みを入れて、壺を下にセットしておく。


『城に帰る前に回収すると良いよ』


 リナルドの言う通りに、帰り際に回収するとする。


 わー、何作ろうかな。


 多分ソフトレジンとハードタイプのレジンみたいな使い方が出来るのよね?

 ソフトのが加工はしやすいかもだけど、強度を考えるとハードがいいのかな。


 とりあえず、壺を複数セットして、テントに戻ろうとすると、



「あ! なんか光る虫!」


 殿下が指を指して叫んだ。

 発光するカナブンみたいなのが飛んで来る!



「きゃ──っ!」



 私は虫にびっくりして思わず近くにいた殿下にしがみついていた。



「は、白骨死体にもそんなに怯えないのに何故、虫でそんなに」

「急に突撃して来る虫は苦手なんです!」


「剣の鞘で叩き落としましょうか?」


 そう護衛騎士が言うと、


「待て、光に誘われて来ただけで害意は無いのかもしれない、俺が風魔法で遠くにやる」


 殿下がカナブンに似た謎の光る虫に慈悲をかけ、ダメージを負わない程度の風で虫を押し出すように、遠くにやった。


 や、優しい。


 虫なので灯りに釣られて来たのだろうか? びっくりした!



 * * *


 朝までに樹液がたっぷり貯まる事を願いつつ、テントで一晩眠る。

 エアコン杖のおかげで寒さも無く、快適温度。


 朝が来て森へ入り、壺に蓋をして樹液を回収。なかなかの量が取れた。


 木の幹に回復魔法をかけて傷を塞いでいく。

 樹液を分けていただき、どうもありがとうございました。


 ワイバーンで朝の空を飛んで帰城する。


 蒼穹の中を行く、雲は白く、青と白のコントラストが綺麗。


 先導をする竜騎士様のマントが風に靡いてて絵になるな。

 上空からの紅葉もとても綺麗。


 リナルドも私の胸元のポケットから顔を出して景色を堪能しているようだ。


 でも頬に当たる風の冷たさや寒さに、そろそろ木枯らしが吹きそうだと思った。


 ワイバーンで飛んでいる時の寒さ対策で、行きにも持っていたのだけど、お母様が炎の魔石をカイロ代わりに布を巻いて巾着に入れて渡しておいてくれたので、服の下に忍ばせてある。


 炎の魔石に魔力を込めてくれたのは、お父様である。


 じんわりと優しい熱をくれる魔石カイロのおかげで、体は寒く無かった。


 ライリー城のすぐ近くの草原に降り立つと、猫じゃらしのように先っぽがふわふわとした植物が群生していて可愛らしく、まるで絵に描いたように幻想的で綺麗だった。

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