第45話 空色の名前

 夏が終わって初秋。


 殿下の長身の家庭教師さんが追加の支度金、つまり殿下と側近のお世話用の資金と共に、転移陣から来られた。

 滞在が長くなったからこっちでも勉強しろって事ね。

 

 夏休み終了のお知らせ。


 そして私も一緒に授業を受けるようにとお母様に言われた。


 え? 女の子が隣にいた方が殿下もやる気が出ると殿下の側近に言われた?


 え? 同じクラスの隣の席のマドンナポジにはなれませんよ?

 私の中身オタクですから。


 でも性別が逆なら殿下の褐色肌を見るにオタクに優しいギャルができ……いや、殿下はギャルじゃないわ、肌色だけでギャルにはならない。正気に戻れ私。


 性別逆にしたら褐色肌のセクシーお姫様じゃん。 

 うわ、ギャルゲーにいたらめっちゃ口説きたい。


 時にやはり、お母様、本気ですか? ……え?便乗だから授業料無料?

 家庭教師さんには寝床とご飯とお風呂提供で良いの?

 ……まあ倹約の為なら……。

 どうせ勉強は必要だしね。


 そんなこんなで王宮の家庭教師さんに殿下と机と教科書を並べて一緒に教わる。


 

 しかし翌日の秋晴れの見事な日、課外授業よ。とばかりに外出。

 不測の事態に備えて食べられるきのこなどを覚えましょう。


 また次の浄化ツアーの為に待機時間があったので蘇った魔の森では無い、近所の普通の森に来た。


 黄色と茶色の葉っぱが風に飛ばされて地面に落ちる。

 柔らかそうな黄色と茶色の枯葉の絨毯。


 秋の色を満喫。


 色といえば、私の今日のコーデは渋めのワインレッドのワンピにエプロン付き。

 お気に入りのエプロンワンピース。


 枯葉上を歩くとサクサク音が鳴って少し楽しい。

 降り積もる物が森を豊かにしてくれるだろう。


 きのこと栗を発見した。

 森の恵みをありがたくいただく。


 キノコは良く知らないものを食べると危ないけど、森の妖精リナルドが食べられるキノコを教えてくれる。


 落葉広葉樹の枯れ木や倒木の周辺に生えてた舞茸をゲット。


 城に戻ってから厨房の料理人に栗やきのこを渡す。

 指示通りに栗の下拵えをしてくれる。


 栗餡でクレープを作る。美味しい。みんな美味しいと言ってくれた。



 夕食、というか晩餐。


 オーク肉のトンカツがメインでご飯が舞茸の炊き込みご飯。

 カボチャのグラッセもバターが合うほんのり甘いおかずとして添える事にしよう。

 汁物枠にお味噌汁。具はアオサ。

 乾燥させたのを沢山買ってるの。


 カボチャのグラッセの作り方。手順を料理人に指示していく。


 1. カボチャを一口大に切る。


 2. 鍋にカボチャを入れ、半分浸るくらいの水と砂糖を入れたら強火で加熱し、

  沸騰したら蓋をして10分ほど蒸し煮にする。


 3. カボチャが柔らかくなったら有塩バターを加え、絡めるように混ぜたら出来あがり。


 4. お好みで塩コショウも加える。

 

 和風のカボチャの煮物に飽きたらこういうのも良いのでは? と思う。

 レモンで煮ても良いらしい。

 カボチャのレモン煮という料理もある。



 はたして舞茸の炊き込みご飯とかこっちの人の口に合うか心配したけど、大丈夫だった。

 美味しいと言ってくれた。


 まあ、ファイバス……ご飯を美味しいと感じてくれるからイケるかなとは思った。

 

 一応パンも保険で用意していた。

 


 * * *


 クーラー杖改め温風も出るエアコン杖を作った。

 秋になってしまったんだもの……。

 炎と氷の魔石入れ替えるだけで使い分け出来るようにした。


 これに、虹色と銀色のお魚クラルーテの鱗で作った贈答品用イヤーフックとブレスレットも添える。

 ダイヤ付きが王妃様用でルビー付きがシエンナ姫様用。

 指輪はお二人のサイズを知らないのでブレスレットにした。指輪は私とお母様用。


 シエンナ姫様は誕生日が近いし、王妃様は王様と一緒に記録の宝珠をライリーに、いえ、お母様に贈って下さったので、お礼。


 王様への贈り物にアクセなど思いつかないので杖のみです、すみません、恐れ多い。

 王妃様と姫様だけでも恐れ多い。


 でもせっかくギルバート殿下の狩った獲物の鱗があるし、綺麗なので……記念にと。


 完成した杖とイヤーフックとブレスレットを渡したら、一旦王城に戻ると言われた。

 ドキドキするな〜、気に入ってくれたら良いな、アクセサリー。


 杖の方は依頼品なので大丈夫でしょう。



 殿下達がライリーの転移陣から王城へと帰還した。



 祭壇のお供え用に赤とオレンジ色を混ぜたようなマリーゴールドを摘む。


 マリーゴールドは目薬の花と言われているのでお茶を作る事にした。


 庭園でマリーゴールドの花部分をプチプチとつみ、洗って、ざるに上げて乾燥させてお茶にした。


 執務室にて仕事をするお父様や文官達に完成したマリーゴールドのお茶を持って行くメイドに同行する。

 メイドがお茶で、私は焼いたクッキーを運ぶ。


 お父様達に渡した手作りクッキーは「優しい味がする」と言われた。


 私もそう思う。


 執務室でお父様の顔を見た帰りに弟のいる部屋に行き、顔を見る。

 抱っこさせて貰った。

 ウィルは笑顔である。ゴキゲンかな?可愛い。



 夕方。

 

 私は晩餐前に少し昼寝をしてた。


 天蓋付きベッドの上でゴロゴロしてると、窓の外はオレンジ色の空に青が被さるようにグラデーションができている。


 昼と夜の境目に見えるこの色は……紅掛空色って言うんだっけ……。


 マリーゴールドのハーブティーの出涸らしを瞼に置くと、妖精が見えると言われているのを、寝起きのぼんやりとした頭で思い出した。


 でも妖精ならもう私の枕の隣、小さな籠と布で作った寝床でくつろいでいる。

 エゾモモンガに似た可愛いのが。

 人差し指で頭を撫でると、うっとりと目を閉じた。


 そしてリナルドはまた眠った。


 妖精はどんな夢を見るのだろうか? などと思った。



 ところで、明日は冬の魔物減らしの狩り用の服の生地を王都に見に行くので、あちらで殿下と合流する。

 

 いつもの市場でなく高級な生地ばかりを扱うお店に行くらしい。

 変装無しで行くのかな? 何着て行けばいいの? やっぱりドレス?

 ちょっと緊張する。


 庶民が高級ブランド店とか入るのに緊張するみたいな……。


 前世でオタク友達とイベント帰りに一緒に、改装後のデパートに来た時の話。

 勝手が違ってよく分からずに、入り口はこのハイブランドのお店通過するの!? と、間違えて入った時の気まずさを思い出した。


 ひいい、ごめんなさい!

 私はこのお店の客じゃないのですが、ちょっと通らせていただきますよ! って脳内で謝って、足早に去った。


 いや、今は令嬢なんだけど、中身が……。


 とりあえずせっかくだし、イヤーフックはして行こうかな。

 虹色のアクセに合わせるならまた白い服が良いかな? でも白はアイス食べた時に着たしなあ。

 いっそ濃紺か紫のドレスでも着るかな。 

 秋だし。

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